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2022年8月

2022年8月31日 (水)

大根蒔き――モチーフ分析

◆あらすじ

 座頭の言うことは何でも信じる旦那がいた。ある日沢山の小作を雇って麻を蒔いていると、そこへ座頭が通りかかった。座頭はあの旦那は自分の言うことは何でも信じるから一つからかってやれと思った。すると仕事をしていた人が座頭に今日はどこへ行くのか訊いた。座頭は今はエダオの方からフシオの方へ行くと答えた。それを聞いた旦那は仕事を止めて枝のある苧(お)(麻)や節のある苧を作ったのでは金にならぬと言って麻を蒔くのを止めた。それから日を変えて大豆を蒔いているとまた座頭が通りかかった。何か長い物を風呂敷に包んで持っているので今日は長いものを持って行きなさるがと声をかけると座頭は長いことは長いが鞘ばかりでと言った。これを聞いた旦那はせっかく大豆を蒔いてもさやばかりできたのでは何にもならないと言って大豆を蒔くのを止めさせた。その内に時期が遅れたので大根しか植えるものが無くなった。それで旦那は小作を集めて大根を蒔くことにした。今日は座頭が通っても何も言うな。何か言うと色々な事を言って気をくじくからと言った。そこへまた座頭がやってきた。座頭がどなたもご苦労ですなと言ったが誰も一口もものを言わない。座頭は自分の言うことをそんなに気にかけなくてもよいではないか。わしの言うことは根も葉もないことだと言った。旦那はこれを聞いて根も葉もない大根を作ったとしても何にもならないと言ってまた大根蒔きを止めさせた。それで旦那は座頭の言葉を信じたばかりに一年中何も作らずじまいであった。

◆モチーフ分析

・座頭の言うことを何でも信じる旦那がいた
・麻を蒔いていると座頭が通りかかる
・小作人は座頭にどこへ行くのか尋ねる
・座頭、エダオからフシオの方へ行くと答える
・旦那、枝のある麻や節のある麻を作ったのでは金にならぬと麻を蒔くのを止める
・大豆を蒔いていると座頭が通りかかる
・持っている長い物は何かと訊くと、長いが鞘ばかりと座頭が答える
・大豆を蒔いてもさやばかりでは何にもならないと大豆を蒔くのを止めさせる
・時期が遅れたので大根を蒔くことにする
・座頭が通りかかっても声をかけるなと示し合わせる
・座頭が通りかかるが誰も口をきかない
・座頭、自分の言うことは根も葉もないことだと言う
・旦那、根も葉もない大根を作っても何にもならないと大根蒔きを止めさせる
・座頭の言葉を信じたばかりに旦那は一年中何も作らずじまいとなった

 形態素解析すると、
名詞:座頭 こと 旦那 麻 大根 大豆 何 一 さや どこ エダオ フシオ 口 声 小作人 方 時期 枝 物 節 自分 言葉 誰 金 鞘
動詞:蒔く なる 通りかかる 作る 止める 言う ある 信じる 答える 行く いる かける きく する 尋ねる 持つ 示し合わせる 訊く 遅れる
形容詞:根も葉もない 長い
副詞:何にも 何でも

 旦那/座頭の構図です。抽象化すると、地主/宗教者です。旦那―麻/大豆/大根―座頭という図式です。小作人―(止める)―旦那―(信じる)―座頭でもあります。

 種蒔きしていると座頭が通りかかる[通過]。座頭の答えで作物が不作になると思い込んだ旦那、種蒔きを止めさせる[中止]。それを繰り返して、とうとう一年中、種蒔きできなくなってしまった[不能]。

 種蒔きを思い込みで止めさせてしまう。それが三度繰り返されることになる……という内容です。

 発想の飛躍は旦那が座頭の言うことを何でも真に受けてしまうことでしょうか。旦那―麻/大豆/大根―座頭という図式です。

 座頭も意地悪です。座頭は目が見えない分霊感が強いとする見方もありますので、そういう点で旦那は座頭の言葉を重んじたのかもしれません。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.219-220.

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大学ノートを買う

コンビニで大学ノートを買う。あらすじからモチーフ素と考えられる箇所を抜き出して紙に書き出してみたが、リニアに繋がっていて意外な組み合わせは見られなかった。お話を圧縮したものだから余計なものが介在する余地がなく秩序だっているのだ。基本的には類話間の関連をみる手法である。それをどうしてやっているのかというと、分析している内に何か見えてこないかなという期待があってのこと。実は目算なしでスタートしたのである。

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ノート術の本を読む

ここ数日、発想法の本に続いてノート術の本を読んでいる。僕の場合、パソコンで環境が足りているのですぐに参考にできるものは意外とない。

掟想視「思考と発想 ノート術」がいい線いっていると思う。紙に書き出したアイデアを線で結んで関連付けていく方法。意外な関連が見つかる場合があるらしい。後でパソコンで清書する……という方法論。Scarpboxが向いていると思う。

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2022年8月30日 (火)

茶栗柿ふ――モチーフ分析

◆あらすじ

 馬鹿な息子がいた。母親が遊んでばかりでいたらいけない。少しは商いをして戻れやと言った。息子は商いとはどんなことかと訊いたので母親は何か売って戻ることだと答えた。どんなものを売りに行くと息子が訊くと、母親は茶やら栗やら柿やらふやら売って戻るんだと答えた。それから息子は茶、柿、栗、ふをこしらえてもらって「茶栗柿ふ、茶栗柿ふ」と言って歩いたが誰も買ってくれなかった。晩になって戻って、やれ、しんどいと息子が言った。多少は売れたかと母親が訊くと、いっそ売れん。誰も買ってくれんと息子が答えたので母親はどういう風に言ったと訊いた。茶栗柿ふ、茶栗柿ふと言ったと息子が答えたので、それではいけない。茶栗柿ふじゃなんのことか分からないから、そういう風には言わずに茶は茶で別に、栗は栗で別に言わないといけないと言った。息子はそれから「茶は茶で別、栗は栗で別、柿は柿で別、ふはふで別」と言って歩いた。いっこも買い手がなくて晩になって戻った。多少は売れたかと母親が訊いたので全然売れないと息子が答えた。どう言ったのだと母親が訊くと「茶は茶で別、栗は栗で別、柿は柿で別、ふはふで別」と息子は言った。それではいけない。茶は茶で別々に、栗は栗で別々に、柿は柿で別々に、ふはふで別々に言わないとと答えた。息子は明くる日に「茶は茶で別々、栗は栗で別々、柿は柿で別々、ふはふで別々」と言った歩いた。とうとういっこも売れなかった。馬鹿な息子というものはなんぼ言っても訳が分からない。

◆モチーフ分析

・馬鹿な息子がいて母親が商いでもしろと言う
・息子が母親に商いとはなにか訊く
・母親、茶や栗や柿やふを売るのだと答える
・息子、母親から言われた通りに宣伝するが全く売れない
・息子、そのことを母親に話す
・母親、別々に売るのだと教える
・息子、母親に言われた通りに宣伝するが全然売れない
・母親、別々に売るのだと教える
・息子、母親に言われた通りに宣伝するが全然売れない
・馬鹿な息子は幾ら言っても訳が分からない

 形態素解析すると、
名詞:母親 息子 宣伝 通り 別々 商い 馬鹿 こと ふ 柿 栗 茶 訳
動詞:言う 売る 売れる 教える いる する 分かる 答える 訊く 話す
副詞:全然 なにか 全く 幾ら
連体詞:その

 母/息子の構図です。抽象化すると、家族同士です。息子―(売る)―茶/栗/柿/ふ、母親―教える/馬鹿―息子といった図式でしょうか。

 馬鹿な息子が母親に言われて商いに行く[商売]。母親に言われたそのまま売り文句にする[宣伝]ので全く売れない[販売不振]。それを報告した息子に母親は別々に売るのだと教える[教示]。以上を繰り返して終わる[繰り返し]。馬鹿は訳が分からない[教訓]。

 商いをするが売れない。それを報告すると宣伝の仕方を教えるが売れないという繰り返しとなる……という内容です。

 発想の飛躍は息子が母親に言われたそのままに声を上げて売ることでしょうか。その繰り返しが三度あります。

 これも息子の馬鹿さ加減が可愛らしく感じられます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.217-218.

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2022年8月29日 (月)

母の面と鬼の面――モチーフ分析

◆あらすじ

 親孝行な娘がいた。隣の村の財産家に子守り奉公していた。あるときお祭りがあったので、子供を背負ってお宮へ行った。すると、お母さんによく似た面を売っていたので買って帰った。それからは毎晩寝るときに、その面を箱から出して「お母さん、おやすみなさい」と言い、朝起きたときには「お母さん、お早うござします」と挨拶をした。それを下男が見つけて、ある日鬼の面とすり替えておいた。娘はそんなことは知らず、いつもの様に寝る前に取り出してみると、大変恐ろしい顔になっているので、びっくりした。どうしてこんなに機嫌が悪いのだろうか、それともどこか具合が悪いのだろうかと思うと、どうしても眠ることができない。そこで夜が明けるのを待ちきれないので主人に訳を話して親元へ泊まりに行かしてもらうよう頼むと、主人は泊まりに行ってもよいが、明日の朝にしてはどうかと言ったが、娘は心配でたまらないからすぐ行かせてくれと頼んだ。主人はそれなら行きなさいと言ったので、娘は喜んで早速出発した。隣村との境に峠があった。そこへ差し掛かると山賊が五六人出て娘を捕まえてしまった。山賊は自分たちは男ばかりで女がいないので困っている。お前はこれから飯炊きをせよと言うので、娘は仕方なく火を焚きはじめたが、中々うまく燃えない。煙たくてたまらないので、娘は箱の中から鬼の面を取りだして、それを被って火を焚いていると、ようやく火がボーッと燃え上がった。その灯りで山賊たちが娘の顔を見ると、いつの間にか鬼になっているので、びっくり仰天して「鬼が来た」と言って一目散に逃げ出した。娘は山賊たちが置いていったお金を持って家へ帰ってみるとお母さんは何のこともなく、元気で迎えてくれた。

◆モチーフ分析

・親孝行な娘が隣村に子守奉公していた
・お祭りがあったので子供を背負ってお宮へ行くと母に似た面が売っていたので買った
・朝晩、箱に入れたお面に挨拶をして母の無事を祈っていた
・それを下男が見て、母の面を鬼の面と入れ替えてしまった
・それを知らずに箱を開けると鬼の面となっていた
・心配した娘は主人に訳を話して夜間に村へ向けて出発する
・途中、峠で山賊たちに捕まり、飯炊きをさせられる
・火を焚いたが煙たかったので鬼の面で顔を被った
・それを見た山賊たちが仰天して一目散に逃げ出した
・娘、山賊たちが置いていったお金を持って家へ帰る
・母親は無事だった

 形態素分析をすると、
名詞:面 それ 娘 山賊 母 鬼 無事 箱 お宮 お祭り お金 お面 下男 主人 仰天 出発 夜間 奉公 子供 子守 家 峠 心配 挨拶 朝晩 村 母親 火 訳 途中 隣村 顔 飯炊き
動詞:する 見る ある なる 似る 入れる 入れ替える 向ける 売る 帰る 持つ 捕まる 焚く 知る 祈る 置く 背負う 行く 被る 話す 買う 逃げ出す 開ける
形容詞:煙たい
形容動詞:親孝行
副詞:一目散に

 娘/山賊の構図です。抽象化すると、主人公/敵対者です。娘―面/鬼―山賊という図式です。娘―面―母という図式もあります。母―面―鬼的な図式もあります。

 親孝行な娘が隣村で奉公していた[労働]。祭りの日に買った面を母代わりにして大事にしていた[代理]。ある日、下男がその面を鬼の面とすり替えてしまう[すり替え]。鬼の面へ変わったことで変事でもあったのかと娘、心配する[危惧]。夜に屋敷を出て村へ向かう[出立]。峠で山賊に捕まる[捕獲]。飯炊き[労働]をさせられるが火が煙たいので被った鬼の面を見て山賊たちが逃げてしまう[退散]。娘は山賊たちが置いていった金を持って実家に帰る[帰宅]。母は無事だった[安心]。

 面のすり替えで出たところを捕まってしまい、飯炊きをさせられるが鬼の面を被ると山賊たちが退散した……という内容です。

 発想の飛躍は、娘が被った鬼の面がたき火の火で照らされて本物の鬼の様に見えてしまうというところでしょうか。娘―面/鬼―山賊の図式です。

 事件の発端は下男が面をすり替えたことですが、それについては語られていません。

 「母の面と鬼の面」にはバリエーションがあり、主人公が男性の話もあります。しかし、主人公は女性とした方がより母親との関係が強まり、より適切であると思われます。おそらく始めは男性主人公の話として誕生したのではないでしょうか。それがどうにも具合が悪いから女性に変更された。初めから女性だったら途中で男性に変更されるとも思えません。

 伝統芸能では女性が般若になる展開は珍しくありませんので、母―鬼の連想はそれほど遠いところにはなさそうです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.215-216.

