屁ひり爺――モチーフ分析
◆あらすじ
昔あるところに爺さんがいた。ある日お殿さまの山で木を伐っていたら、お殿さまの行列が通った。お殿さまが人の山で木を伐るのはどいつだと言った。爺さんは日本一の屁ひりじいと言った。それなら屁を一つひってみよとなり、ここには尻にとげがたってひられない、板の間は冷たくてひられない、畳はつるつるしてひられないとなり、毛氈(もうせん)ならひられるとなった。毛氈の上で錦ざらざら黄金ざらざら五葉の松原はスッポロポンのポンと大きな屁を見事にひった。お殿さまは大層喜ばれて、まさしく日本一の屁こき爺だ。褒美をとらせると言った。爺さんは褒美をもらった。それを聞いた隣の欲張り爺さんが自分も褒美を貰わねばと、お殿さまの山で木を伐っていた。お殿さまの行列が通って人の山で木を伐るのはどいつだと言った。欲張り爺さんは日本一の屁ひり爺と言った。それでは屁をひとつひってみせよとなった。ここには尻にとげがたってひられない、板の間は冷たくてひられない、畳はつるつるしてひられないとなり、毛氈ならひられるとなった。毛氈の上で錦ざらざら黄金ざらざら五葉の松原とやったが屁が出ない。そこで爺さんは錦ざらざら黄金ざらざら五葉の松原はスッポロポンのポンとやったが、出たのは屁ではなく大きな黄色なのがポン。お殿さまは怒って、よくも嘘をついたなと一刀のもとに尻を切ってしまった。だから欲張りをして人まねをしてはいけない。
◆モチーフ分析
・爺さんがお殿さまの山で木を伐っている
・そこにお殿さまの行列が通りかかり、とがめられる
・爺さんは自分を日本一の屁ひり爺と言う
・それなら屁をひってみよとなる
・爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない
・毛氈の上で大きな屁をひる
・お殿さま、大層喜んで、褒美を賜る
・それを隣の欲張り爺さんが聞く
・隣の爺さん、お殿さまの山で木を伐る
・お殿さまの行列が通りかかり、とがめられる
・隣の爺さん、自分が日本一の屁ひり爺と名乗る
・それなら屁をひってみよとなる
・隣の爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない
・毛氈の上だが屁が出ない
・もう一度ひると大便が出てしまう
・お殿さま、怒って隣の爺さんの尻を切ってしまう
形態素解析すると、
名詞:屁 爺さん お殿さま 隣 それ あれこれ 上 山 日本一 木 毛氈 爺 理由 自分 行列 そこ 大便 尻 欲張り 褒美
動詞:ひる つける とがめる 伐る 出る 通りかかる 切る 名乗る 喜ぶ 怒る 聞く 言う 賜る
副詞:もう 一度 大層
連体詞:大きな
爺さん/殿さま/隣の爺さんの構図です。抽象化すると、主人公/領主/模倣者です。爺さん―屁―殿さま、隣の爺さん―屁―殿さまの図式です。
爺さんが殿さまの山で木を伐る[伐採]。そこへ通りかかった殿さまがとがめる[詰問]。爺さん、日本一の屁ひり爺と言う[名乗り]。爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない[不発]。毛氈の上で見事に屁をひる[放屁]。殿さま、喜んで褒美を賜る[下賜]。それを聞いた隣の爺さん、山で木を伐る[伐採]。そこへ殿さまが通りかかってとがめる[詰問]。隣の爺さん、日本一の屁ひり爺と言う[名乗り]。隣の爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない[不発]。毛氈の上で大便をひってしまう[排泄]。怒った殿さま、隣の爺さんの尻を斬る[斬撃]。
爺さんの真似をした隣の爺さんだったが、大便を排泄してしまった……という内容です。
発想の飛躍は中々屁をひらずにここぞというところで屁をひることでしょうか。爺さん―屁―殿さまの図式です。これも隣の爺譚です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.134-136.
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