蛙壺――モチーフ分析
◆あらすじ
昔あるところに大変仲の悪い姑と嫁がいた。ある日、姑はおはぎをこしらえて「おはぎや、嫁がきた時には蛙になって、わしが来た時にはおはぎになってくれ」と言った。嫁はそれを聞いて、お母さんはあんなことを言ってるから、自分が食ってやろうと姑が出るのを待っていた。姑がやがてお寺参りにいった。嫁は戸棚からおはぎを出して皆食べて、おはぎのあった壺へ田からとった蛙を二三匹入れておいた。姑が帰ってきておはぎを食べようと思って壺の蓋をとると蛙がピョンピョン飛び出した。そこで姑が「蛙や。嫁じゃない。婆さんだ」と言っても蛙はやはりピョンピョン飛ぶので、「わしがあんまり嫁をいびったので、おはぎが蛙になったのであろう」と後悔した。それからは心を入れ替えて嫁を可愛がり仲良く暮らした。
◆モチーフ分析
・仲の悪い姑と嫁がいた
・姑はおはぎをこしらえて、嫁が来たときには蛙になれとまじないをかける
・それを聞いた嫁は姑の外出を見計らっておはぎを食べてしまう
・嫁、おはぎを入れてあった壺に蛙を二三匹入れておく
・姑が帰ってきておはぎを食べようとすると壺から蛙が出てきた
・姑、蛙に自分は婆さんだと言うが、蛙のままである
・姑、自分が嫁をいびるからおはぎが蛙になったのだと後悔する
・姑、心を入れ替えて嫁と仲良く暮らした
形態素解析すると、
名詞:姑 蛙 おはぎ 嫁 壺 自分 二三 それ とき まま 仲 外出 婆さん 後悔 心
動詞:なる 入れる 食べる いびる かける こしらえる する まじなう 入れ替える 出る 嫁ぐ 帰る 暮らす 来る 聞く 見計らう 言う
形容詞:悪い
副詞:仲良く
嫁/姑の構図です。姑―(いびる)―嫁、おはぎ―(まじなう)―蛙といった組み合わせが考えられます。姑―蛙/おはぎ―嫁という図式でしょうか。
仲の悪い姑と嫁がいた[不仲]。姑、おはぎを作って、嫁が見たら蛙になれと言う[まじなう]。それを聞いた嫁、おはぎを食べて、代わりに蛙を入れておく[すり替え]。姑が帰るとおはぎが蛙となっている[変化]。後悔した姑、それからは嫁と仲良く暮らす[不仲解消]。
おはぎに蛙になれと言った(まじなった)ところ、蛙に変化してしまい後悔する……となっています。
発想の飛躍はおはぎに嫁が見たら蛙になれとまじないをかけるところでしょうか。姑―蛙/おはぎ―嫁の図式です。姑は自分のまじないが実現してしまったと勘違いしてしまうのです。
おはぎ―蛙の連想は、食べられるもの/食べられないものという二項対立からでしょうか。食べられないもので女性が見てびっくりするもの、しかし女性が捕まえられなくもないもの、身近にいるものと解釈できるかもしれません。古事記か日本書紀か忘れましたが、蛙を食べる部族の記述がありました。食べられなくはないけれども、記録として残しておくのですから珍しいことになります。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.212.
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