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2022年8月 1日 (月)

桃太郎――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、爺さんと婆さんがいた、爺さんは山へ木を伐りに、婆さんは川へ洗濯に行った。婆さんが川で洗濯していると上流から大きな桃が流れてきた。あまりに大きな桃なので爺さんと一緒に食べようと思って持って帰った。婆さんが包丁で桃を切ろうとすると桃がひとりでに割れ、中から大きな男の子が生まれた。たらいに湯を入れて洗ってやると、力の強い子でたらいを高くさしあげた。桃から生まれた桃太郎と名づけられた。桃太郎は成長して力の強い息子となった。ある日桃太郎はこれから鬼ヶ島へ征伐に行くから、きび団子を作ってくれと言った。婆さんはきび団子をこしらえて爺さんは鎧(よろい)や兜(かぶと)をこしらえて持たせ、刀も持たせ大きな幟(はた)をこしらえてやった。桃太郎は爺さん婆さんと別れて弁当を食べていると犬が来てどこに行くか訊いた。鬼ヶ島へ行くと答えて、きび団子を与えると犬はお供となった。次に猿がやって来た。猿もきび団子を与えてお供にした。今度は雉子(きじ)がやって来た。雉子もきび団子を与えてお供にした。それから丸木舟に乗って鬼ヶ島へ渡った。鬼ヶ島に行ってみると鬼が門番をしていた。雉子が鬼の目や鼻をつついて門番は中に逃げた。猿が門をよじ登って中から門を開けた。桃太郎が中へ攻め込んだ。犬はワンワン吠えて噛みつく。桃太郎は一番大きな鬼に刀を抜いて斬りかかった。鬼は金棒を振り回して桃太郎と戦ったがとうとう負けて降参した。助命する代わりに鬼たちが取った宝物を出させた。これを船に積み込んで戻った。爺さん婆さんは大喜びで、鬼からとった宝物や金を村の人に分けた。

◆モチーフ分析

・爺さんは山へ木を伐りに、婆さんは川へ洗濯へ行った
・婆さんが洗濯していると、上流から大きな桃が流れてきた
・婆さん、桃を家へ持って帰る
・婆さんが包丁で切ろうとすると、桃が割れ、中から男の子が生まれた
・男の子、たらいを差し上げて力の強いことを示す
・桃太郎と名づける
・桃太郎、成長して力の強い息子となった
・桃太郎、鬼ヶ島に征伐に行くから、きび団子をこしらえてくれと頼む
・爺さんと婆さん、きび団子や武具をこしらえる
・桃太郎、出発する
・桃太郎、きび団子で犬をお供にする
・桃太郎、きび団子で猿をお供にする
・桃太郎、きび団子で雉子をお供にする
・丸木舟に乗って鬼ヶ島へ渡る
・門番を雉子がつつく
・猿が門をよじ登って中から開ける
・桃太郎、中に攻め込む
・犬は鬼に噛みつく
・桃太郎、一番大きな鬼と戦う
・桃太郎、勝利。鬼たち降参する
・助命する代わりに宝物を持って帰る
・桃太郎、村に帰る
・爺さんと婆さん、宝物を分配する

 形態素解析すると、
名詞:桃太郎 婆さん きび団子 お供 中 桃 爺さん 鬼 力 宝物 洗濯 犬 猿 男の子 雉子 鬼ヶ島 こと たらい 上流 丸木舟 出発 分配 助命 勝利 包丁 家 山 川 征伐 息子 成長 木 村 武具 門 門番 降参
動詞:する 帰る こしらえる 持つ 行く つつく なる よじ登る 乗る 代わる 伐る 切る 割れる 名づける 噛みつく 差し上げる 戦う 攻め込む 流れる 渡る 生まれる 示す 開ける 頼む
形容詞:強い
副詞:一番
連体詞:大きな

 桃太郎/婆さん/爺さん、桃太郎/犬/猿/雉子、桃太郎/鬼の構図です。抽象化すると、主人公/家族、主人公/動物、主人公/妖怪です。婆さん―桃―桃太郎、桃太郎―きび団子―犬/猿/雉子、桃太郎―宝物―鬼の図式です。

 桃太郎、桃から生まれる[誕生]。力の強い息子に育つ[成長]。鬼ヶ島を征伐に行くときび団子と武装をこしらえてもらう[準備]。きび団子で犬、猿、雉子を家臣に加える[採用]。鬼ヶ島に攻め込む[攻撃]。鬼に勝利する[退治]。宝物を持って村に帰る[凱旋]。

 桃から生まれた桃太郎はきび団子で犬、猿、雉子を家来にして鬼ヶ島に攻め込んだ……という内容です。

 発想の飛躍は桃から生まれた桃太郎というところでしょうか。婆さん―桃―桃太郎の図式です。

 それ以前のパターンだと桃を食べて若返った爺さんと婆さんの間に桃太郎が生まれるという筋となっているそうです。きび団子で犬、猿、雉子を家来にするのも発想の飛躍と言えるでしょうか。桃太郎―きび団子―犬/猿/雉子の図式です。

 桃太郎は攻撃的だという評がありますが、それを反転させると「七人の侍」のプロットとなります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.129-133.

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