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2022年8月28日 (日)

「ブラタモリ」境港・米子編を見る

NHKプラスで「ブラタモリ」境港・米子編を見る。弓ヶ浜は川から自然に流れてた砂だけではなく、たたら製鉄によって流された砂によっても形成されていたとのこと。また、対岸の島根半島には断層が走っていて隆起したとのこと。皆生温泉は元々は海中に温泉が湧いていたのだが、砂が堆積して今のようになったそうだ。

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肉付きの面――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、嫁と姑がいた。嫁は信心深くて毎晩人目を忍んでお寺参りに行った。姑はそんなこととは知らず、別に男でもあって会うのではなかろうかと怪しんでいた。そこである日、姑がお前は毎晩出るが、一体どこへ行くのか訊くと、嫁は遊びに出ているから、どうぞ遊ばしてくださいと言った。姑はいよいよ不審でならないので、ある晩そっと後をつけると嫁はお寺へ参っていた。姑はお寺へ参ることが嫌でたまらなかったので、今夜こそ嫁をおどしてやろうと思ってある。鬼の面を被って竹藪に入って嫁が帰るのを待っていた。そこへ嫁が戻ってきたので姑が飛び出したが、嫁は「南無阿弥陀仏」と唱えてびくともしなかった。姑は嫁が案外落ち着いているので力抜けがした。そして鬼の面をはずそうとしたが、面がどうしても取れない。そのまま家へ帰って布団を被って寝ていた。夜が明けても起き上がれず布団の中にいた。そこへ嫁が来て具合を尋ねた。姑は恥ずかしくてたまらず、これまでのことを話して、どうぞ勘弁してくれと断りを言うと嫁は姑を寺に連れていった。そしてお経をあげてもらって、坊さんからご法話をきかせてもらうと、姑はいよいよ恥ずかしくてたまらず、頭を垂れていると、不思議に面がひとりでに離れて下へ落ちた。それで姑は大変喜んで心を入れ替えて嫁と仲良く暮らした。

◆モチーフ分析

・嫁と姑がいた
・嫁は信心深く毎晩人目を忍んでお寺参りしていた
・姑はそれを怪しんで、嫁にどこに行っているのか訊く
・嫁はどうか遊ばして欲しいと言う
・いよいよ怪しんだ姑は嫁の跡をつけると、嫁はお寺へ参っていた
・姑は嫁を驚かしてやろうと鬼の面を被って竹藪に隠れていた
・嫁が通りかかったので姑は飛び出したが、嫁はびくともしなかった
・力抜けした姑だったが、鬼の面を外そうとしたが、取れなくなった
・そのまま家へ帰って布団を被って寝てしまう
・夜が明けて嫁が具合を尋ねたので、姑は事情を話して断りを入れた
・嫁は姑を寺に連れていった
・坊さんの読経と法話を聞くと姑は恥ずかしくて頭を垂れた
・面がひとりでに離れて下へ落ちた
・姑は喜んで心を入れ替え、嫁と仲良く暮らした

 形態素解析をすると、
名詞:嫁 姑 面 鬼 お寺 それ どこ 下 事情 人目 具合 力抜け 坊さん 外そう 夜 家 寺 寺参り 布団 心 毎晩 法話 竹藪 読経 跡 頭 驚かし
動詞:怪しむ 被る いる する つける 入れる 入れ替える 参る 取れる 垂れる 寝る 尋ねる 帰る 忍ぶ 断る 暮らす 聞く 落ちる 行く 言う 訊く 話す 通りかかる 連れる 遊ばす 隠れる 離れる 飛び出す
形容詞:びくともしない 信心深い 恥ずかしい 欲しい
副詞:いよいよ そのまま どう ひとりでに 仲良く 喜んで 明けて

 嫁/姑の構図です。嫁―鬼/面―姑という図式です。

 嫁が夜になると外出するのを怪しんだ[疑惑]姑、跡をつける[追跡]。嫁の行き先は寺だった[判明]。姑、嫁を驚かそうと鬼の面を被る[着面]。嫁はびくともしない[効果なし]。姑の面が外れなくなってしまう[肉付き]。布団に入って寝込んだ姑の具合を嫁が尋ねる[見舞い]。姑、これまでの事情を打ち明ける[告白]。嫁、姑を寺に連れていく[連行]。読経で鬼の面は外れる[とれる]。姑、心を入れ替えた[改心]。

 嫁を驚かそうとした姑が鬼の面を被ると外れなくなってしまう……という内容です。

 発想の飛躍は肉付きの面でしょうか。嫁―鬼/面―姑という図式です。

 精神的な仮面をペルソナとも呼びますが、仮面が外れなくなってしまうのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.213-214.

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2022年8月27日 (土)

突破口が見つかる

昔話、モチーフの形態素解析から名詞―名詞、名詞―名詞―名詞、名詞―動詞―名詞といったものの意外な組み合わせに発想の飛躍の秘密が隠されているのではないかと思いつく。閃きではないが、「蛙壺」の記事執筆中に思いつく。突破口が見えた気がする。

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蛙壺――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところに大変仲の悪い姑と嫁がいた。ある日、姑はおはぎをこしらえて「おはぎや、嫁がきた時には蛙になって、わしが来た時にはおはぎになってくれ」と言った。嫁はそれを聞いて、お母さんはあんなことを言ってるから、自分が食ってやろうと姑が出るのを待っていた。姑がやがてお寺参りにいった。嫁は戸棚からおはぎを出して皆食べて、おはぎのあった壺へ田からとった蛙を二三匹入れておいた。姑が帰ってきておはぎを食べようと思って壺の蓋をとると蛙がピョンピョン飛び出した。そこで姑が「蛙や。嫁じゃない。婆さんだ」と言っても蛙はやはりピョンピョン飛ぶので、「わしがあんまり嫁をいびったので、おはぎが蛙になったのであろう」と後悔した。それからは心を入れ替えて嫁を可愛がり仲良く暮らした。

◆モチーフ分析

・仲の悪い姑と嫁がいた
・姑はおはぎをこしらえて、嫁が来たときには蛙になれとまじないをかける
・それを聞いた嫁は姑の外出を見計らっておはぎを食べてしまう
・嫁、おはぎを入れてあった壺に蛙を二三匹入れておく
・姑が帰ってきておはぎを食べようとすると壺から蛙が出てきた
・姑、蛙に自分は婆さんだと言うが、蛙のままである
・姑、自分が嫁をいびるからおはぎが蛙になったのだと後悔する
・姑、心を入れ替えて嫁と仲良く暮らした

 形態素解析すると、
名詞:姑 蛙 おはぎ 嫁 壺 自分 二三 それ とき まま 仲 外出 婆さん 後悔 心
動詞:なる 入れる 食べる いびる かける こしらえる する まじなう 入れ替える 出る 嫁ぐ 帰る 暮らす 来る 聞く 見計らう 言う
形容詞:悪い
副詞:仲良く

 嫁/姑の構図です。姑―(いびる)―嫁、おはぎ―(まじなう)―蛙といった組み合わせが考えられます。姑―蛙/おはぎ―嫁という図式でしょうか。

 仲の悪い姑と嫁がいた[不仲]。姑、おはぎを作って、嫁が見たら蛙になれと言う[まじなう]。それを聞いた嫁、おはぎを食べて、代わりに蛙を入れておく[すり替え]。姑が帰るとおはぎが蛙となっている[変化]。後悔した姑、それからは嫁と仲良く暮らす[不仲解消]。

 おはぎに蛙になれと言った(まじなった)ところ、蛙に変化してしまい後悔する……となっています。

 発想の飛躍はおはぎに嫁が見たら蛙になれとまじないをかけるところでしょうか。姑―蛙/おはぎ―嫁の図式です。姑は自分のまじないが実現してしまったと勘違いしてしまうのです。

 おはぎ―蛙の連想は、食べられるもの/食べられないものという二項対立からでしょうか。食べられないもので女性が見てびっくりするもの、しかし女性が捕まえられなくもないもの、身近にいるものと解釈できるかもしれません。古事記か日本書紀か忘れましたが、蛙を食べる部族の記述がありました。食べられなくはないけれども、記録として残しておくのですから珍しいことになります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.212.

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2022年8月26日 (金)

いい線いってる――掟想視「思考と発想 ノート術」

掟想視「思考と発想 ノート術」を読む。かなりいい線をいっていると思う。特に発想ノート術。発想の時点では紙のノートを使うのである。ノートにアイデアを書つけ、関連性のあるアイデア間を線で繋ぐ。思いつく限りのアイデアを記し、線を引いていく。すると意外な繋がりが見えてくることがあるのだそうだ。

最終的にはプレーンなテキストファイルで清書して保存する。

リラックスして脳がデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれる状態になっていると閃きが起きやすいそうである。

僕自身は考えが(いい意味で)煮詰まっているときに入浴すると、ふとした想いが浮かんでくることが多い。散歩ではそれは起きないので個人差があるのだと思う。

紙のノートに書き付けていく作業はScarpboxのようなツールで代用できないだろうか。アイデア同士の距離の情報は欠如するが。

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化け猫――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔ある所で若者たちが大勢集まって踊っていると、そこへ見たこともない姉さんが来て皆と一緒に踊った。踊りが済んでそれぞれ家へ帰るとき、姉さんに興味を抱いた一人の若者があとから姉さんの跡をついていった。すると、姉さんは近所のお寺へ入り、ニャンと啼いた。若者はそれを聞くと真っ青になって帰った。明くる日若者はお寺へ行って和尚さんにそのことを話した。お寺には和尚さんが可愛がっている古い猫がいた。和尚さんは若者が帰ると猫を呼んで出ていってくれと言った。猫は出ていけというなら出ていく。自分がいると参詣人も少ないだろうから、これまで長いこと可愛がっていただいた恩返しに参詣人が沢山来るようにしてあげると言った。そして何時何日(いついつか)にどこどこの婆さんが死ぬから葬式の時に自分が火車になって死人を棺から出して空へ吊り上げる。よその坊さんが来てお経をあげると死人は上へあがるが、和尚さんが経をあげると死人は下がって棺へ収まるようにすると言った。猫が言ったその日になるとその婆さんは死んだ。そして葬式をしていると結縁の時に空が曇って火車が来て死人を掴んで空に吊り上げた。葬式に来ていた坊さんは一生懸命お経を読んだが、死人は空に吊されたままだんだん上へ上がっていく。それで近所の寺の和尚さんを呼んでお経をあげてもらうと死人はだんだん下りて来て棺へ収まり、無事に葬式が済んだ。それから和尚さんの評判が高くなって参詣人がどんどん来るようになった。そして猫はいつの間にかいなくなった。

◆モチーフ分析

・若者たちが踊っているところに姉さんがやって来る
・踊りが済み、帰る際に若者の一人が姉さんの跡をつける
・姉さん、ニャアと啼いて寺へ入る
・翌日、若者はお寺の和尚さんに訳を話す
・和尚さん、飼い猫に出ていってくれと言う
・猫、出ていく代わりに恩返しすると言う
・ある婆さんの葬式に火車が現れる
・火車、和尚さんの読経で死体を取り損ねる
・和尚さんの評判が高くなる
・猫はいつの間にか消える

 モチーフを形態素解析すると、

名詞:和尚 姉さん 若者 火車 猫 お寺 ところ 一人 婆さん 寺 恩返し 死体 翌日 葬式 訳 評判 読経 跡 踊り 際 飼い猫
動詞:出る 言う いく つける やって来る 代わる 入る 取り損ねる 啼く 帰る 消える 済む 現れる 話す 踊る
形容詞:高い
副詞:いつの間にか
連体詞:ある
感動詞:ニャア

 和尚/猫の構図です。若者―(つける)―姉さん/猫、和尚―恩返し―猫/火車の図式です。

 若者たちが踊っているところに姉さんがやって来る[来訪]。姉さんの跡をつける[追跡]とニャアと啼いてお寺へ入っていった[目撃]。若者、和尚さんに事情を話す[説明]。和尚さん、猫に出ていくように言う[追放]。猫、恩返しをすると語る[計画]。婆さんの葬式で火車が出る[登場]。火車、和尚さんの読経で逃げる[退散]。和尚さんの評判が上がる[高評価]。猫、いつの間にか消える[退却]。

 猫に出ていくように言うと猫は恩返しをすると語る。火車が登場するも退散する……という内容です。

 発想の飛躍は猫が火車となることでしょうか。和尚―恩返し―猫/火車の図式です。

 火車は「山椒九右衛門」「渡廊下の寄付」といった『石見の民話』の幾つかの話に登場します。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.210-211.

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2022年8月25日 (木)

思想は堂々巡り――佐々木敦「ニッポンの思想」

佐々木敦「ニッポンの思想」を読む。目次に挙げられているのは浅田彰、中沢新一、蓮実重彦、柄谷行人、福田和也、大塚英志、宮台真司、東浩紀といった面々である。八〇年代のいわゆるニューアカからゼロ年代までの日本の現代思想について触れられている。本自体は読了するのにさほど時間はかからなかったが、思想は極限まで思考を突き詰めるので、引用箇所を読んでもよく分からない部分が多かった。突き詰めると堂々巡りとなるというところだろうか。

僕自身、大学入学は八〇年代後半なのでニューアカの空気はあった。中沢新一の講演は聴いた記憶がある。何でも料亭政治の始まりは幕末の志士たちによるのだとか。ただ、就職してからは疲れてしまうので本を読まなくなってしまったが。

個人的な感想としては、ポストモダンというよりインターネット以前/以後の方が実感に近い。大きな物語というのはたまたま長く続いた社会通念でしかないのではないか。現代はある時代から次の時代への端境期にあるのではないかといったところである。

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狼と牛鬼――モチーフ分析

◆あらすじ

 狼は人間が牛鬼や狐に危害を加えられようとするときは、その人間の眉毛を一本抜いて目に当ててその人が良い人が悪い人かをみる。その人が悪い人であったら体は人間であっても頭は畜生の類いになって見えるが、良い人であったら頭も人間に見えるということである。狼は悪い人だったら決して助けないが、良い人は助けてくれて、その人の家まで送り届けてくれる。これを送り狼といって、送り狼に送ってもらったときは足を洗ったたらいの水を捨ててたらいを逆さにして伏せ「ご苦労だったのう」と礼をいうと狼は安心して帰る。もしそうしないと狼は立ち去らないでいつまでもそこにいるそうだ。

 昔、川戸の小田の桜屋の爺さんが田野へズク(銑鉄)を負って行っての帰りに日が暮れて七日渕の向こうまで行ったとき、狼が袖をくわえて竹藪の中へ連れ込んだ。狼に喰われるのかとビクビクしていると、狼は爺さんをそこへ座らせて腰を下ろした。すると人臭いと言って牛鬼が出てきた。川向こうの住郷の平からも牛鬼が「よい肴(さかな)があるではないか」と言った。こっちの牛鬼は「肴はあっても守りがついていてつまらんから、これから波子(はし)の浜へ出よう」と言った。両方の牛鬼は江川を挟んで話し合っていたが、そのまま行ってしまった。しばらくして狼は爺さんの袖をくわえて道へ連れ出した。「ようこそ助けてくれたのう」と礼を言うと、狼はなおも袖をくわえて小田の家まで送ってきた。爺さんは足を洗ってその水を移して「ご苦労だったのう」と言ってたらいを伏せると、狼は安心したように山へ帰っていった。

◆モチーフ分析

・狼は人間が牛鬼や狐に襲われたときには、その人間の眉毛を一本抜いて良い人か悪い人かみる
・悪い人だったら頭が畜生の類いに見える
・良い人だったら頭も人間に見える
・狼は悪い人だったら決して助けない
・狼は良い人だったら助けてその人の家まで送り届けてくれる
・送り狼に送ってもらったときは、足を洗ったたらいの水を捨てて、たらいを逆さにして伏せて、ご苦労だったと礼を言うと狼は安心して帰る
・そうしないと狼は立ち去らないで、いつまでもそこにいる
・川戸の爺さんが銑鉄を背負って行っての帰り道で狼に遭遇した
・狼は爺さんの袖をくわえて竹藪の中へ入った
・中に入ると狼は腰をおろした
・すると牛鬼の声が聞こえてきた
・人がいるが狼がいるから獲られないと牛鬼たち会話する
・牛鬼たち去って行く
・狼、爺さんの袖をくわえて道に出る
・爺さんの家まで送り狼する
・爺さん、狼に礼を言ってたらいを伏せる
・安心した狼、去っていく

 形態素解析すると、
名詞:狼 人 爺さん 牛鬼 たらい 人間 とき 中 安心 家 礼 袖 送り狼 頭 一 いつ ご苦労 そこ 会話 声 川戸 帰り道 水 狐 畜生 眉毛 竹藪 腰 足 逆さ 道 遭遇 銑鉄
動詞:いる する くわえる 伏せる 入る 助ける 行く 見える 言う おろす たち去る みる 出る 去る 帰る 抜く 捨てる 洗う 獲る 立ち去る 聞こえる 背負ってる 襲う 送り届ける 送る 類う
形容詞:悪い 良い
副詞:そう 決して
連体詞:その

 狼/爺さん/牛鬼の構図です。抽象化すると、動物/人/妖怪です。狼―爺さん―牛鬼の図式です。

 銑鉄売りの爺さんが帰り道で狼に遭った[遭遇]。狼、爺さんの袖をくわえて竹藪の中に隠れる[隠蔽]。牛鬼の会話が聞こえる[聴聞]。狼がいるので牛鬼は爺さんを捕獲できない[不可能]。牛鬼、去る[退去]。送り狼で爺さん、自宅に戻る[帰宅]。合図をして狼、去る[退去]。

 牛鬼に襲われそうになったが、送り狼で無事だった……という内容です。

 発想の飛躍は爺さんを襲うかに見えた狼が実は牛鬼から爺さんを守っていたというところでしょうか。狼―爺さん―牛鬼の図式です。

 送り狼は現代では逆の意味で使用されているようです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.208-209.

