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2022年8月31日 (水)

大根蒔き――モチーフ分析

◆あらすじ

 座頭の言うことは何でも信じる旦那がいた。ある日沢山の小作を雇って麻を蒔いていると、そこへ座頭が通りかかった。座頭はあの旦那は自分の言うことは何でも信じるから一つからかってやれと思った。すると仕事をしていた人が座頭に今日はどこへ行くのか訊いた。座頭は今はエダオの方からフシオの方へ行くと答えた。それを聞いた旦那は仕事を止めて枝のある苧(お)(麻)や節のある苧を作ったのでは金にならぬと言って麻を蒔くのを止めた。それから日を変えて大豆を蒔いているとまた座頭が通りかかった。何か長い物を風呂敷に包んで持っているので今日は長いものを持って行きなさるがと声をかけると座頭は長いことは長いが鞘ばかりでと言った。これを聞いた旦那はせっかく大豆を蒔いてもさやばかりできたのでは何にもならないと言って大豆を蒔くのを止めさせた。その内に時期が遅れたので大根しか植えるものが無くなった。それで旦那は小作を集めて大根を蒔くことにした。今日は座頭が通っても何も言うな。何か言うと色々な事を言って気をくじくからと言った。そこへまた座頭がやってきた。座頭がどなたもご苦労ですなと言ったが誰も一口もものを言わない。座頭は自分の言うことをそんなに気にかけなくてもよいではないか。わしの言うことは根も葉もないことだと言った。旦那はこれを聞いて根も葉もない大根を作ったとしても何にもならないと言ってまた大根蒔きを止めさせた。それで旦那は座頭の言葉を信じたばかりに一年中何も作らずじまいであった。

◆モチーフ分析

・座頭の言うことを何でも信じる旦那がいた
・麻を蒔いていると座頭が通りかかる
・小作人は座頭にどこへ行くのか尋ねる
・座頭、エダオからフシオの方へ行くと答える
・旦那、枝のある麻や節のある麻を作ったのでは金にならぬと麻を蒔くのを止める
・大豆を蒔いていると座頭が通りかかる
・持っている長い物は何かと訊くと、長いが鞘ばかりと座頭が答える
・大豆を蒔いてもさやばかりでは何にもならないと大豆を蒔くのを止めさせる
・時期が遅れたので大根を蒔くことにする
・座頭が通りかかっても声をかけるなと示し合わせる
・座頭が通りかかるが誰も口をきかない
・座頭、自分の言うことは根も葉もないことだと言う
・旦那、根も葉もない大根を作っても何にもならないと大根蒔きを止めさせる
・座頭の言葉を信じたばかりに旦那は一年中何も作らずじまいとなった

 形態素解析すると、
名詞:座頭 こと 旦那 麻 大根 大豆 何 一 さや どこ エダオ フシオ 口 声 小作人 方 時期 枝 物 節 自分 言葉 誰 金 鞘
動詞:蒔く なる 通りかかる 作る 止める 言う ある 信じる 答える 行く いる かける きく する 尋ねる 持つ 示し合わせる 訊く 遅れる
形容詞:根も葉もない 長い
副詞:何にも 何でも

 旦那/座頭の構図です。抽象化すると、地主/宗教者です。旦那―麻/大豆/大根―座頭という図式です。小作人―(止める)―旦那―(信じる)―座頭でもあります。

 種蒔きしていると座頭が通りかかる[通過]。座頭の答えで作物が不作になると思い込んだ旦那、種蒔きを止めさせる[中止]。それを繰り返して、とうとう一年中、種蒔きできなくなってしまった[不能]。

 種蒔きを思い込みで止めさせてしまう。それが三度繰り返されることになる……という内容です。

 発想の飛躍は旦那が座頭の言うことを何でも真に受けてしまうことでしょうか。旦那―麻/大豆/大根―座頭という図式です。

 座頭も意地悪です。座頭は目が見えない分霊感が強いとする見方もありますので、そういう点で旦那は座頭の言葉を重んじたのかもしれません。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.219-220.

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