嘘ではない――モチーフ分析
◆あらすじ
彦八が旦那のところへ呼ばれていくと、旦那は彦八に話せと言った。話すことは話すが、せっかく話すと、こんな彦八、そりゃ嘘ではないかと言う。嘘ではないかと言うともう話さない。よし、もう嘘ではないかとは言わないから話せと旦那が言うと、彦八はでは話そう、自分が雪の降っている中を通っていると、蛇が出てきて何か獲物がないかと探すが何もない。そこで蛇は自分の尻尾から食いはじめて、とうとう頭だけ残った。それでもう食べるものがないので、その頭も食べてしまったと話した。これを聞いた旦那は何気なしに彦八、それは嘘ではないか。頭が何を食ったかと言った。すると彦八は、旦那の様に分からぬことを言うから話はできない。たった今嘘ではないかと言ったではないかと帰ってしまった。
◆モチーフ分析
・彦八が旦那のところに呼ばれると、旦那は彦八に話せという
・彦八、話すことは話すが、せっかく話すと、それは嘘ではないかと言うからもう話さないと言う
・旦那はもう嘘ではないかと言わないから話せと言う
・彦八、食べるもののない蛇が自分の尻尾から食い始めて頭まで食べてしまったと話す
・旦那はそれは嘘ではないか。頭が何を食ったかと言う
・彦八、旦那の様に分からぬことを言うから話はできない。たった今嘘ではないかと言ったではないかと帰る
形態素解析すると、
名詞:彦八 旦那 嘘 こと それ 頭 ところ もの 今 何 尻尾 自分 蛇 話
動詞:言う 話す 話せる 食べる いう できる 分かる 呼ぶ 帰る 食い始める 食う
形容詞:ない
副詞:もう せっかく たった
彦八/旦那の構図です。彦八―話/嘘―旦那、蛇―(食べる)―尻尾―(食べる)―頭という図式です。
彦八、旦那に呼ばれる[呼応]。旦那、彦八に話せと言う[依頼]。彦八、旦那は嘘ではないかと言うから話さないと断る[謝絶]。旦那、嘘ではないかとは言わないから話せと言う[再依頼]。彦八、蛇が自分を食ってしまった話をする[嘘]。旦那、それは嘘ではないかと言う[文句]。彦八、たった今嘘ではないかと言ったから話はできないと帰る[退去]。
旦那に呼ばれた彦八だが、嘘ではないかと言われるから話さないと断る。それでもと言われると話すが、やはり嘘ではないかと言われて帰る……という内容です。
発想の飛躍は蛇が自身を食ってしまう話でしょうか。蛇―(食べる)―尻尾―(食べる)―頭という図式です。
尻尾を呑み込んだ蛇の絵はしばしば描かれますが、頭まで食ってしまうのは少ないでしょう。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.230.
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