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2022年8月24日 (水)

どういうカウントをしているのか

フェラン「アンマークド」を読みはじめる。Kindle for PCの表示によると6ページで1%進むようだ。そうすると600ページ近くあることになり、オースランダー「ライブネス」より長いことになる。しかしKindle for PCのページ数では200ページ程である。ライブネスが280ページ程の表示であり、なぜこの様な計算になるのか分からない。

一日3%進むことを目標としている。それなら大体ひと月で読める計算になる。

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一本草――モチーフ分析

◆あらすじ

 夫婦の狐がいた。ところが雄狐が猟師にとられてしまった。これを悲しんだ雌狐は何とかして夫の仇をとろうと思って、女に化けて猟師のところへ訪ねていった。そして妻にして欲しいと頼んだ。猟師は独り者だったから妻にした。そのうちに子供ができた。子供はすくすくと大きくなった。ある日いつものように男は猟に出た。そして夕方になって帰って家へあがると何か大きな尻尾のようなものを踏んだ。すると女房がキャッといって急いで尻尾を隠した。男はびっくりしてお前は獣だろうと言った。女房は自分は男に殺された狐の妻である。何とかして夫の仇を討ちたいと思って人間に化けて男の妻にしてもらった。そして隙を狙って殺そうと思ううちに可愛い子供が生まれて、それもできず今日までこうして暮らしていた。しかしこうなってが仕方がない。男を騙したことはお詫びする。子供はどうか立派に育てて欲しい。きっと恩返しすると言ってコンコンと啼いて逃げていった。そのうち田植え時期になった。妻がいなくなった男は小さい子供を連れて一人で田植えをしなければならない。代(しろ)をかいて苗を配って昼飯を食べて来て見ると、田にはいつの間にかきれいに苗が植えてあった。次の日もその次の日も同じことが続いた。不思議に思って誰が植えてくれるのか見ようと思って、山へ登って弁当を食べながら見ていると狐がたくさん出てきて箒柴をかついでまたたく間に植えてしまった。女房になった狐が仲間をつれて来て植えてくれるのかと男は喜んだ。秋になると余所の稲は皆穂が出たがこの男の稲には穂が出ない。そこで地頭がお前の田は穂が出ないから年貢はいらぬと言った。男はその稲を刈ってこいでみると穂がないのに籾(もみ)がどんどん出て大変な収穫であった。それが一本草という稲で、一本草の稲の穂は袴(はかま)より上には出ないのだそうだ。

◆モチーフ分析

・夫婦の狐がいたが、雄の狐が猟師にとられてしまった
・雌の狐、仇をとるため女に化けて猟師の嫁になる
・子供ができ、すくすくと成長した
・男が猟から戻ると大きな尻尾を踏んだ
・男、女房にお前は獣だろうと言う
・女房は訳を話して騙したことを詫びる
・狐、逃げていく
・男、独りで田植えをしなければならなくなる
・代をかいて苗を配って昼飯を食べるといつの間にか苗が植えてある
・山へ登ってみると、狐が苗を植えていた
・秋になったが男の稲には穂がでなかった
・地頭が年貢を免除する
・男、稲をこぐと籾がどんどん出て大収穫だった
・それが一本草である

 形態素解析すると、
名詞:狐 男 苗 女房 猟師 稲 一 お前 こと それ ため 仇 代 免除 地頭 大収穫 夫婦 女 嫁 子供 尻尾 山 年貢 成長 昼飯 独り 猟 獣 田植え 秋 穂 籾 訳 雄 雌
動詞:できる 出る 化ける 戻る 登る 言う 詫びる 話す 踏む 逃げる 配る 食べる 騙す
副詞:いつの間にか すくすく どんどん
連体詞:大きな

 猟師/狐の構図です。人間/動物とも抽象化できます。雌狐/女房―子供―猟師の図式です。

 夫婦の狐、雄が猟師にとられる[射殺]。雌狐、仇をとるため[復讐]女に化けて猟師と結婚する[婚姻]。子供が生まれる[誕生]。狐であることがばれてしまう[露見]。狐、去る[退去]。狐、男の田植えを手伝う[補助]。男の稲は大収穫であった[獲得]。

 仇をとろうとするも、子供が産まれて情が移ってしまう……という内容です。

 発想の飛躍は女に化けて猟師の嫁になるも、子供ができてしまうことでしょうか。雌狐/女房―子供―猟師の図式です。

 情が移って敵討ちがうやむやになってしまいます。「見るな」の禁止が破られた訳ではありませんが、正体を知られることで、雌狐は(人間にとって)異界に帰ってしまうのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.206-207.

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2022年8月23日 (火)

きまった運――モチーフ分析

◆あらすじ

 浜田の方ではずっと奥の山手の地方を奥方と言う。昔、奥方の者は西へ出て浜田まで戻ってくると日が暮れた。そこで三宮(さんくう)さんの宮で宿を借りて寝ていると、夜が更けてから外を馬に乗ってくる人があった。三宮さんの前まで来ると行ってきましょうじゃないかと声をかけた。三宮さんはどこへ行きなさると言った。奥方の何兵衛のもとにお産があると答えた。三宮さんは今晩はお客があるから行くことができない。あんた頼むと言った。すると馬に乗った人は奥方の方へ行った。それは人が産まれるときには必ず立ち会う杓子の神さまだった。しばらくすると、また馬の足音がして、外から同じように声をかけた。それは産(うぶ)の神さまだった。しばらくするとまた馬の足音がして運勢の神さまが声をかけた。しかし三宮さんは今晩はお客があるから行けないからよろしく頼むというので奥方の方へ行った、明け方になって奥方へ行った神さまたちが戻ってきて今戻ったと三宮さんに挨拶をした。お産はどのようだったと訊くと、お産は主の方にも家来の方にも何れも安産で、主の方は息子、家来の方は娘と外から言った。運勢はと訊くと、主の方は運勢がない。家来の方は西東の蔵の主と答えた。それを聞いていた男は自分の女房が子を産んだのに違いないと思って、急いで家へ帰ってみると、自分のところに男が、下作のところに女の子が生まれていた。男はこれは二人を夫婦にさせるより他はないと思って、どちらも同じ晩に安産であったのはめでたい。三日の名つけもこっちでしてやる。十五になったら嫁にとろうと言って何から何まで世話をした。下作の方でも親方の言うことではあるし、いいことなので何でも親方の言う通りにした。そして十五になると二人は夫婦になったが、親が死ぬとだんだん身上が悪くなり、とうとう何もなくなってしまった。そこで夫婦別れをして女は旅に出た。一軒の家で泊めてやるというので泊めてもらった。ご飯の仕度をしようとすると、亭主が米びつの中に米はあるからそれを三升炊いてくれと言った。女が米びつをみると四斗くらい入る米びつに白米がいっぱい入れてあった。それを食べると亭主はうたた寝してしまった。それから寝る時になると亭主が奥の戸棚に布団があるから自分に一枚かけてくれ。お前も一枚かけて寝なさいと言った。女が戸棚をあけてみると大層な布団があった。それで一枚を亭主にかけ一枚を自分が着て寝た。明くる朝亭主は米を二升ほど炊いてくれというので、それを炊いて食べると女は暇乞いをして出たが、途中で後戻りした。そして、昨晩泊まった家の亭主と夫婦になれば長者になるという夢を見たから夫婦になってくれと言った。すると亭主も自分もそんな夢をみたが、自分から言い出すのもおかしいから黙っていた。ここにおれと言うので二人は夫婦になった。そうして暮らしている内にめきめき身上が良くなって間もなく長者になり西東に蔵を建てた。はじめの男は夫婦別れをしてからも暮らしはだんだん悪くなって、箕(みの)売りになって長者の家へ来た。女中が箕などは余るほどあるからいらぬと言った。先の亭主の声なので女房が出ていって、裾の長者の家に箕の五枚や十枚はないと不自由だから買ってやりなさいと言って箕を五枚買わせた。また四五日経つと先の亭主が箕を売りにきた。女中が断ると、女房が出て長者の館には箕の五枚や十枚は新しいのがなければいけないと言って今度は十枚買ってやった。男はそれを買ってもらって喜んで門の外まで出ると倒れて死んでしまった。女房は旦那に頼んで丁寧に葬式をしてやったが、家はますます栄えた。

◆モチーフ分析

・奥方の者が浜田の三宮神社に泊まったところ、杓子の神、産の神、運勢の神がやってくる
・三宮の神は来客があるから行かれないと答える
・奥方に行って戻ってきた神々、主人に男、家来に女が生まれたと言う
・男は衰運、女は盛運と奥方の者は聞く
・奥方の者、自分のところに違いないと思う
・奥方の者、帰って自分の息子と下作の娘の縁組みをする
・十五になって息子と娘、結婚する
・ところが親が死ぬと衰運になる
・夫婦別れして女は旅に出る
・女、一夜の宿を求める
・女、亭主にここの亭主と結婚すると盛運となるという夢を見たと打ち明ける
・亭主も同じ夢をみたといい、二人は夫婦になる
・二人は盛運で蔵が建つ
・そこに前の夫が箕を売りに来る
・女、理由をつけて箕を五枚買ってやる
・次に女、理由をつけて箕を十枚売ってやる
・男、屋敷を出ると急死してしまう
・女、男を丁寧に弔う
・家はその後も繁盛した

 形態素解析すると、
名詞:女 奥方 男 者 亭主 盛運 神 箕 ところ 三宮 二人 夢 娘 息子 理由 結婚 自分 衰運 十 十五 五 ここ そこ 一夜 丁寧 下 主人 作 前 売り 夫 夫婦 夫婦別れ 家 家来 宿 屋敷 後 急死 旅 杓子 来客 浜田 産の神 神々 神社 縁組み 繁盛 蔵 親 運勢
動詞:なる いう つける 出る 行く ある する みる やる 売る 帰る 建つ 弔う 思う 戻る 打ち明ける 来る 死ぬ 求める 泊まる 生まれる 答える 聞く 見る 言う 買う
形容詞:違いない
形容動詞:同じ
副詞:次に
連体詞:その

 奥方の者/神、息子/娘の構図です。抽象化すると、主人公の父/神、男/女です。奥方の者―(聞く)―神、息子―箕―娘の図式です。

 自分の息子は衰運、家来の娘は盛運と神の声を聞いた[聴聞]奥方の者、息子と娘を縁組みする[予言の準備]。十五歳になって結婚[婚姻]したが親が死んで衰運になる[没落]。それで離婚する[離縁]。旅にでた女、一夜の宿を請う[宿借り]。盛運の夢をみた女、そこの亭主と結婚する[婚姻]。盛運となり蔵が建つ[到富]。そこに以前の夫がやってくる[来訪]。女、理由をつけて箕を買う[援助]。前の夫、家を出ると死んでしまう[死亡]。女、以前の夫を丁寧に弔う[弔い]。

 発想の飛躍は自分の子供の運勢について神々の話を聞くところでしょうか。奥方の者―(聞く)―神の図式です。

 運定めの昔話は広く分布していますが、娘と息子が結婚するも不和で離婚してしまうという筋の話が多いようです。この話で息子の衰運の方が娘の盛運より強いようです。

 浜田の三宮神社の正式名称は大祭天石戸彦(おおまつりあめのいわとひこ)神社です。現在では夜神楽の定期公演を行っていることで知られています。

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◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.202-205.
・前田久子「運定めの昔話『男女の福分』―『立ち聞き』モチーフをめぐって―」『鼓:伝承児童文学・近代以前日本児童文学研究と資料』(1)(2005)pp.101-138

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2022年8月21日 (日)

ひとつおぼえ――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところにお母さんと馬鹿な息子がいた。魚売りが来たのでお母さんが魚を買ってあぶって息子に猫の番をしていろと言って出かけていった。すると、猫が来たので見ていると、猫は魚をくわえて逃げた。お母さんが帰ってみると魚が無いので訊くと、息子は魚は猫がくわえて逃げたと言った。お母さんはそんな時には追うものだと言って聞かせた。それから芋虫を見に行けと言われたので息子は畑へ行って芋虫としい、しいと追ったが逃げないので帰ってきてお母さんに話した。お母さんはそんな時には叩いて落とすものだと言って聞かせた。ある日息子がお宮へ参ってみると爺さんの頭に蠅(はえ)がとまっていたので叩き落とした。すると爺さんは怒って叩き返した。息子は泣いて帰ってお母さんに話した。お母さんはそんな時には団扇(うちわ)であおぐものだと言って聞かせた。息子はある日町へ出てみると火事があったので団扇で扇いだ。すると火はだんだん激しく燃えだしたので町の人に叱られた。泣く泣く家へ帰ってお母さんに話すと、そんなときには水をかけるものだと言って聞かせた。息子はまたある日町へ出てみると鍛冶屋がふいごで火をおこしていたので水をかけた。鍛冶屋は腹をたててゲンコツを喰らわせた。息子は帰ってそのことを話すとお母さんはそんな時にはてご(手伝い)をしてあげるものだと言って聞かせた。次の日息子が町へ出てみると、おっちゃんたちが二人で喧嘩しているので、息子は片方のおっちゃんを殴った。するとおっちゃんが腹をたててゲンコツを喰らわしたので、また泣いて帰って話すと、お母さんはそんな時には仲裁するものだと言って聞かせた。またある日息子が町へ出ると犬が喧嘩しているので中へ入って仲裁すると犬は食らいついてきたので息子はわんわん泣きながら帰った。馬鹿は幾ら言って聞かせても仕方がない。

