和尚と小僧――モチーフ分析
◆あらすじ
和尚と小僧がいた。和尚は餅が好きでよく焼いて食べたが小僧にはやらなかった。ある日、和尚は小僧がいない時にまた餅を焼いていた。そこへ小僧がひょっこり入って来たので慌てて餅を灰の中へ埋めた。小僧は何かいい匂いがすると言った。和尚は小僧に知れては大変だと思って、何でもない。枯葉がいぶっているのだと答えた。小僧は和尚がまた餅を焼いているなと思って、時に裏の屋根が壊れたから直そうと思うがと話しかけた。和尚がお前直せるかと訊くと、小僧は何でもない。こうやって太い柱を立てるのだと火箸を灰に突き立てた。すると餅が刺さった。和尚は苦い顔をして妙なところに餅がある。お前にやろうと言った。小僧はありがとうございますと言ってむしゃむしゃ食べた。それから和尚、柱をもう一本こういう風に立てると言って別のところへ火箸を突き刺した。また餅が出た。和尚はおかしい、お前が食べよと答えた。小僧はむしゃむしゃ食べた。ところで和尚、その横にもう一本こういう風に立てると火箸に餅を突き刺した。更にもう一本とやった。和尚はたまらなくなって、小僧、柱を立てるのはそれくらいでよかろうと言った。こうして小僧は和尚がせっかく食べようと思って焼いた餅をみんな食べてしまった。
◆モチーフ分析
・和尚と小僧がいた
・和尚は餅が好きでよく食べていたが小僧にはやらなかった
・ある日、和尚は小僧がいないときに餅を焼く
・そこへ小僧がひょっこり入ってくる
・和尚、慌てて餅を灰の中に埋める
・小僧、いい匂いがすると言う
・和尚、枯葉がいぶっているのだと答える
・和尚がまた餅を焼いていると察した小僧、裏の屋根が壊れていると話す
・和尚、小僧に直せるかと訊く
・小僧はこうやって柱を立てるといって火箸で灰の中の餅を突き刺す
・和尚、妙なところに餅がある。お前が食べよと小僧に言う
・小僧、餅をむしゃむしゃ食べる
・小僧、柱をもう一本立てると言って別のところに火箸を突き立てる
・餅が刺さったので小僧が食べることになる
・小僧、その横にもう一本柱を立てると言って火箸を突き立てる
・更にもう一本火箸に餅を突き立てる
・たまりかねた和尚、柱を立てるのはそれくらいでよかろうと言う
・小僧は和尚が食べようとした餅をみんな食べてしまった
形態素解析すると、
名詞:小僧 和尚 餅 柱 火箸 ところ 一本 中 灰 お前 こと そこ それくらい とき みんな 一本立 別 匂い 屋根 枯葉 横 裏
動詞:食べる 言う 突き立てる 立てる いる する やる 焼く ある いく いぶる たまりかねる なる 入る 刺さる 埋める 壊れる 察 慌てる 直す 突き刺す 答える 訊く 話す
形容詞:よい いい
副詞:もう ある日 こう ひょっこり また むしゃむしゃ 更に
連体詞:その
和尚/小僧の構図です。師匠/弟子と抽象化できます。和尚―餅―小僧という図式となっています。火箸―灰―餅でもあるでしょうか。
和尚が小僧に餅をやらないで一人で食べていた[独り占め]。和尚が餅を焼いていると小僧が入ってくる[入室]。小僧、裏の屋根の修理にかこつけて餅を火箸で突いて食べる[奪取]。それを繰り返してとうとう餅を全部食べてしまう[完食]。
餅を灰の中に隠しておいたところ、見抜かれて火箸で食べられてしまった……という内容です。
発想の飛躍は屋根の修理にかこつけた小僧の知恵でしょうか。和尚―餅―小僧という図式です。食べ物の恨みは深いのです。
餅を火箸で突いて食べることを四回繰り返します。昔話での繰り返しは三回が多いのですが、ここでは四回繰り返しています。最後の一回はダメ押しというところでしょう。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.221-222.
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