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2022年9月 6日 (火)

涙がこぼれる――モチーフ分析

◆あらすじ

 彦八はいつもお金を出さずに仲間の中へ入って飲んだり騒いだりしていた。そこで皆が相談して、今度は彦八が来ても家の中へ入れないことにして戸を閉めて飲んでいた。そこへ彦八がやって来て戸を叩いて開けてくれと言った。皆はまた来たなと思って知らぬ顔をしていた。すると彦八は大声で開けてくれ、早く開けないとこぼれるよとしきりに頼むので、今度は何か持ってきたのだろうから開けてやれと戸を開けた。すると彦八は何も持ってない。そこで一体何がこぼれるのかと大声で叱りつけると、彦八は平気な顔で、早く開けてくれなければ涙がこぼれると言ったので、皆は仕方なしにまた中に入れて飲ませた。

◆モチーフ分析

・彦八はいつも金を出さずに仲間内で飲んだり騒いだりしていた
・今度は彦八が来ても家の中へ入れないことにすると皆が相談する
・皆、戸を閉めて飲んでいる
・彦八がやって来て開けてくれと言ったが、皆知らぬ顔をしている
・彦八、開けてくれ、早く開けないとこぼれるとしきりに頼む
・今度は何か持ってきたのだろうと戸を開ける
・彦八は何も持っていない
・何がこぼれるのかと叱りつける
・彦八、早く開けてくれないと涙がこぼれると言う
・皆は仕方なしに彦八を中に入れて飲ませる

 形態素解析すると、
名詞:彦八 皆 中 今度 何 戸 こと 仲間 家 涙 相談 金 顔
動詞:開ける こぼれる する 飲む 入れる 持つ 言う やって来る 出す 叱りつける 来る 知る 閉める 頼む 騒ぐ
形容詞:早い
副詞:いつも しきりに 仕方なしに 何か

 彦八/仲間の構図です。彦八―(こぼれる)―仲間の図式です。

 いつも金を出さずに飲んでいた[無銭飲食]彦八に仲間たちが家の中に入れないことを相談する[示し合わせ]。彦八が来ても中に入れないので、早く入れてくれないとこぼれると言う[督促]。何か持ってきたのかと中に入れると[許可]、涙がこぼれると言った[嘘]。仕方なしに中へ入れた[入室]。

 早く中に入れてくれないとこぼれると言うが、それは涙がこぼれるだった……という内容です。

 発想の飛躍は涙がこぼれるでしょうか。涙―(こぼれる)―何か(酒)の図式です。読んでいたときは小便がこぼれるかと予想しましたが外れました。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.231.

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