◆モチーフ分析

・母と馬鹿な息子がいた
・母が魚がとられないように猫の番をしろと言い付ける
・息子、猫が魚をとるのを見ているのみ
・母、そういうときは追うものだと言い聞かせる
・母、畑で芋虫を見てこいと息子にいう
・息子、芋虫をしっしと追うが逃げない
・母、そういうときは叩き落とすものだと言い聞かせる
・息子、爺さんの頭にとまっていた蠅を叩き落とす
・爺さん、怒って叩き返す
・母、そういうときは団扇であおぐものだと言い聞かせる
・息子、町で火事に遭遇、団扇であおぐ
・火の勢いが強くなったので町の人に怒られる
・母、そういうときには水をかけるものだと言い聞かせる
・息子、鍛冶屋がふいごで火を起こしているところに水をかける
・母、そういうときには手伝いをするものだと言い聞かせる
・息子が町にでると大人が喧嘩していたので、片方に加勢する
・母、そういうときには仲裁するものだと言い聞かせる
・息子、犬が喧嘩していたので割って入って仲裁する
・犬が食らいついてくる
・馬鹿は幾ら言い聞かせても仕方がない

 形態素解析すると、
名詞:息子 母 とき もの 町 仲裁 喧嘩 団扇 水 火 爺さん 犬 猫 芋虫 馬鹿 魚 ところ ふいご 人 加勢 勢い 大人 火事 片方 畑 番 蠅 遭遇 鍛冶屋 頭
動詞:いう 言い聞かせる する あおぐ かける とる 叩き落とす 怒る 見る 追う いる でる とまる 入る 割る 叩き返す 手伝う 言い付ける 起こす 逃げる 食らいつく
形容詞:仕方がない 強い
副詞:そう 幾ら

 母/息子の構図です。抽象化すると、家族同士です。母―(言い聞かせる)―息子の図式です。

 母が馬鹿な息子に言い付ける[命令]。息子、しくじる[失敗]。母、そういうときはこうするのだと言い聞かせる[修正]。息子は別の状況で言いつけを実行してはしくじって泣いて帰る[失敗]。それを何度も繰り返す[繰り返し]。

 なんど言っても言葉通りに受け止めてしまう……という内容です。

 発想の飛躍は違う状況でも言い付けられた通りに実行してしまう息子の足りなさでしょうか。母―(言い聞かせる)―息子の図式です。

 結局、馬鹿が治らないままにお話は終わってしまいます。毎回泣いて帰る様は可愛らしくもあります。何度失敗してもさじを投げないお母さんもいいですね。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.199-201.

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2022年8月20日 (土)

馬ほめと仏壇ほめ――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、馬鹿な聟がいた。嫁の里に泊まりに行くことになったので、家を出るときに嫁が「行ったらお爺さんは馬を買ったから見てくれと言うから、その時には、どっこもさすってみて、これは良い馬だ。どっこも不足はないが、ちとぎり(つむじ)が高いから噛みつかねばよいが」と言いなさいと教えた。聟は嫁の里に行くと嫁が教えた通りにお爺さんが「馬を買ったから見てくれ」と言った。聟はあちこちさすって「これは良い馬だ。どっこも不足がないが、ちとぎりが高いから、噛みつかねばいいが」と言った。お爺さんはそれを聞いて、この聟は馬鹿だと聞いていたが、まんざら馬鹿でもないと喜んで、今度は家の中へ入って「聟どの、良い仏壇を買ったから見てくれ」と言った。そこで聟は仏壇の前へ行って、あちこち撫でていたが「これは良い仏壇だ。どこも不足はないが、ちとぎりが高いから噛みつかねばいいが」と答えた。

◆モチーフ分析

・馬鹿な聟が嫁の里に泊まりにいくことになった
・嫁が聟に爺さんが馬を買ったから尋ねられたかかくかくしかじかとこたえろと教える
・嫁の里に行った聟、爺さんに馬を見て欲しいと言われる
・聟、嫁に教わった通りに答える
・爺さん、聟をまんざら馬鹿でもないと喜ぶ
・爺さん、今度は仏壇を見せる
・聟、嫁に馬にするのと同じように答える

 形態素解析すると、
名詞:聟 嫁 爺さん 馬 里 馬鹿 こと 今度 仏壇 通り
動詞:答える いく こたえる する なる 喜ぶ 尋ねる 教える 教わる 泊まる 行く 見せる 見る 言う 買う
形容詞:ない 欲しい
副詞:かくかく しかじか まんざら 同じように

 聟/嫁/爺さんの構図です。抽象化すると、男/嫁の家族です。聟―馬―爺さん、聟―仏壇―爺さんの図式です。

 馬鹿な聟、嫁の里で泊まることになる[宿泊]。嫁、聟に馬について尋ねられたときの答え方を教える[問答の教示]。聟、嫁の里に行く[来訪]。聟、嫁に言われた通りに答える[回答]。聟、仏壇でも馬と同じ様に答える[回答の繰り返し]。

 馬について教えられた通りに答えたが、仏壇にも同じように答えてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は馬でも仏壇でも同じ様に答える聟の足りなさでしょうか。聟―仏壇―爺さんの図式です。

 私にはぎり(つむじ)が二つありますので、髪がまとまらず苦労しました。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.197-198.

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2022年8月19日 (金)

化物退治――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところに一人暮らしの猟師がいた。度胸のすわった男で近くの山に化物が出るというので退治に出かけた。猟師は日が暮れるのを待って山に入り、たき火を焚いていた。夜が更けて丑三つ時になった頃、大きな牛のようで目がぎょろぎょろと鋭く光っている怪物が現れた。猟師は度肝を抜かれたが、ここで度胸をすえねば自分の命がないと思って、ここにきてたき火に当たれと言った。怪物は少し当たらしてくれと言ってたき火の側へ来た。猟師は何もご馳走はないが団子があるから食わないかと言うと、一つよばれるとしようとなった。猟師はじゃあ口を開けておれ、団子を放り込んでやると言って鉄砲の筒口を怪物の口に突っ込んで引き金を引いた。ズドンと大きな音がして、この一発で怪物は倒れると思ったところが、怪物は平気で団子を皆出せと言った。そこで猟師は持っているだけの玉を皆怪物の口の中に撃ち込んだ。が、怪物はけろりとして皆食ってしまった。そして今度はわしがお前に団子を食わせてやろうと言ったので猟師は震えだした。怪物に食い殺されると思って八幡大菩薩に祈った。すると猟師はまだ守り玉があったのに気がついた。それを込めてドンと一発撃つと、怪物はきゃーと血を吹きながら山奥へ逃げ込んだ。その内に夜が明けたので、血の跡を追って山奥へ行ってみると、大きな岩穴があって中でウンウンうめく声が聞こえた。そこで岩穴をそっと覗いて様子を見ると大きな男の狒々(ひひ)が女の狒々の傷口を一生懸命手当をしている。そして自分が仇をとってやる。あの猟師は独り者で女房がいないから自分が女に化けて食い殺してやると言っていた。猟師はこれを聞いて油断ならないと度胸を決めて狒々のやって来るのを待った。すると間もなく、ある夕方にきれいな女がやってきて一晩泊めてくれないか、そして自分を嫁にしてくれないかと頼んだ。猟師は承知した。そこで隣近所や親類を呼んで宴会となった。しかし猟師は油断せず、こっそり鉄砲に玉をこめ外に出て障子の穴から女を撃った。すると嫁が血だらけになって倒れたので大騒ぎになった。人殺しだというので役人が来て取り調べ、猟師は人殺しの罪で連行されることになった。猟師は訳を話して、三日もすれば化けの皮がはげて元の狒々になるからと言って三日間の日延べを願った。そこで四日目に来たときにこのままであったらお前を人殺しとして打ち首にするぞと言って役人は帰った。四日目に役人が来て見ると、女は狒々になって牙をむいて死んでいたので、役人は猟師の勇気を褒めた。

◆モチーフ分析

・一人暮らしの猟師が化物退治に出かけた
・猟師が山の中でたき火を焚いていると怪物が現れた
・猟師、怪物にたき火に当たらせる
・猟師、怪物に団子を食わせると言って怪物の口に銃口を突っ込み発砲する
・が、怪物、死なない
・猟師、玉を打ちつくしてしまう
・怪物、今度は自分が猟師に団子を食わせると言う
・驚愕した猟師だったが、八幡に祈ると守り玉が残っていることに気づく
・猟師、守り玉で怪物を撃つ
・怪物、手傷を負って逃げ出す
・跡を追った猟師、岩穴に辿り着く
・中で雄の狒々と雌の狒々が話していた
・狒々の会話を聞いた猟師、家に戻る
・女が訪ねてきて嫁にしてくれと頼む
・結婚式で猟師は女を撃ち殺す
・殺人となり役人に取り調べられる
・猟師は事情を説明し、三日後には正体が明かされると言う
・それで猟師は一時的に解放される
・四日目に役人がやってくる
・果たして狒々の正体が明かされる
・役人、猟師の勇気を褒める

 形態素解析すると、
名詞:猟師 怪物 狒々 役人 玉 たき火 中 団子 女 正体 三 四 こと 一人暮らし 事情 今度 会話 八幡 勇気 化物 口 嫁 家 山 岩穴 手傷 殺人 発砲 結婚式 自分 解放 説明 跡 退治 銃口 雄 雌 驚愕
動詞:言う 守る 明かす 食わせる する なる やる 出かける 取り調べる 当たる 戻る 打ちつくす 撃ち殺す 撃つ 死ぬ 残る 気づく 焚く 現れる 祈る 突っ込む 聞く 褒める 訪ねる 話す 負う 辿り着く 追う 逃げ出す 頼む
形容動詞:一時的
副詞:果たして

 猟師/化物、猟師/狒々/役人の構図です。抽象化すると、主人公/妖怪です。猟師―守り玉―怪物、猟師―嫁/狒々―役人の図式です。

 猟師、化物退治に行く[出発]。猟師、山の中で怪物に遭う[遭遇]。猟師、怪物を銃で撃つ[射撃]が効かない[無効]。危機が迫った猟師、守り玉で怪物を撃つ[呪具での射撃]。怪物、逃げる[逃走]。怪物たちの会話を聴いた[盗み聞き]猟師、家で待ち受ける[待機]。女が来て[来訪]嫁にして欲しいと頼む[求婚]。結婚式の席で猟師は女を撃つ[射殺]。殺人の嫌疑が掛けられるが[疑惑]、四日目に正体を現し[露見]事なきを得る[無事]。

 守り玉で化物を撃ったところ、効いた……という内容です。

 発想の飛躍は銃弾が効かない怪物でしょうか。猟師―守り玉―怪物の図式です。守り玉でようやく手傷を負わせます。

 守り玉は使ったら猟を止めなければならないという決まりがあるパターンが多いと思いますが、ここではそうではありません。後半、女が嫁にして欲しいと訪ねてくる場面は異類婚姻譚を連想させます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.193-196.

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どうにもいけない――水野学「アイデアの接着剤」

水野学「アイデアの接着剤」を読む。「センスは知識からはじまる」が良かったので期待したのだが、どうにも説教くさくていけない。

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発想法としても読める――水野学「センスは知識からはじまる」

水野学「センスは知識からはじまる」を読む。基本的にはデザイン関連の本なのだけれども、発想法としても読める。普通、センスとは言語化できないものだとされているが、著者は膨大な知識のインプットによってそのデザインが何故選択されたか言語化した上でクリエイティブな仕事を遂行しているとのこと。センスは知識のインプットによって成り立っているのだとしている。ちなみに美学では先天的な感性と後天的な感性があるとしている。

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2022年8月18日 (木)

粟の飯――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、鴻池に聟がいることになった。大金持ちだから聟にしてくれという人は沢山あった。そこで鴻池では「粟(あわ)ばかりのご飯を茶碗いっぱい盛り付けて何杯でも出しておいて一粒もこぼさぬ様に食べた者を聟にする」と立札を立てた。そこで我こそはという者がどんどん出かけて食べかけるが、ご飯があまりにこわい(かたい)ので、ぽろぽろこぼれて皆失敗した。ここに息子をもった父親がいた。この話を聞いて何とかして自分の息子を聟にやりたいと思って「中、食うちゃあへりをいれ 中、食うちゃあへりをいれ」という歌を作って、その歌を歌いながら歌の通りに中を食べてはほとりを中へ入れて食べる様にしつけた。そうして長いことやっている内に粟を一粒もこぼさずに食べられるようになった。そこで息子は鴻池へ行って粟飯を食べることになった。そしてこれまで教えられた通りに口の中で歌いながら食べたところ、見事一粒もこぼさずに食べることができた。それでめでたく鴻池の聟になった。我が子を出世させるためには、親はこうまで苦心をし、一粒のご飯もこぼさぬようなものでなければ出世はできない。

◆モチーフ分析

・鴻池で聟をとることになった
・粟ばかりで茶碗一杯に盛り付けて一粒もこぼさない者を聟とするとした
・我こそはと挑戦するが皆失敗する
・父親が息子に歌に合わせて飯を食べるようにしつける
・息子は教えられた通りにして一粒も残さず食べてみせ、聟になる
・子を出世させるにはこうまで苦心しなければならない

 形態素解析すると、
名詞:聟 一粒 息子 こと 出世 失敗 子 我 挑戦 歌 父親 皆 粟 者 苦心 茶碗 通り 飯 鴻池
動詞:する なる 食べる こぼす しつける とる みせる 合わせる 教える 残す 盛り付ける
形容動詞:一杯
副詞:こう

 鴻池/息子/父の構図です。抽象化すると、商家/主人公/家族です。鴻池―粟―息子―父の図式です。

 鴻池で聟をとる[聟とり]ことになり、粟を茶碗一杯に盛り付け一粒もこぼさない者を聟とするとした[難題]。父が息子に歌の通りに食べるようにしつける[訓練]。息子、歌の通りに食べ、一粒も残さず食べ[完食]、聟になる[聟入り]。

 一粒も残さず粟飯を食べたので、鴻池の聟入りができた……という内容です。

 発想の飛躍は歌に合わせて粟飯を食べることでしょうか。鴻池―粟―息子―父の図式です。

 粟飯に限りませんが、一粒もこぼさず完食するという難題はよく見られます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.191-192.

