桃太郎――モチーフ分析
◆あらすじ
昔々、お爺さんとお婆さんがいた。二人の間には子供がなかったので、毎朝神さまに子供を授けてくださいと祈っていた。そうする内に一年過ぎ、二年過ぎた。ある日、お爺さんとお婆さんがいつものように神さまに祈っていると、どこからともなく、ここより北へ北へと進む内に大きな川の渕に出る。そこに大きな桃の木があって桃がなっているが、その中に一つ大きな桃がある。それを川へ落とさないように取って割ると子供が出るという声が聞こえてきた。お爺さんとお婆さんは喜んで、早速北へ北へと歩いて行った。しばらくすると大きな川があって、ほとりに大きな桃の木があった。桃が沢山なっていて、中に一つ大きな桃があった。お爺さんが木へ登って、桃を取ろうとすると枝が折れて、桃は川の中へ落ちて流れていったので、お爺さんとお婆さんはがっかりして家へ帰った。それからしばらく経って、ある日お爺さんは山へ木こりに、お婆さんは川へ洗濯に行った。お婆さんが洗濯をしていると、そこへ桃が流れてきた。
◆モチーフ分析
・お爺さんとお婆さんがいた
・二人の間には子供がなかったので、毎朝子供を授けてくださいと神さまに祈っていた
・一年過ぎ、二年が過ぎた
・いつもの様に神さまに祈っていると声がした
・ここから北へ進むと大きな川の渕に出る。そこに大きな桃の木があって桃がなっているという
・その中に一つ大きな桃がある。それを川へ落とさないように取って割ると子供が出るという
・喜んだお爺さんとお婆さんは早速北へ歩いていった
・しばらくすると大きな川があってほとりに大きな桃の木があった
・桃が沢山なっていて、中に一つ大きな桃があった
・お爺さんが木へ登って桃を取ろうとすると枝が折れて、桃は川へ落ちて流れていった
・がっかりしたお爺さんとお婆さんは家へ帰った
・しばらくしてお爺さんは山へ木こりに、お婆さんが川へ洗濯しに行くと、そこへ桃が流れてきた
形態素解析すると、
名詞:桃 お爺さん 川 お婆さん 子供 木 そこ 一つ 中 北 神 一 二 いつも ここ それ ほとり 二人 声 家 山 木こり 枝 毎朝 洗濯 渕 間
動詞:ある する いう 出る 取る 流れる 祈る いる なる 割る 喜ぶ 帰る 折れる 授ける 歩く 登る 落ちる 落とす 行く 進む 過ぎる
形容詞:ない
形容動詞:沢山
副詞:しばらく がっかり 早速
連体詞:大きな その
お爺さん/桃/お婆さんの構図です。お爺さん―桃―お婆さんの図式です。抽象化すると、人間/植物です。
子供がいないお爺さんとお婆さんが神さまに祈る[祈願]と、北の川のほとりに桃の木があって、その中で一番大きな桃を取れとお告げがあった[啓示]。さっそく取りに出かけたお爺さんとお婆さんだったが、桃を川に落としてしまう[落下]。がっかりしたお爺さんとお婆さんだったが、後日お婆さんが川で洗濯していると大きな桃が流れてきた[獲得]。
神さま(贈与者)のお告げで桃の実を取りに出かけたお爺さんとお婆さん(主人公)だったが、川に落としてしまう……という内容です。
桃太郎の前日譚的お話です。発想の飛躍は大きな桃の木でしょうか。お爺さん―桃―お婆さんの図式です。
また、お爺さんとお婆さんは子供が欠落していることになります。桃の実で充足されることになります。日常→非日常→日常と還った末に桃が流れてきます。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.284.
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