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2022年9月22日 (木)

舌切雀――モチーフ分析

◆あらすじ

 正直な爺さんと欲の深い婆さんがいた。爺さんは一羽の雀(すずめ)を可愛がって買っていた。いつも山に行くときには、雀や雀、行ってくると我が子に言うように別れをして行った。ある日婆さんは糊(のり)を煮ておいて川へ洗濯に行った。その留守に雀は糊をみんな食べてしまった。婆さんは帰ってみると糊がないので腹をたてて雀の舌を切って追い出した。爺さんは山から帰って今帰ったと何遍も呼んだが、雀の姿が見えないので婆さんに訊くと、婆さんは糊を全部食べてしまったので腹がたったから舌を切り取って追い出したと言った。爺さんは可哀想なことをした言って泣きながら舌切雀、舌切雀と言って山へ雀を訪ねに出かけた。すると馬を洗っている男がいたので、ここを舌切雀が通らなかったか尋ねると、馬を洗った汁を馬桶にいっぱい飲んだら舌切雀の行った方角を教えてあげると言った。爺さんは馬を洗った汁など何でもないと言って、その汁をガブガブ飲んだ。馬洗いは向こうの藪へ行ったと教えた。爺さんは藪へ行って探したがいないので、また山を越えて先へ進んでいった。すると谷川の傍で牛を洗かっている男がいたので、ここを舌切雀が通らなかったか尋ねると、牛洗いは牛を洗った汁を牛桶にいっぱい飲んだら教えてあげると言った。爺さんは牛を洗った汁くらい何でもないと言ってその汁を飲んだので、牛洗いはこの曽根を下りて向こうの竹藪でタラタラ血を流した雀がいると教えてくれた。爺さんは喜んで、雀、お宿はどこだと訪ねていった。すると雀は口から血をたらしながら、お爺さんおいで、こちらでござると言って雀の宿へ案内した。そしてお茶やお菓子、色々とご馳走を出して、しまいに土産につづらをあげると言って重いつづらと軽いつづらを出した。爺さんは年をとったから軽い方がよいと言って小さいつづらを貰って帰った。婆さんはそれを見ると、長らく置いた雀だから、自分も行ったらつづらをくれるだろうと訪ねていった。途中婆さんはつづらが欲しいばかりに馬の洗い汁を馬桶にいっぱい、牛の洗い汁を牛桶にいっぱい飲んで雀の所へ行った。雀は婆さんを見ると、婆さん舌を切られて苦しい。今度あなたの傍へ寄ったら、羽でも切られてしまうかもしれないと言ってとりあわない。わざわざ訪ねてきた婆さんは雀のご馳走も食べられず、馬の洗い汁と牛の洗い汁で腹をだぶだぶさせながら、ようやく重いつづらを見つけ出し、これこれと言って取り上げて背負って帰った。早速開けてみると、中には汚いスズや茶碗のかけらに蛙や蛇の骨ばかり。宝どころか命が助かったのが何よりであった。しかし、悪いことをした婆さんはそれから病気になって死んでしまった。

◆モチーフ分析

・正直な爺さんと欲の深い婆さんがいた
・爺さんは一羽の雀を可愛がって飼っていた
・ある日婆さんが糊を煮ておいて川に洗濯に行くと、雀が糊を全部食べてしまった
・腹をたてた婆さんは雀の舌を切って追い出した
・爺さんが山から帰って何度呼んでも姿が見えないので、婆さんに訊くと舌を切って追い出したと言う
・爺さんは可哀想なことをしたと言って山へ雀を訪ねに出かけた
・馬を洗っている男に訊くと、馬を洗った汁を桶にいっぱい飲めば教えてやると言われる
・爺さんそんなことは何でもないと言って、汁をガブガブ飲んだ
・教えられた通り向こうの藪へ行ったがいないので、また山を越えて先へと進んだ
・牛を洗っている男に訊くと、牛を洗った汁を桶いっぱいに飲んだら教えてやろうと言われる
・爺さんはそれくらい何でもないと牛を洗った汁を飲んだ
・牛洗いに教えてもらった通りに向こうの竹藪に行くと、タラタラ血を流した雀がいて雀の宿へ案内した
・色々とご馳走をふるまわれ、土産につづらをあげると言われた
・雀は重いつづらと軽いつづらを出した
・爺さんは年をとったから軽い方がよいと小さいつづらを貰って帰った
・それを見た婆さんは長らく置いた雀だから自分も行ったらつづらをくれるとだろうと訪ねていった
・婆さんは馬の洗い汁と牛の洗い汁を飲んで雀の所へ行った
・雀は今度あなたの傍へ寄ったら羽を切られてしまうかもしれないと取り合わない
・婆さんは腹をだぶだぶさせながら重いつづらを見つけ出して背負って帰った
・つづらを開けてみるとスズや茶碗のかけらに蛙や蛇の骨ばかりであった
・宝どころか命が助かったのが何よりだった
・悪いことをした婆さんはそれから病気になって死んでしまった

 形態素解析すると、
名詞:雀 婆さん つづら 爺さん 牛 汁 こと 山 馬 それ 向こう 桶 男 糊 腹 舌 通り あなた いっぱい かけら ご馳走 それくらい スズ 一羽 今度 何より 何度 傍 先 可哀想 命 土産 姿 宝 宿 川 年 所 方 案内 欲 正直 洗濯 病気 竹藪 羽 自分 色々 茶碗 藪 蛇 蛙 血 骨
動詞:洗う 言う 行く 飲む 教える いる する 切る 帰る 訊く 訪ねる 追い出す あげる くれる しれる たてる とる なる ふるまう 出かける 出す 助かる 取り合う 呼ぶ 寄る 死ぬ 流す 煮る 置く 背負ってる 見える 見つけ出す 見る 貰う 越える 進む 開ける 食べる 飼う
形容詞:何でもない 軽い 重い よい 可愛い 小さい 悪い 深い
形容動詞:そんな
副詞:ある日 いっぱい だぶだぶ また ガブガブ タラタラ 全部 長らく

 お爺さん/雀/お婆さんという構図です。お婆さん―舌(切る)―雀、お爺さん―つづら―雀という図式です。抽象化すると、人間/動物の構図でもあります。

 糊を食べてしまった[つまみ食い]ことに腹をたてた[立腹]お婆さんは雀の舌を切って追い出してしまう[追放]。雀の宿を訪ねた爺さんはもてなされ[歓待]、土産に軽いつづらを貰う[獲得]。重いつづらを得ようとした婆さんだったが、中身はきたないものだった[失敗]。

 軽いつづらを持って帰ってきた爺さんの真似をして重いつづらを持って帰った婆さんだったが中身はきたないものだった……という内容です。

 発想の飛躍は雀の舌を切ってしまうことでしょうか。お婆さん―舌(切る)―雀の図式です。

 お爺さんを主人公としますと、欲の深い婆さんは模倣者というところでしょうか。雀は贈与者となります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.285-288.

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