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2022年8月17日 (水)

山椒九右衛門――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、この辺り(石見町)に山椒(さんしょう)九右衛門という者がいた。非常に強欲な男だった。たたらの親方になって沢山の人を使っていたが、一日に一升の飯を三回に分けるところを一回二合七勺ずつに減らして、三勺ずつ三回、一日九合の米を浮かせていた。そういうことで極めて評判が悪く本当の名を呼ぶ者はなく山椒というあだ名をつけていた。ある年の大晦日の夕方にある貧しい家へ借金の催促に立ち寄った。いつもの調子で厳しく返済するように言ったが、もちろん返す金は無いので、明年は必ず辛抱してお返しするから今宵一夜をあかさせてくださいと家内一同頭を地にすりつけて頼んだが、九右衛門は承知しない。ちょうどそのとき竈(かまど)の上に年越しのご飯が煮えていたが、九右衛門はいきなりその鍋を取り上げると庭先の藁を叩く石の上にぶちまけ、鍋だけを片手にこれを貰って行くと言って得意げに帰っていった。夫婦子供は年越しの夜にようやく手に入れた年に一度か二度しか食べることにできない米のご飯の煮えかけを土の上にぶちまけられては食べることができない。泣きながら天を仰いで、もしこの山に主があるなら何とかしてこの仇をとってください。このご飯は山の主に差し上げると祈った。ところが不思議なことに山椒は昨日までの繁盛は夢のように消えて、その夜からひどい熱病にかかって苦しんだ。医者を呼んだり祈祷してもらったりしたが一向によくならない。とうとう骨と皮ばかりになって息を引き取った。葬式の日に市木の浄泉寺の院家(いんげ)が坂の峠の上まで来た時、怪しい風が吹いて胴は猫に似て頭は鷲のような怪物が空を舞っているのが見えた。院家は供の者に光西寺にある火車品(かしゃぼん)(傘にお経を書いたもの)を借りてくるよう言い付けた。院家は供の者が帰ってくるのを待っていたが、山椒の家ではもう皆が待っているのでお経をはじめた。お経が済んで焼香になると坂の上でみた怪物が羽音凄まじく舞い降りてきて棺の蓋をとると屍体を抱えて空へ上がった。後から見ると、屍体は喰い裂かれて足だけは丸原の三本松の枝に掛かっていた。昔から棺の蓋は外に出す前に釘づけにしなければいけないと言われるのは、こうしたことがあるからだということである。また光西寺の火車品は火事で焼けて今は無いということである。

◆モチーフ分析

・山椒九右衛門という強欲な男がいた
・使用人の食べ物の米を減らして金を浮かせていた
・評判が悪く山椒というあだ名をつけられていた
・大晦日に借金の取り立てに赴く
・借り手はすぐには返せないので来年まで待ってもらうよう懇願する
・山椒、煮え掛けの米を土にぶちまける
・山椒、鍋だけを持って帰る
・借り手、山の主に天罰を祈念する
・山椒、激しい病に冒され死亡する
・葬式に火車が現れる
・院家、火車品を借りに供の者を走らせる
・葬式は始まってしまった
・火車が現れて棺の中の山椒の屍体を取ってしまう
・山椒の屍体は食い荒らされていた
・こういうことがあるので、棺の蓋は釘で打つのである
・火車品は火事で焼けてしまった

 形態素解析すると、
名詞:山椒 火車 借り手 屍体 棺 米 葬式 あだ名 こと 中 九右衛門 使用人 供 借金 土 大晦日 天罰 山 強欲 懇願 来年 死亡 火事 男 病 祈念 者 蓋 評判 金 釘 鍋 院家 食べ物
動詞:いう 現れる ある いる つける ぶちまける 借りる 冒す 取り立てる 取る 始まる 帰る 待つ 打つ 持つ 浮く 減らす 焼ける 煮える 走る 赴く 返す 食い荒らす
形容詞:悪い 激しい
副詞:こう すぐ 主に

 山椒/借り手の構図です。抽象化すると、金貸し/借入人です。山椒―(ぶちまける)―米―借り手、山椒―(食い荒らす)―火車の図式です。

 強欲な山椒、使用人の米を減らして金を浮かせていた[吝嗇]。大晦日に借金の催促に来訪する[督促]。払えない借り手に対し、米を炊いている鍋をひっくり返す[廃棄]。借り手、天罰を祈る[祈念]。病気となった山椒、死ぬ[死去]。葬式に火車が現れて[出現]山椒の屍体を奪い取る[奪取]。山椒の屍体は食い荒らされていた[応報]。

 発想の飛躍は米の煮えた鍋をひっくり返し天罰を喰らうところでしょうか。山椒―(ぶちまける)―米―借り手の図式です。

 年に一度か二度しか食べられない白米を台無しにされた恨みは深いでしょう。また妖怪である火車の登場も特筆されます。山椒―(食い荒らす)―火車の図式です。火車は『石見の民話』の他の話「化け猫」「渡廊下の寄付」でも登場します。

 昔話の機能として、子供に因果を含めて聞かせるということも挙げられると考えます。食べ物を粗末にすると罰(ばち)が当たるということを教えているのです。

 山椒はなぜ山椒と呼ばれるのでしょうか。『山椒大夫』を連想します。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.189-190.

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デザイン思考は頭の回転の遅い人向きではない

ジャスパー・ウ「実践スタンフォード式デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決」を読む。実際にスタンフォード大学に留学した著者がデザイン思考を解説するもの。まずブレーンストーミングから初めてアイデアをまとめ、アンケートを取り、プロトタイプを(段ボールなどで)作ってプレゼンテーションする流れである。

ブレーンストーミングでは頭を最大限に回転させアイデアをひねり出すことになる。これが僕には出来そうにない。自分は頭の回転が速い方ではない。以前、マイケル・サンデル教授の講義を録画した番組を見たことがあるが、頭の回転が速すぎてついていけなかった。スタンフォード大学に通う学生ならハイレベルの学生が集まっているだろうから、そういう方式がとれるのだろう。僕は入浴中などリラックスしているときにアイデアが浮かびやすい。

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2022年8月16日 (火)

仁王寺の別当――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、久喜(瑞穂町)の近くに仁王寺があった。そこの住持はお金の勘定もろくに分からず人並みはずれたことをする人で、今でもおかしなことをすると「まるで仁王寺の別当のようだ」と笑う。この別当があるとき真綿を買った。あとで使おうと思ってほぐしてみると中へ天保銭が入っていた。普通の人なら売った人に談判して余分に払った代金を取り返すが、別当は天保銭を儲けたと大喜びだった。そこへ檀家の人が来て、真綿は軽いもので目方で売り買いする値段の高いものだから天保銭のような重いものを入れて売れば売る方は得だが買う方は損である。住持は一杯食わされたのだと教えた。別当は騙されたと気づいたが後の祭りだった。しばらくして寺へ小豆を買いに来た者があった。別当はこの間の損を埋め合わせるのはこの時だと思って小豆の中へ天保銭を四五枚入れて売った。あとで檀家の人にこの話をすると、小豆一升はわずか二百か三百なのに天保銭の四五枚も入れては損の上の損だと教えた。ある時別当は三里ばかり離れた坂本町の知人のところでよばれてご馳走になった。ふきのとうの味噌和えが出された。別当はこれが嫌いで見るのも嫌だったが、箸をつけないでは主人に無礼になるので、まず嫌いなものは先に食べてしまおうと思って、目をつぶって一気に呑み込んでしまった。するとふきのとうの味噌和えが好きと誤解されて山のように出された。別当はやせがまんをして食べた。すると、どうぞご遠慮なくとまたどっさり盛ってくれた。このことが世間に知れて嫌いなものを強いられるのを仁王寺の別当のふき味噌と言って笑うようになった。別当が帰りかけた時はもう日が暮れていた。半分ばかりも歩いた時、馬子に出合った。帰り道だからお乗りなさい。駄賃はいくらでもいいからと勧めた。別当は足も疲れていたので乗ることにした。別当は馬の上でうつらうつらしながら帰った。着いたので別当は馬から下りて駄賃を払った。どうも様子がおかしいので、ここはどこかと訊くと坂本だと馬子は答えた。駄賃は安かったが、坂本へ戻ったのでは仕方ない。どうしようもないので宿屋を探して泊まり、明くる日歩いて帰った。それで今でも「仁王寺の別当の返り馬」といって笑い話になって。秋の末の寂しい頃だった。別当はある晩夜中に便所に行った。静かな山寺のことだから小便の落ちる音がたちたちと聞こえる。それが中々止まないので別当は帰ることができない。突っ立っている内にとうとう夜も明けた。あとで気がついて見ると小便の音と思ったのは宵に軒下に置き忘れた傘へ雨の降りかかる音であった。こうして変なところで夜を明かしたので別当は一日中ぐっすり眠った。目を覚ましてみると月の光が窓から差し込んでいた。これは寝過ぎたと思って裏庭へ出て柿の木の下をそぞろ歩きしていると、何者か後ろから来て頭を叩いた。別当はびっくり仰天してばったりと倒れ、そっと手をあげて頭をさすった。何かべっとりと手をついたので月の明かりに透かしてみると真っ赤な血だった。別当は仰天して家へ駆け込むと白木綿を出して頭をぐるぐる十重二十重に巻いて、うんうん唸って寝ていた。近所の人は仁王寺は二三日戸をたてたまま別当も見えないので、不思議に思って四五人連れ立って戸を開けて中へ入ってみると、別当は頭をぐるぐる巻きにして寝ている。どうしたのか訊くと、誰かに闇打ちにされて頭を五寸ばかり割られたと息も絶え絶えに言った。村の人たちは人から恨みを受けるような人ではなし何人の仕業だろう。とにかく医者に診せなければと早速医者を呼んできた。医者が白木綿とすると別当が痛いから構わずにと言うのをいろいろなだめて解いてみると、まるまると剃った頭のてっぺんに熟しきった柿が一つべったりとくっついて潰れていた。

◆モチーフ分析

・久喜の仁王寺の別当は金勘定もできず、おかしなことをする人だった
・真綿に天保銭を入れたのを売りつけられたが天保銭を儲けたと喜ぶ
・檀家の人にそれでは損だと教えられる
・小豆に天保銭を四五枚入れて売りつけた
・小豆は安いからそんなことをしたら損だと檀家の人に教えられる
・ご馳走をよばれたがふきのとうの味噌和えを出された
・味噌和えが嫌いな別当は先に片付けてしまう
・味噌和えが好物だと勘違いされて更に盛られる
・帰り道で馬子に馬に乗るように進められる
・気づくと元に戻っていた
・宿を借り翌朝歩いて帰った
・小便にいったがいつまでもポタポタ音がするので切り上げられなかった
・傘に雨の雫が垂れている音だった
・一晩明かしたのでぐっすり眠る
・起きると夜だったので裏庭に出る
・頭を叩かれたので見ると出血していた
・真綿で頭を巻いて寝込む
・近所の人々が医者を連れてくる
・出血と思ったのは熟した柿だった

 形態素解析すると、
名詞:人 味噌和え 天保 銭 こと 出血 別当 小豆 損 檀家 真綿 音 頭 一 四五 いつ ご馳走 それ ふきのとう 久喜 人々 仁王 傘 元 勘定 勘違い 医者 夜 好物 嫌い 宿 寺 小便 帰り道 柿 翌朝 裏庭 近所 金 雨 雫 馬 馬子
動詞:する 入れる 売りつける 教える いく できる よぶ 乗る 借りる 儲ける 出す 出る 切り上げる 叩く 喜ぶ 垂れる 寝込む 巻く 帰る 思う 戻る 明かす 歩く 気づく 熟す 片付ける 盛る 眠る 見る 起きる 連れる 進める
形容詞:安い
形容動詞:そんな
副詞:ぐっすり ポタポタ 先に 更に
連体詞:おかしな

 別当が奇行をするという図式です。別当―天保銭―真綿、別当―ふきのとう―檀家、別当―(乗る)―馬子、別当―雫―小便、別当―柿―医者の図式です。

 仁王子の別当は変人だった[奇行]。真綿に天保銭を仕込まれて騙される[騙す]。が、騙されたことに気づかない[気付かず]。檀家の人に教えられてようやく理解する[悟る]。小豆に天保銭を入れて売る[売却]。それでは損だと檀家の人に教えられる[教示]。ご馳走をよばれたが苦手な料理が供される[提供]。我慢して食べると好物と誤解される[誤解]。帰り道、馬に乗ったが元の場所に戻ってしまう[戻る]。小便がいつまでも切れないので一晩明かす[聞き違い]。熟睡して目覚めたら夜になっていた[熟睡]。裏庭を歩いていると何かに頭を殴られる[殴打]。寝込むが、熟した柿を出血と勘違いしていた[勘違い]。

 仁王寺の別当は奇行を繰り返す人だったが、慕われていた……という内容です。

 発想の飛躍は仁王寺の別当という登場人物の人物像でしょうか。別当―天保銭―真綿、別当―ふきのとう―檀家、別当―(乗る)―馬子、別当―雫―小便、別当―柿―医者の図式です。

 「仁王寺の別当」は幾つかのお話をまとめたものと言えるでしょう。地名や固有名詞が出てきますので伝説に分類されるかもしれません。

 私の場合ですと、上府(かみこう)の安国寺の小僧さんが一つの皿にあるものを全部食べてから次の皿に移る食べ方をするという話を聞いたことがあります。また、とんかつ屋でとんかつを注文して、せんキャベツが苦手なので先に食べてしまったら、キャベツが好きと店員さんに誤解されてキャベツを盛られたことがあります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.183-188.

