三匹の猿――モチーフ分析
◆あらすじ
昔ある所に猿の村があった。ある日向こうの猿が三匹連れ立って通った。その中で、一番前の猿はもの言わず、また後の猿ももの言わず、中の猿が一番ものをよく言うので上人さまに褒められた。褒美にいわしを三尾もらった。それを煮て食べても塩辛い、焼いて食べても塩辛い。あんまり塩辛いから水が欲しくなって、前の渕に飛び込んで水をぐうぐう飲んだ。その音があまりに大きくて町へ聞こえた。小笠原の松が三本倒れた。豆腐屋の豆腐が三丁めげた(壊れた)。
◆モチーフ分析
・昔ある所に猿の村があった
・ある日向こうの猿が三匹連れ立って通った
・一番前の猿はもの言わず、後の猿ももの言わず、中の猿が一番よくものを言うので上人さまに褒められた
・褒美にいわしを三尾もらった
・煮て食べても塩辛い、焼いて食べても塩辛い
・あまりに塩辛いので水が欲しくなって前の渕に飛び込んで水をぐうぐう飲んだ
・その音があまりに大きくて町へ聞こえた
・小笠原の松が三本倒れた
・豆腐屋の豆腐が三丁めげた(壊れた)
形態素解析すると、
名詞:猿 三 前 水 豆腐 いわし もの 三尾 上人 中 向こう 小笠原 後 所 昔 村 松 渕 町 褒美 音
動詞:ある もの言う 食べる めげる もらう 倒れる 壊れる 焼く 煮る 聞こえる 褒める 言う 通る 連れ立つ 飛び込む 飲む
形容詞:塩辛い よい 大きい 欲しい
副詞:あまり 一番 ある日 ぐうぐう
前の猿/中の猿/後の猿の構図です。猿―いわし―上人の図式でもあります。
三匹の猿が連れ立って通った[通過]。前と後の猿はもの言わず[無言]、中の猿が一番よくものを言った[有言]ので上人さまに褒められた[褒賞]。褒美にいわしを貰った[獲得]が塩辛いので水をぐうぐう飲んだ[痛飲]。松が三本倒れて[倒壊]豆腐が三丁壊れた[破壊]。
中の猿がよくものを言ったので褒められ、褒美にいわしをもらったが塩辛いので水を飲んだ……という内容です。
発想の飛躍は中の猿が褒められることでしょうか。中の猿―(褒める)―上人の図式です。
例えば神話で天照大神、月読命、スサノオ命の三貴神が語られる場合、月読命についての記述が少ない様に、主要な登場人物が三名いる場合、真ん中の登場人物は省略されがちです。ですが、この昔話では真ん中の猿が褒められるといった具合になっています。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.276.
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