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2022年8月 3日 (水)

榎の実ならいで金がなる――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、二人の兄弟がいた。弟は横着者で、兄の財産を皆もって分家した。兄は年取った母を養わねばならないのに、財産は皆弟に取られて貧乏していたので、除夜がきても餅もつけない有様だった。弟は餅をたくさん搗いたが兄へはひとつもやらない。兄はせめて母だけでも餅を食べさせたいと思って弟のところへ餅をもらいに行った。弟の家ではたくさん餅を並べていたが、兄に一つでも食えとは言わない。自分で搗いて食べさせたらいいだろうと言ってくれようとしなかった。兄はすごすごと戻ってきたが、つくづく情けなくなって自分は年の暮れになっても餅さえよく搗かぬと言って杵を海に捨ててしまった。すると竜宮から使いが来て兄を竜宮へ連れていった。竜宮では唐金の馬を一匹くれた。そしてこの馬に一日を米を五合ずつ食べさせよ。五合しか食べさせてはいけないと言った。兄は喜んで馬を連れて帰ると、米を五合食べさせた。すると馬は金を一升ひった。そして毎日五合ずつ食べさせたので、まもなく沢山の金が貯まった。それを聞いて弟がやって来て、いい馬を貰ったそうだが兄弟の間柄だ、少し貸してくれないかと言った。兄は自分が貧乏して暮れに餅のよく搗かないので、せめて母に食べさせたいと思って弟のところに貰いにいったが、一つもくれなかったと言って馬を貸さなかった。すると母がそれでは二日だけ貸してやらぬかと言ったので、とうとう馬を貸してやった。そして決して一日に米を五合しか食わせてはいけないぞと言った。弟は馬を連れて帰ると、欲張りだから一日に一升の米を食べさせた。すると馬はぽっくり死んでしまった。弟は馬を背戸の柿の木の根元へ埋めた。兄は弟がいつまで待っても馬を返さないので、馬を戻すように弟のところへやって来た。弟は馬は死んだから柿の木の根元へ埋めたと言った。兄はお前が米を余計に食わせたからだと言って、大層力を落として柿の木の根元に埋めてある馬を掘りあてて持って帰り、自分の家の背戸の畑へ埋めて、墓印に榎(えのき)を一本植えておいた。ところが榎には葉が出ないで黄金がいっぱいついて出た。それで「これのお背戸の三つ又榎 榎の実ならいで金がなる」というのだそうだ。

◆モチーフ分析

・二人の兄弟がいた
・弟は兄の財産を皆もって分家した
・兄は母を養わなければならないのに、貧乏だった
・兄、弟に餅を分けてもらうよう頼む
・弟、一つも分けてやらない
・兄、情けなくなって杵を海に捨てる
・竜宮から使いが来る
・竜宮で唐金の馬をもらう
・一日に五合の米を食べさせるように教えられる
・言われた通りにすると、馬は一升の黄金をひる
・兄、次第に裕福になる
・弟が知って馬を借りようとする
・兄は餅のこともあって貸そうとしない
・母が二日だけ貸してやれと言う
・それで兄は馬を弟に貸す
・弟、馬に一升の米を食わせて死なせてしまう
・弟、馬を柿の木の根元に埋める
・兄、弟に馬を返すように言う
・弟、死んだので埋めたと答える
・兄、死体を掘って自分の家の畑に植え、榎を植える
・榎には葉が成らないで黄金が出た

 兄、弟に餅の<分配>を<依頼>する。弟、<断る>。兄、杵を海に<投棄>する。竜宮から使いが<来訪>する。竜宮を<訪問>する。唐金の馬を<贈与>される。馬、五合の米を<食う>と一升の黄金を<排出>する。弟が貸して欲しいと<依頼>する。兄、<断る>。母が二日だけ貸せと<言う>。兄、弟に馬を<貸す>。弟、馬に一升の米を<食わせ>て<死なせて>しまう。弟、死骸を柿の木の根元に<埋める>。兄、それを<掘り出す>。兄、自分の畑に<埋葬>し、榎を<植える>。榎から黄金が成る。

 竜宮を訪問する点では異郷訪問譚であります。また兄弟譚でもあります。発想の飛躍は米を五合食べて一升の黄金をひる唐金の馬でしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.137-139.

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