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2022年8月15日 (月)

今後の方針について――批評に活路を見いだせるか

……という程の話でもないが、伝説、神楽が一段落したので次に何をしようかと考えて、伝説や神楽は子供の頃に好きだったものだから、今度は青春期に好きだったものを取り上げられないか考えたのである。で、現代思想が浮かんだのだが、現代思想は僕には難し過ぎるのである。実際リオタールやランシエールの本には歯が立たなかった。哲学をやるにはIQ120くらい必要なのではないかと思う。僕はIQについて親から特別に言われたことはないから多分100前後である。

で、現在、昔話を取り上げているのだが、これはあと数ヶ月くらいで一段落するだろう。電子書籍化するとしてもプラス数ヶ月だ。

で、浮上してきたのが批評というか評論。といってもサブカル批評になるだろうけれど(※サブカルは別館で扱っている)。批評は現代思想ほど難解ではないはずである。電子書籍化された本も多く、現在の読書環境に適しているだろう。

なお、僕自身は小説をあまり読まない。ここ数年で読んだ多くはライトミステリーと青春小説であるし、純文学はさっぱりである。ノンフィクションで手一杯というのが正直なところである。映画は月に二回ほど映画館に行っているが、ドラマは見ない。例外としてNHK FMシアター(オーディオドラマ)を聴いている。これは一話完結の作品が多いからというのも理由となる。

これまで石見地方の文化にこだわっていたのは、僕の認識能力で把握できる範囲がせいぜい島根県石見地方くらいという能力の制約からである。つまり、新聞の地域欄が限界なのである。批評はそういう縛りはなくなるが大丈夫だろうか。

<追記>
これは別に自分で批評をやりたいという話ではない。読書として批評のジャンルなら読めるのではないかというもの。このブログの書籍カテゴリーの記事を読んでもらったら分かると思うけれど、大した事は書けていない。批評的な才能はないと思う。誰かと論争するのも好まないし。

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皿皿山――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、姉妹がいた。姉は継子(ままこ)で妹は自分の子だった。ある日姉が磯端で青菜を洗っていた。そこへ伯耆(ほうき)の殿さまがお国巡りをして「磯端で青菜を洗う小女子(こうなご)や 打ちくる波の数を知りたまえ」と歌を詠んだ。娘は黙っていた。どこの国の殿さまかは知らないが、きっと帰りがけにここをお通りになるに違いない。その時に仇を打ってあげようと思って待っていた。しばらくして殿さまがお帰りになったので「いかなる国の大名かは知らねども 歩く駒の足の数を知りたまえ」と詠んだ。殿さまは次の宿でお休みになって磯端で青菜を洗っていた娘を呼んでこいと言った。家来が呼びに行くと継母は自分の子がやりたくなって、妹に立派な着物を着せて出した。妹は姉には差し支えがあるので自分が代わって参ったと述べた。殿さまは皿の中に塩を盛って塩の中に松を植えて出した。これを歌に詠めと言った。妹は「皿の中に塩を盛り 塩の中に松を植え」と詠んだ。殿さまは妹ではつまらない。姉と代われと言って追い返した。継母は悔しがったが仕方ない、姉はぼろ着を着せられて殿さまのところに言った。姉は妹を使わしたことを詫びた。殿さまは同じ題を出した。姉は「ぼん盆や、さらさらという山に雪降りて 雪を根にして育つ松かな」と詠んだ。殿さまは感心して、偉い娘だ。連れて帰って部屋住まいをさせると言って風呂をたてて入らせ、立派な衣装を着せた。継母は悔しくてそこにあった鍬(くわ)や箒(ほうき)を投げた。姉はそこで「親とても 重ね重ねのはなむけに 箒の殿の知行取り」と詠んだ。

◆モチーフ分析

・継子の姉と実子の妹がいた
・姉が磯端で青菜を洗っていると殿さまが通りかかって歌を詠む
・姉、殿さまの帰りがけに返歌する
・殿さま、姉を呼び出した
・母親、姉の代わりに妹を送り出した
・殿さま、歌のお題を出す
・妹、歌を詠むがつまらないと返されてしまう
・姉、ぼろ着を着せられ送り出される
・姉、お題に沿った歌を詠む
・気に入った殿さま、姉を部屋住まいの扱いとする
・母親、悔しがる
・姉、それに返歌する

 形態素解析すると、
名詞:姉 殿さま 歌 妹 母親 返歌 題 それ ぼろ 実子 帰りがけ 磯 端 継子 部屋 青菜
動詞:する 詠む 送り出す いる 代わる 出す 呼び出す 扱う 気に入る 沿う 洗う 着せる 返す 通りかかる
形容詞:つまらない 悔しい

 姉/殿さまの図式です。抽象化すると、娘/領主です。姉―(詠む)―歌―殿さま、妹―(詠む)―歌―殿さまの図式です。

 継子の姉が青菜を洗っていたところに殿さまが通りかかる[遭遇]。殿さま、歌を詠む[詠歌]。姉、返歌する[返歌]。姉、返歌がきっかけで呼び出されるが妹が出される[代理]。妹、上手く返歌できず返されてしまう[不採用]。姉が出て見事に返歌する[返歌]。姉、部屋住まいの身分になる[昇殿]。母親が悔しがる[後悔]。姉、それに返歌する[返歌]。

 歌の才能で継子の立場から殿さまの部屋住みに昇格する……という内容です。

 発想の飛躍は継子の姉の返歌でしょうか。姉―(詠む)―歌―殿さまの図式です。

 歌詠みの才覚によって人生を切り開くのです。部屋住まいとありますので、殿さまの妻妾となるのでしょう。

 継子は家族の周縁的存在であると言えます。それ故に昔話では中心的人物になりうるのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.180-182.

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2022年8月14日 (日)

オミユキの竹――モチーフ分析

◆あらすじ

 あるところに夫婦がいた。女房は夫の留守に旨いものをこしらえて一人で食べていた。夫はそれを聞いていたので、ある日のこと山へ行くふりをして別の道を通って戻ってきて天井裏へ上がって女房のすることを見ていた。すると女房は寿司屋から刺身を取り寄せて酒を飲み始めた。夫は今自分が帰ると夫婦げんかになるが、何かよい工夫はないものかと天井裏を歩いていると煤(すす)で真っ黒になった竹の筒が見つかった。それを磨きながらいろいろ考えた。この竹を帝釈(たいしゃく)さんがら貰ったといって嬶(かか)の顔を赤らめてやろうと思い、そっと天井裏から降りて、今戻ったふりをした。神さまから天のオミユキの竹を貰った。この竹で見るとどんなに隠していることでも分かると言うと、女房は震えだして謝った。このことが隣近所の評判になった。近所の意地の悪い夫婦はあの親父が嬶を騙したのよ。オミユキの竹なんて、そんなものがあるかと思って自分の家で鉈(なた)が無くなったといってオミユキの竹で見て貰うことにした。親爺は今日は都合でいけないので明日の朝行くと答えた。親爺は二人が帰るとそろっと隣の家の周りに行ってしゃがんで内輪話を聞いた。すると土の中の芋釜の底がよかろうと聞こえた。翌朝。親爺はオミユキの竹を風呂敷に包んで持っていった。そしてしばらく竹の筒で見ていたが、これは土の中に入っていると答えた。土の中というと芋の穴しかないとなって近所の夫婦も感心して、いよいよ不思議な竹だと大評判になった。それがお殿さまの耳に入った。その頃城内で千鳥の香炉が失せて探しているところだったのでオミユキの竹で見て貰おうということになった。親爺は困ったが仕方ない。心配しながら出かけた。途中で暑くて仕方ないので稲荷堂へ入って昼寝をした。みるとお稲荷さまに小豆飯が供えてあるので頂戴した。そこへ人が来て、小豆飯を食ったのは太郎狐だ。あれが殿さまの香炉も前の池へ投げ込んだという夢を見た。よい夢を見たと喜んで殿さまの所へ出かけた。そしてオミユキの竹を出して方々を見て歩いたが、蓮の池の所へ来て、どうもこの底が怪しい。この池を干してみて下さいと答えた。仰せによって池の水を干してみると、池の底から香炉が出てきた。これはでかしたと親爺は褒美を貰って帰った。それから十日も経たない内にまた殿さまから使いが来た。また千鳥の香炉が無くなったから見てくれとのことだった。親爺は困ったが断る訳にもいかない。駕籠(かご)で迎えが来たので仕方なく駕籠に乗ったが、半里ばかり行った時、山奥へ入って果てる覚悟で大事な品物を忘れたと駕籠を止めさせた。親爺は家に帰るふりをして山の奥へ入った。すると炭がまがあって人の話声がする。耳をそばだてて聞いていると、殿さまの香炉を二千両で買えという声が聞こえた。この炭焼きたちが盗んでいると思いながらまた元のところへ帰ってきた。そして待っていた駕籠に乗ってお殿さまのところへ行った。親爺は二丈八尺もある高い櫓(やぐら)を作らせて、櫓に登って見ていたが、これより八九里先の山奥の炭焼きが盗んでいる。日が経つといけない急ぐのがよいと答えた。殿さまは捕手の役人を二三十人仕立てて、親爺の案内でその山に入った。炭焼きは捕らえられて白状したので香炉は無事戻ってきた。殿さまは喜んで追って沙汰があるので待つように言った。それからしばらくしてまた駕籠で迎えに来た。今度は若殿が九つになるが、未だにものを言わない。易者に見てもらっても分からない。どうした訳か聞きたい。殿中評議の上で迎えに来たとなった。親爺は覚悟を決めて駕籠に乗った。殿さまに頼まれた親爺は気晴らしに散歩に出ることにした。城山へ登りかけると途中で爺婆の狐が二匹いた。親爺は気味悪がったが恐る恐る近づくと、狐の方から話しかけてきた。今日あなたのオミユキの竹で見ると若殿の唖の原因がよく分かる。それは自分たちの父親の皮が殿さまの刻(とき)の太鼓に張ってある。太鼓を打たれると自分たちは五臓六腑が張り裂けるばかりに苦しい。それでそれを恨んで若殿を唖にしているのだ。オミユキの竹で見破られると狐狩りとなり、長い間住んだこの山を去らねばならない。どうか自分たちの仕業ということを明かさないで欲しいと狐は頼んだ。親爺は狐に困った節には助力してくれるように約束させ、山から下りてくると、オミユキの竹を見てから刻の太鼓の皮を張り替えたらよいと答えた。早速太鼓が張り替えられた。太鼓を叩くと若殿は太鼓の音というものは何と面白いものかと初めてものを言った。殿さまは大変喜んで、親爺夫婦に八万石の知行を与えて、二人は一生安楽に暮らした。

◆モチーフ分析

・女房が夫の留守に旨いものを一人で食べている
・夫、山へ行くふりをして天井裏に登る
・夫、煤けた竹筒を見つけ、オミユキの竹と名づける
・夫、女房にどんな隠し事でも分かるのだと騙す
・女房、謝る
・近所の意地の悪い夫婦が親爺に探し物の依頼をする
・親爺、こっそり夫婦の会話の盗み聞きをする
・隠していた場所を言い当てる
・評判が広まる
・殿さまから香炉の探し物の依頼が来る
・親爺、城へ向かう途中、稲荷堂で昼寝する
・夢で香炉の行方が語られる
・親爺、香炉の場所を言い当てて褒美を貰う
・また香炉が無くなった
・駕籠で迎えが来て止むなく乗る
・途中で山奥に入ったところ炭焼きの会話を聞く
・それを殿さまに報告、香炉が取り戻される
・若殿が声を出さないことについて尋ねられる
・時間を貰って城山を歩いていると狐夫婦に逢う
・狐夫婦、若殿の唖の原因を語る
・親爺、その事は口外しない代わりに困ったときの助力を約束させる
・親爺、太鼓の皮を張り替えるよう進言する
・若殿の唖が治る
・親爺夫婦、八万石の知行を授かる

 形態素解析すると、
名詞:親爺 夫婦 香炉 夫 女房 若殿 会話 依頼 唖 場所 探し物 殿さま 狐 途中 八万 こと それ とき ところ ふり もの オミユキ 一人 事 助力 原因 口外 城 城山 堂 報告 声 夢 天井裏 太鼓 山 山奥 意地 昼寝 時間 炭焼き 留守 皮 知行 稲荷 竹 竹筒 約束 行方 褒美 評判 近所 進言 隠し事 駕籠
動詞:する 来る 言い当てる 語る 貰う つく 乗る 代わる 入る 出す 分かる 取り戻す 名づける 向かう 困る 尋ねる 広まる 張り替える 授かる 歩く 治る 無くなる 煤ける 登る 盗み聞く 聞く 行く 見つける 謝る 迎える 逢う 隠す 食べる 騙す
形容詞:悪い 旨い 止むない
形容動詞:どんな
副詞:こっそり また
連体詞:その

 親爺/女房、親爺/近所の夫婦、親爺/殿さまの構図です。抽象化すると、家族同士、主人公/隣人、主人公/領主です。親爺―オミユキの竹―(盗み聞く)―女房、親爺―オミユキの竹―(盗み聞く)―近所の夫婦、親爺―オミユキの竹―(盗み聞く)―炭焼き、親爺―オミユキの竹―狐―殿さまの図式です。

 女房が夫の留守に一人で旨いものを食べているのを天井裏から見た[隠れ見]親爺はただの竹筒をオミユキの竹と偽る[騙す]。評判が広がり、近所の意地悪な夫婦に失せ物の探し物を依頼されるが[探索]、夫婦の会話を盗み聞き[盗聴]して言い当てる[解決]。評判が更に広がり、殿さまから香炉の捜索を頼まれる[依頼]。稲荷堂で見た夢によって香炉のありかを言い当てる[解決]。再び香炉が無くなった[失せる]。炭焼きの会話を盗み聞き[盗聴]して殿さまに言いつける[報告]。若殿の唖の原因を尋ねられる[質問]が、城山に住む狐夫婦に訳を聞き[解説]、殿さまに解決策を勧める[進言]。親爺は八万石の知行を賜った[下賜]。

 偽りのオミユキの竹で最後は狐の助力を得る……という内容です。

 発想の飛躍はオミユキの竹でしょうか。親爺―オミユキの竹―狐―殿さまの図式です。

 偽の魔法のアイテムですが、幸運が重なり事件を解決します。更に狐夫婦に助力を約束させ、後々の心配事も対策します。「猟師徳蔵」では最後は何も起きずに終わるのですが、「オミユキの竹」では最後まで事件が解決します。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.171-179.

