粟の飯――モチーフ分析
◆あらすじ
昔、鴻池に聟がいることになった。大金持ちだから聟にしてくれという人は沢山あった。そこで鴻池では「粟(あわ)ばかりのご飯を茶碗いっぱい盛り付けて何杯でも出しておいて一粒もこぼさぬ様に食べた者を聟にする」と立札を立てた。そこで我こそはという者がどんどん出かけて食べかけるが、ご飯があまりにこわい(かたい)ので、ぽろぽろこぼれて皆失敗した。ここに息子をもった父親がいた。この話を聞いて何とかして自分の息子を聟にやりたいと思って「中、食うちゃあへりをいれ 中、食うちゃあへりをいれ」という歌を作って、その歌を歌いながら歌の通りに中を食べてはほとりを中へ入れて食べる様にしつけた。そうして長いことやっている内に粟を一粒もこぼさずに食べられるようになった。そこで息子は鴻池へ行って粟飯を食べることになった。そしてこれまで教えられた通りに口の中で歌いながら食べたところ、見事一粒もこぼさずに食べることができた。それでめでたく鴻池の聟になった。我が子を出世させるためには、親はこうまで苦心をし、一粒のご飯もこぼさぬようなものでなければ出世はできない。
◆モチーフ分析
・鴻池で聟をとることになった
・粟ばかりで茶碗一杯に盛り付けて一粒もこぼさない者を聟とするとした
・我こそはと挑戦するが皆失敗する
・父親が息子に歌に合わせて飯を食べるようにしつける
・息子は教えられた通りにして一粒も残さず食べてみせ、聟になる
・子を出世させるにはこうまで苦心しなければならない
形態素解析すると、
名詞:聟 一粒 息子 こと 出世 失敗 子 我 挑戦 歌 父親 皆 粟 者 苦心 茶碗 通り 飯 鴻池
動詞:する なる 食べる こぼす しつける とる みせる 合わせる 教える 残す 盛り付ける
形容動詞:一杯
副詞:こう
鴻池/息子/父の構図です。抽象化すると、商家/主人公/家族です。鴻池―粟―息子―父の図式です。
鴻池で聟をとる[聟とり]ことになり、粟を茶碗一杯に盛り付け一粒もこぼさない者を聟とするとした[難題]。父が息子に歌の通りに食べるようにしつける[訓練]。息子、歌の通りに食べ、一粒も残さず食べ[完食]、聟になる[聟入り]。
一粒も残さず粟飯を食べたので、鴻池の聟入りができた……という内容です。
発想の飛躍は歌に合わせて粟飯を食べることでしょうか。鴻池―粟―息子―父の図式です。
粟飯に限りませんが、一粒もこぼさず完食するという難題はよく見られます。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.191-192.
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