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2022年8月28日 (日)

肉付きの面――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、嫁と姑がいた。嫁は信心深くて毎晩人目を忍んでお寺参りに行った。姑はそんなこととは知らず、別に男でもあって会うのではなかろうかと怪しんでいた。そこである日、姑がお前は毎晩出るが、一体どこへ行くのか訊くと、嫁は遊びに出ているから、どうぞ遊ばしてくださいと言った。姑はいよいよ不審でならないので、ある晩そっと後をつけると嫁はお寺へ参っていた。姑はお寺へ参ることが嫌でたまらなかったので、今夜こそ嫁をおどしてやろうと思ってある。鬼の面を被って竹藪に入って嫁が帰るのを待っていた。そこへ嫁が戻ってきたので姑が飛び出したが、嫁は「南無阿弥陀仏」と唱えてびくともしなかった。姑は嫁が案外落ち着いているので力抜けがした。そして鬼の面をはずそうとしたが、面がどうしても取れない。そのまま家へ帰って布団を被って寝ていた。夜が明けても起き上がれず布団の中にいた。そこへ嫁が来て具合を尋ねた。姑は恥ずかしくてたまらず、これまでのことを話して、どうぞ勘弁してくれと断りを言うと嫁は姑を寺に連れていった。そしてお経をあげてもらって、坊さんからご法話をきかせてもらうと、姑はいよいよ恥ずかしくてたまらず、頭を垂れていると、不思議に面がひとりでに離れて下へ落ちた。それで姑は大変喜んで心を入れ替えて嫁と仲良く暮らした。

◆モチーフ分析

・嫁と姑がいた
・嫁は信心深く毎晩人目を忍んでお寺参りしていた
・姑はそれを怪しんで、嫁にどこに行っているのか訊く
・嫁はどうか遊ばして欲しいと言う
・いよいよ怪しんだ姑は嫁の跡をつけると、嫁はお寺へ参っていた
・姑は嫁を驚かしてやろうと鬼の面を被って竹藪に隠れていた
・嫁が通りかかったので姑は飛び出したが、嫁はびくともしなかった
・力抜けした姑だったが、鬼の面を外そうとしたが、取れなくなった
・そのまま家へ帰って布団を被って寝てしまう
・夜が明けて嫁が具合を尋ねたので、姑は事情を話して断りを入れた
・嫁は姑を寺に連れていった
・坊さんの読経と法話を聞くと姑は恥ずかしくて頭を垂れた
・面がひとりでに離れて下へ落ちた
・姑は喜んで心を入れ替え、嫁と仲良く暮らした

 形態素解析をすると、
名詞:嫁 姑 面 鬼 お寺 それ どこ 下 事情 人目 具合 力抜け 坊さん 外そう 夜 家 寺 寺参り 布団 心 毎晩 法話 竹藪 読経 跡 頭 驚かし
動詞:怪しむ 被る いる する つける 入れる 入れ替える 参る 取れる 垂れる 寝る 尋ねる 帰る 忍ぶ 断る 暮らす 聞く 落ちる 行く 言う 訊く 話す 通りかかる 連れる 遊ばす 隠れる 離れる 飛び出す
形容詞:びくともしない 信心深い 恥ずかしい 欲しい
副詞:いよいよ そのまま どう ひとりでに 仲良く 喜んで 明けて

 嫁/姑の構図です。嫁―鬼/面―姑という図式です。

 嫁が夜になると外出するのを怪しんだ[疑惑]姑、跡をつける[追跡]。嫁の行き先は寺だった[判明]。姑、嫁を驚かそうと鬼の面を被る[着面]。嫁はびくともしない[効果なし]。姑の面が外れなくなってしまう[肉付き]。布団に入って寝込んだ姑の具合を嫁が尋ねる[見舞い]。姑、これまでの事情を打ち明ける[告白]。嫁、姑を寺に連れていく[連行]。読経で鬼の面は外れる[とれる]。姑、心を入れ替えた[改心]。

 嫁を驚かそうとした姑が鬼の面を被ると外れなくなってしまう……という内容です。

 発想の飛躍は肉付きの面でしょうか。嫁―鬼/面―姑という図式です。

 精神的な仮面をペルソナとも呼びますが、仮面が外れなくなってしまうのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.213-214.

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