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2022年8月13日 (土)

葬式の使い――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところに猟の好きな六兵衛という男がいた。毎日いろいろな鳥獣を獲ってくるので女房が嫌がって猟を止めるように頼んだが、六兵衛は猟が面白くて止めようとしない。いつも女房と口げんかをしていた。ある日のこと、また口げんかをして山へ鉄砲を担いでいった。そして山の中をあちこち獲物を探したが、その日に限って獲物が獲れない。山奥深く探していく内に道に迷ってしまった。六兵衛は大きな木に登って夜を明かすことにした。すると、夜中頃になってどんどん人の足音がしてきた。六兵衛を呼ぶ声がして、女房が腹痛で苦しがっている。帰るようにと告げた。六兵衛が黙っていると、そこにいるのは分かっているんだ。早く帰りなさいと告げた。それでも黙っていると、これほど言っても戻らんなら死んだって知らない。集落の者まで集まって相談しているのにと言ってぶつぶつ言いながら帰った。六兵衛は変な事を言ってきたと思っていた。すると提灯の火が見えてきた。また六兵衛に家に戻るように告げた。六兵衛が黙っていると、女房が死にそうなのに猟に憑かれた者は訳が分からないとぶつぶつ言って帰ってしまった。しばらくすると、また提灯の火が見えてきた。女房がとうとう死んだ。葬式のことがあるから早く戻るようにと告げた。それでも黙っていると、帰ってしまった。しばらくして夜が明けたら帰ろうと思っていると、今度はぞろぞろと人が棺を担いで来た。六兵衛が戻らないから死人を一人おく訳にもいかないから棺をこしらえてここまで持ってきたと告げた。六兵衛は一晩の内にこしらえて持ってくるはずはないから何かが化かそうとしているのだと思ってずっと動かずにいた。その内だんだん夜が更けてしんとしてきたら柩がバリバリと音をたてて裂けた。そして中から女房が出てきた。女房が六兵衛に呼びかけたが黙っていると木へ登りはじめた。だんだん近づいてきて手が届くかと思ったところで六兵衛は鉄砲を構え、足に手が触ったのでズドーンと撃つとドッタンと落ちた。その内に夜もしらじらと明けたので、やれやれ変なことがあったが何が化かしたのだろうかと思って下へ降りてみると、ずっと血の跡が続いているので、その跡をつけていくと自分の家へ帰っていた。おかしなことだ。本当に女房が死んだのだろうかと思って帰ってみると、女房が鉄砲で撃たれて死んでいた。これは仏さまが見せしめのためにやってくださったのだろうと思って、はじめて六兵衛も目が覚めて、それから猟をすっぱりと止めた。

◆モチーフ分析

・六兵衛という猟が好きな男がいて、殺生を諫める女房と喧嘩ばかりしていた
・ある日、山に入ったが獲物が一匹も撮れない
・その内に道に迷ってしまった
・大きな木に登り、一晩明かすことにする
・夜が更けると、足音がして女房が腹痛で苦しんでいると告げる
・六兵衛は黙ったままやりすごす
・今度は提灯の火が見え、女房が死にそうだと言い六兵衛に家に帰るように告げる
・六兵衛は黙ったままやり過ごす
・今度は女房が死んだ、葬式のことがあるから帰るようにと告げる
・六兵衛は黙ったままやり過ごす
・今度は棺を運んでくる
・六兵衛は黙ってやり過ごす
・棺から女房が出てくる
・女房、木に登ってくる。手が触れそうになる
・六兵衛、女房を鉄砲で撃つ
・六兵衛、血の跡を追うと自宅に戻る
・女房が鉄砲に撃たれて死んでいた
・六兵衛、改心する

 形態素解析すると、
名詞:六兵衛 女房 まま 今度 一 こと 木 棺 鉄砲 内 喧嘩 夜 家 山 手 提灯 改心 殺生 火 猟 獲物 男 腹痛 自宅 葬式 血 足音 跡 道
動詞:黙る する やり過ごす 告げる 死ぬ 帰る 撃つ 登る ある いう いる やりすごす 入る 出る 戻る 撮れる 明かす 更ける 苦しむ 見える 触れる 言う 諫める 迷う 追う 運ぶ
形容動詞:好き
副詞:ある日
連体詞:その 大きな

 六兵衛と得体の知れないもの、六兵衛/女房の構図です。抽象化すると主人公/超自然、男/女でしょうか。六兵衛―(撃つ)―女房の図式です。

 猟の途中で道に迷った六兵衛は木の上で一晩明かすことにする[避難]。得体の知れない者がやってきて女房の身に不幸があったから戻るように告げる[告知]。六兵衛は黙ってやり過ごす[黙殺]。それを何度か繰り返して、死んだはずの女房が現れる[登場]。六兵衛は近づいてきた女房を鉄砲で撃つ[攻撃]。血の跡を追うと[追跡]、自宅で女房が撃たれて死んでいた[死亡]。六兵衛は改心した[改心]。

 女房が危篤だから帰れという声を黙殺すると、本当に女房が現れた……という内容です。

 発想の飛躍は木の上に登った者に得体の知れない何ものかが引き返すように諭すところでしょうか。六兵衛―(告げる)―女房の図式です。

 更に死んだはずの女房まで登場して物語はバッドエンドとなります。これはバッドエンドですが、実は狸が化かしていたのだというハッピーエンドのパターンもあります。私はこのバッドエンド版が何か得体の知れない感じがして好きです。

 また、六兵衛が日常→非日常→日常と巡る話でもあります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.166-170.

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2022年8月12日 (金)

難題聟――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、大仙(だいせん)の麓に色粉(いろこ)(染粉)屋があって十七から二十一まで真面目に務めた手代がいた。ある日西の方からきれいな娘が来た。この娘はお前の聟になる者は大仙の色粉屋の手代より他にいないと聞いていたので、手代を試しにきたのであった。娘は色粉を二両も買って出ようとしたが、手代はその金を受け取らず貰うところで貰うと言った。そして娘が去りかけると呼び返して所を訊いた。娘は「所はふさんの麓」「家の名ははるば屋」名前は「四月生え五月禿げ」と答えて行ってしまった。それから手代は考えてみたが、どうしても分からない。休みの日に山寺の和尚さんのところへ将棋をしに行って、将棋の入れ言葉に「ふさんの麓」と言って打ち込んだ。和尚は「草津の町に」と打ち返した。「はるば屋とは」「あめがた屋」「四月生え五月禿げ」「お竹さんの事よ」それで草津の町のあめがた屋の小竹という娘と分かったので手代は主人に暇を貰った。主人は草鞋(わらじ)銭に二十両くれた。手代はそれを持って西に向けて三日目の箸間(はしま)時分に茶店によって「ここは何という町か」と訊くと、婆さんが「草津の町だ」と言った。「草津の町にはあめがた屋という家があるか」と訊くと「それは白壁の物持ちの家だ」と言う。「そこにお竹さんといういい娘がいるか」と訊くと、「それは一人娘だ」と言う。手代は「その娘の男になりたいから世話をしてくれ」と頼むと、婆さんは「自分のような者では相手にしてくれない。手紙の小使いくらいならしてやる」言うので手代は思いのたけを手紙に書いて婆さんに頼むと娘から返事が来た。それには「このよでなし、今度のよでなし、その次のよに、天竺の花の咲く時分、草へ実のある時分に、背戸の裏門までこい。話し会おう」とあった。こんな難しいことを言ってくるのは逢わないつもりかも知れないと思って沈んでいると、婆さんがそれを聞いて「この意味は昨夜でなし、今夜(こんべ)でなし、明日の晩のことだが、今夜行ってもかまわないのだ」と言った。そして時刻は「星が空に出、草に露のおく時分という意味だ」と教えてくれた。そこでその晩の夕方に訪ねていくと、娘は「汝(わ)は聟にするけえ、この奥(おき)の五兵衛という者が町の当職だ。それへ行って話してみい」と教えた。そこを訪ねていくと五兵衛がお前ならあそこの若旦那になろう、自分が世話をしよう」と腰をあげた。五兵衛があめがた屋の旦那に話すと、それだけの働きのある者ならここへ連れてこいと言うので、五兵衛が手代を連れて行くと、旦那は「聟にはするが、三品の買物をしてくれ。みなこの草津の町にある物だけえ」と言って書付けを渡した。書付けには「一には西行法師、二には夜のドージマ(履き物のポックリ)、三に花嫁じょう」とあった。手代は幾ら考えてみても分からないので、呼んで歩けば売ってくれるものがあるかもしれないと思って、大きな声で呼び歩いたが売ってくれる者がいない。困っていると町中で大夫(神主)さんと和尚さんが将棋をさしていた。手代はそこへ入って仲間になり、和尚さんに「西行法師」と打ち込むと「法螺(ほら)貝のことよ」「闇夜のドージマ」「ろうそくのことよ」「花嫁じょうとは」「麦饅頭のことだ」。そこでその品を探してみると、皆あめがた屋の近所で売っているものばかりであった。これを買って帰りかけると、途中で座頭に出会って、その杖に引っかかったので座頭が転んだ。座頭は手代の持っていた法螺貝をひったくって中の身を食ってしまった。手代が「杖に当たったのはこっちが悪いが、人の物をとって食う奴があるか」と怒ると、座頭が「それはお前を聟にしたい故に食ったのだ。俺もあの家では世話になっている。これからはお前にも世話にならねばならんから言うて聞かせるが、これをこのまま持っていんだのでは旦那は取りはせん」と言って今度は麦饅頭の粉を抜いて食った。そして「これには意味がある。先ずあれへ去(い)んだ時分にはようやく戻りました。西行法師と書いてありましたが、西行法師さんのところへ行ったところが、今日は歌詠みに出て留守でありました。何ぼ待っても戻れんで、あれの家のを持って戻りましたと言え。また、花嫁じょうと書いてありましたが、それはこの奥(おき)に子を生んでおりました。子は川へ流れましたからそれで親ほどと思って持って戻りました。闇の夜のドージマは怪我なしに戻りました。こう言えば旦那はもう難しいことは言い付けまい」と教えてくれた。手代は教えられた通りに三つの品を差し出すと、旦那は感心して手代を聟にして安穏に暮らした。

◆モチーフ分析

・大仙の麓に色粉屋があって十七から二十一まで真面目に務めた手代がいた
・ある日、西の方からきれいな娘が来た
・娘は時分の夫になるのは大仙の色粉屋の手代と聞いていたので手代を試しに来た
・娘、色粉を二両も買う
・手代、その金を受け取らず、貰うところで貰うと言う
・手代が訊くと娘は謎かけして去る
・手代、考えても分からないので山寺の和尚さんの所へ将棋をしに行く
・和尚、謎を解く
・草津だと分かったので手代、主人に暇をもらう
・手代、三日かかって草津に行く
・手代、茶店の婆さんに娘の夫になりたいからと世話を頼む
・手代、娘に手紙を書く
・娘、手紙で謎かけする
・婆さんが謎を解く
・娘に会いに行くと、五兵衛に会う様に言う
・五兵衛、旦那に取り次いでくれる
・旦那、買物の謎かけをする
・神主と和尚が将棋を指していたので仲間に入る
・和尚、謎を解く
・手代、買物をする
・手代、座頭とぶつかる
・座頭に文句を言うと、自分は旦那に世話になっている。これからはお前にも世話になるといって買物の謎を解く
・座頭の言う通りにして旦那に面会すると旦那は手代を聟にする

 形態素解析すると、
名詞:手代 娘 謎 旦那 和尚 世話 座頭 色粉 買物 五兵衛 大仙 夫 婆さん 将棋 手紙 草津 十七 二 二十一 三 お前 かけ きれい これ ところ 主人 仲間 山寺 所 文句 方 時分 暇 真面目 神主 聟 自分 茶店 西 通り 金 面会 麓
動詞:する なる 解く 言う 行く 会う 来る 貰う ある いく いる かかる かける ぶつかる もらう 入る 分かつ 分かる 務める 去る 取り次ぐ 受け取る 指す 書く 考える 聞く 訊く 買う 頼む
副詞:ある日 けして 試しに
連体詞:その

 手代/娘の構図です。抽象化すると、男/女です。手代―謎―娘の図式です。

 娘が手代に会いにやって来る[来訪]。娘、手代に謎かけする[謎かけ]。手代、謎を和尚に読み解いてもらう[解読]。手代、草津に向けて出発する[出立]。草津の茶店で手代、婆さんに手紙を言付ける[依頼]。謎かけされた手紙が返信される[謎かけの返信]。婆さんが謎を読み解く[解読]。手代、娘に会う[再会]。娘、ある男に取り次いでもらうように言う[進言]。男、その男に会う[邂逅]。男、旦那に取り次ぐ[取り次ぎ]。旦那、謎かけする[謎かけ]。手代、和尚に謎を解いてもらう[解読]。その通りに買物をする[購買]。座頭とぶつかり[衝突]、座頭、買物を奪う[奪取]。文句を言うと手代のためにしているのだと返答して謎を解く[解答]。座頭の言う通りにすると、旦那は手代を聟に取る[聟入り]。

 行く先々の人たちの助けで謎を解き、見事、聟となる……という内容です。

 発想の飛躍は数々の謎かけでしょうか。手代自身は謎を解かず、他人の助力を得る形となります。大仙は草津の東にありますので、元々は島根の昔話ではないのでしょう。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.160-165.

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2022年8月11日 (木)

出版開始から一年経過

気がつくと、電子書籍を出版開始してから一年が経過していた。この一年で稼いだ額は5000円に満たない。他の人のひと月分にも満たない結果である。

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2022年8月10日 (水)

怪我の功名――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、大ほら吹きの男がいた。どこへ行って何を殺したと剣術が上手だとかほらを吹いていた。そこへ余所の村からそんなに強いならうちの村で化物が出て困っているが来て退治してくれないかと頼みに来た。どうも行かれないとは言えない。それで応じてその村へ出かけた。これは大変なことになった。どんな物が出るだろうと思って来てみると、大きな蜘蛛(くも)の巣の張った空き家で長押(なげし)に五人張り二十五束という弓が掛けてあった。これはいいものがあると思って弓を取ってみた。さて、夜遅く静かになってから向こうの山がごうっといってしばらくすると破風でダダダッと大きな音がした。すると天井の間から一ツ目の大きな化物がニューっと覗いた。それで恐ろしくなってその方へ向けて五人張りの弓をパーンと投げた。すると化物はギャーッといって逃げてしまった。そうこうする内に鶏(にわとり)が鳴いて夜が明けた。夕べの男はどうなったかと村の者たちが連れ立って見に来た。男は元気で座っているので、どうしたかと言うと、確かに化物が出た。ここにあった弓で自分が退治した。確かに手応えがあったから見よ、血を落として逃げていると答えた。村の者が見るとずうっと血が落ちているので、跡をつけて行くと山の奥の洞穴に大きな古狸が死んでいた。それで化物を退治してくれたというので村では手のたつ名人ということになった。とうとう村一番の身上のよい家の聟(むこ)に貰われた。その家の娘はとてもきれいな娘だった。ところが大ほらふきの男は手がたつとは言っても大変みっともない男だった。それで娘はこんな聟では恥ずかしいからどうにかして帰ってもらいたいと思ったが、どうしても帰らない。そこである日、遠くの村からうちの村で山賊がたくさん出て悪いことをして困っている、ここには大変手の立つ人がいたので来て退治してくれないかと頼みに来た。男は快く引き受けた。これはいい。山賊を退治しに行けば弁当を持っていくからその時に毒むすびをこしらえて持たせればいいと思って女房はむすびの中へ毒を入れて風呂敷に包んで持たせた。さて、山賊がいるという山へ行ってみると、山賊たちは大きな松の木の根元へ鍋やら釜やら置いてそこで寝起きしていた。ちょうど山賊たちは出かけていない。戻ったら恐ろしいので松の木のずっと上の方へ登って隠れていた。そんなことを知らない山賊は夕方になると分捕ったものをたくさん持って帰って飲み食いした。ところが松の木の下で火を焚いて酒を沸かすので煙たくてどうしようも無い。それで風上へあっち行きこっち行きして廻っていたところ、腰へつけていたおむすびがいつの間にか落ちてしまった。山賊は大騒ぎをして飲んだり歌ったりしていたが、その内に静かになった。山賊は寝た塩梅だから、むすびでも一つ出て食おうと思って男は腰を探したがむすびは一つも無い。ははあ、ああだこうだする内に落ちたのだろうと思って降りてみると山賊たちは皆酒に酔ったのか死んだのか分からないようになって寝ている。男はそれを片っ端から首を切って、山賊は皆退治したと言って戻った。山賊は男の弁当を拾って食べたので毒にあたって死んだのだ。これは本当に手のたつ偉い人だと思って、それからは女房も男を大切にして仲良く暮らした。

◆モチーフ分析

・ほら吹きの男がいて自分は強いと吹聴していた
・そんなに強いのならある村の化物を退治しろと言われる
・行かないとは言えないので、その村へ出かけた
・空き家に入る。五人張りの弓を手にする
・夜、一ツ目の化物が出るが弓で射る
・村の者たちが様子を見にきた
・血の跡を辿ると古狸が死んでいた
・手の立つ名人と見なされ、村一番の家に聟入りする
・嫁、男がみっともないと嫌う
・遠くの村で山賊が出るという話が出、男が行くことになった
・嫁、毒入りのおむすびを作って男に持たせる
・男、松の木の上で山賊の様子を窺う
・山賊たちが戻ってきて宴会をはじめる
・男、煙たいのであっちこっちへと逃げ回る
・その隙に腰の弁当を落としてしまう
・静かになったので降りてみると、山賊たちは死んだ様になっていた
・男、山賊たちの首を切り凱旋する
・山賊たちは毒入りのおむすびを食べて死んだのだった
・嫁、男を見直した

 形態素解析すると、
名詞:男 山賊 村 嫁 おむすび 化物 弓 手 様子 毒入り 五 あっちこっち こと ほら吹き 一ツ 上 凱旋 古狸 名人 吹聴 夜 宴会 家 弁当 村一番 松の木 空き家 者 聟 腰 自分 血 話 跡 退治 遠く 隙 首
動詞:出る 死ぬ 行く 言う ある いう いる くる する なる はじめる 作る 入る 出かける 切る 嫌う 射る 戻る 持つ 窺う 立つ 落とす 見なす 見る 見直す 辿る 逃げ回る 降りる 食べる
形容詞:強い みっともない 煙たい
形容動詞:静か
副詞:そんなに
連体詞:その

 男/化物、男/山賊の構図です。抽象化すると、主人公/動物、主人公/敵対者です。男―弓―化物/古狸、男―おむすび/毒―嫁、男―おむすび/毒―山賊の図式です。

 ほら吹きの男、ある村の化物の退治を頼まれる[依頼]。請けた[受諾]した男、村へ行き空き家に入る[入所]。五人張りの弓を手にする[入手]。一ツ目の化物を弓で射る[攻撃]。血の跡を追った[追跡]ところ、古狸が死んでいたのを見つける[発見]。それで村一番の家の聟となる[聟入り]。嫁、男を疎んじる[嫌悪]。遠くの村で山賊が出たので退治しに行くことになる[使命]。嫁、男に毒入りのおむすびを渡す[謀略]。男、松の木の上で様子を窺う[監視]。山賊たちが帰ってきて宴会する[宴]。煙いのであちこち動き回っていたところ、弁当を落とす[落下]。おむすびを食べた山賊たち静かになる[沈黙]。降りた男、山賊たちの首を斬って帰る[凱旋]。嫁、男を見直す[再評価]。

 毒入りのおむすびを渡したところ、それが山賊の手に入って、山賊たちが食べて死んでしまった……という内容です。

 発想の飛躍は毒入りのおむすびでしょうか。男―おむすび/毒―嫁の図式です。夫を殺すはずが山賊たちを退治してしまいます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.156-159.

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2022年8月 8日 (月)

えんこうの一文銭――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところに川の東の岸と西の岸に一軒ずつ家があって、それぞれ爺さんと婆さんが住んでいた。東岸の爺さんは正直者で一匹の猫を飼っていたが貧乏なので十分食べさせることができなかった。ところがある日、竜宮さまがえんこうの一文銭をやるから天井の裏へ下げて祀れとお告げになった。朝起きてみると果たして爺さんの枕元にえんこうの一文銭がおいてあった。その一文銭を天井の裏に吊すと、これまで貧乏だった爺さんの家は日増しに身上が良くなった。反対に西岸の欲張り爺さんの家は次第に身上が悪くなっていった。女はとかく口さがなく東岸の爺さんがえんこうの一文銭を授かってから日ごと身上が良くなったということを西岸の婆さんに話したので、これを聞いた爺さんは早速東岸の家へ行ってえんこうの一文銭を貸してくれないかと頼んだ。正直者の爺さんは長い間は貸せられないが一時なら貸してあげようと言って貸した。西岸の爺さんはその一文銭を持って帰って天井裏に吊しておくとその日から身上が次第に盛り返してきた。東岸の家は一文銭を貸した日からまた昔のように目に見えて貧乏になっていった。そこで西岸の爺さんに貸した一文銭を返してくれと催促にいったが、何とか理由をつけてどうしても返さないので、爺さんは困って戻ってきた。婆さんは考えあぐねた末に家の飼い猫に一文銭をとって来るようにいいつけた。猫は川が渡れないので困っていると、一匹の犬が来た。犬に訳を話して川を背負って渡してくだされと頼んだので、猫は犬に負われて川を渡ることができた。猫が西岸の家に行ってみると、鼠がいたので猫はすかさずこの鼠を捕って、お前の命を助けてやるから天井裏にある一文銭を取ってこいと頼んだ。鼠は天井裏に上がって一文銭を落として持ってきた。猫はそれを貰って、また犬に川を渡してもらうように頼んだ。犬の背に負われて川の中程まで来たとき、犬がくわえた物を落とすなよと言ったので猫はハイと返事した。その調子で一文銭が水の中へ落ちた。猫は泣かんばかりになって思案した。そうしたら空から一羽の鳶(とび)が下りて来たので猫は鳶を狙って咥えた。そして命を助けてやるからこの川に落ちた一文銭を探してこいと頼んだ。鳶は川の底にあるものは見えないので、川の上を泳いでいた鵜(う)を咥えて、お前は水の底にいる鮎(あゆ)でも捕るのだから水の底に落ちた一文銭を拾ってくれと頼んだ。そこで鵜は川の端を上下したがちっとも見えないので大きな鮎を咥えてお前の命をとるのではない。この川に落ちているえんこうの一文銭を取ってくれ。お前は水の底を歩いて蟹(かに)とえびでさえ餌にするくらい水の底のことは達者だからと頼んだ。鮎は水の底を泳いでいくと果たしてえんこうの一文銭があった。それを拾い上げて鵜に渡した。鵜はそれを鳶に渡して鳶はそれを猫に渡した。猫はとうとう水の底から一文銭を拾い上げることができたので、喜んで歌にうたった。「猫に鼠に空たつ鳶に 川で鵜の鳥、鮎の魚」。犬は川を渡してくれたが大切な一文銭を水の中に落とすようなことをさせたので、この歌の仲間に入れていないそうだ。猫はえんこうの一文銭を持って帰って爺さんに渡したので東岸の家はまた次第に身上がよくなった。

◆モチーフ分析

・川の東岸と西岸に爺さんと婆さんがそれぞれ住んでいた。
・東岸の爺さんは正直者だったが、飼い猫にろくに食わせられないほど貧乏だった
・竜宮からえんこうの一文銭を授かり、天井裏に下げて祀る
・すると身上が段々と上向いてきた
・東岸の婆さんが口さがなく西岸の婆さんに話す
・西岸の爺さんが東岸の爺さんに一文銭を貸して欲しいと頼む
・東岸の爺さんは、少しの間だけならと貸す
・すると西岸の爺さんの身上が上向き、東岸の爺さんの身上が下向く
・東岸の爺さん、一文銭を返す様催促するが、何かと理由をつけて返さない
・東岸の婆さんが飼い猫に一文銭を取り戻すように言い付ける
・猫、川を渡れないので困っていると犬がやって来る
・猫、犬の背に負われて川を渡る
・猫、西岸の家の鼠を捕まえ、一文銭を持ってくるように言い付ける
・鼠、一文銭を天井から取って猫に渡す
・一文銭を受け取った猫、再び川を渡ろうとする
・犬が声をかけたので応答してしまい、一文銭を川底に落としてしまう
・猫、鳶を捕まえて川底の一文銭を取ってくるように言い付ける
・鳶、川底が見えないので鵜を捕まえて一文銭を取るように言い付ける
・鵜、川底をさらえないので鮎を捕まえて一文銭を取るように言い付ける
・鮎、川底の一文銭を取って鵜に渡す
・鵜は鳶に一文銭を渡す
・鳶が猫に一文銭を渡す
・喜んだ猫は歌を詠む。ただし犬は除く
・一文銭を取り戻した東岸の家はまた身上がよくなった

 形態素解析すると、
名詞:一文銭 東岸 爺さん 猫 川底 西岸 婆さん 川 犬 身上 鳶 鵜 家 飼い猫 鮎 鼠 えんこう それぞれ 催促 声 天井 天井裏 少し 応答 歌 正直者 段々 理由 竜宮 背 間
動詞:取る 渡す 言い付ける 捕まえる 上向く 取り戻す 渡る 貸す 返す かける さらう する つける やって来る 下げる 下向く 住む 受け取る 喜ぶ 困る 持つ 授かる 祀る 落とす 見える 詠む 話す 負う 除く 頼む 食わせる
形容詞:よい 口さがない 欲しい
形容動詞:貧乏
副詞:また ろくに 何か 再び

 東岸の爺さん/西岸の爺さん、東岸の爺さん/猫/犬/鼠/鳶/鵜/鮎の構図です。抽象化すると、主人公/模倣者、男/動物です。東岸の爺さん―一文銭―西岸の爺さん、東岸の爺さん―一文銭―猫/犬/鼠/鳶/鵜/鮎の図式です。

 東岸の爺さん、えんこうの一文銭を授かる[呪具の獲得]。次第に身上が上向く[到富]。婆さんがおしゃべりで西岸の婆さんに話してしまう[漏洩]。西岸の爺さんが一文銭を貸してくれるよう申し入れる[申し入れ]。東岸の爺さん、承諾して貸す[貸与]。西岸の爺さん、一文銭を返さない[返却せず]。東岸の婆さん、飼い猫に一文銭を取り戻すように言いつける[命令]。猫、犬に負われて川を渡る[渡河]。猫、鼠を捕まえて[捕獲]一文銭を取り戻す[奪取]。再び川を渡る[渡河]。犬の言葉に応じてしまった[応答]ために一文銭を川底に落とす[落下]。猫、鳶を捕まえて一文銭を持ってくる様に命じる[命令]。鳶、できないので鵜を捕まえて言いつける[命令]。鵜、できないので鮎を捕まえて言いつける[命令]。鮎。一文銭を取り戻す[回収]。鮎、一文銭を鵜へ渡す[譲渡]。鵜、鳶へ渡す[譲渡]。鳶、猫へ一文銭を渡す[回収]。喜んだ猫は歌を詠む[吟詠]。犬は除く[除去]。一文銭を回収した東岸の爺さん、身上が上向く[到富]。

 えんこうの一文銭を奪取するために、猫、犬、鼠、鳶、鵜、鮎のリレーが行われる……という内容です。

 発想の飛躍はえんこう(河童)の一文銭を回収する動物たちのリレーでしょうか。東岸の爺さん―一文銭―猫/犬/鼠/鳶/鵜/鮎の図式です。

 えんこうの一文銭は豊かさをもたらす魔法のアイテムです。

 世界の昔話では「魔法の指輪」に該当するようです。犬、猫、ねずみといった動物のリレーが見られます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.152-155.
・『民間説話―理論と展開―』上巻(S・トンプソン, 荒木博之, 石原綏代/訳, 社会思想社, 1977)pp.116-117.

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2022年8月 7日 (日)

メタフィクションが好きな批評家

このところ批評家・東浩紀の評論集を読んでいる。僕は作家買いする傾向があるので気に入ったというところだろう。彼の主著である「存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて」はまだ読んでいない。電子書籍化されていないのが主な理由だが、フランス現代思想についての博士論文なので難解だろうという苦手意識もある。

東氏はサブカルチャーの評論家でもあったのだけど、メタフィクション的な構成の作品を好む傾向にある。なので、その観点からいうと見落とされた作品も多々ある。

現在は社会思想に軸足を移したようだ。これは東日本大震災の影響が大きいだろう。東日本大震災の影響でゼロ年代的な思考形態が修正を余儀なくされたからだ。ただ、具体的な内容は知らないが、何らかのトラブルで現在はTwitterのアカウントを削除してしまったようだ。

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西行法師――モチーフ分析

◆あらすじ

 西行法師が鼓が原へ行った。タンポポの花がきれいに咲いているので「人に聞く鼓が原に来て見れば 磯辺に咲けるタンポポの花」と詠んだ。我ながら良く詠めたと感心する。広い原で家が無い。どこか泊まるところはないかと探していると小さな家が見つかった。入って見ると髪の白い老人夫婦がいたので一夜の宿を求めた。許されたので上がると何しに来たのか問われた。花を見に来たと答える。西行と名乗ると歌詠みの先生だなと言われる。ひとつ歌を詠んで欲しいと言われたので、我ながらよく詠めたと思う歌だといって詠んだ。それを聞いた老人はどうにもいけないところがある、自分がこの歌を直そうとと答える。鼓というものは音のするものである。それでは音に聞くと言わなければ鼓が原に来た甲斐がない。磯辺に咲ける、鼓は皮を張ったものである。だから川辺に咲けるとやってみよ。「音に聞く鼓が原に来て見れば 川辺に咲けるタンポポの花」と直すように言った。西行は感心して、そのうちうとうとと寝てしまった。目が覚めてみるともう夜明けで、そこには家もなくただの野原であった。そしてほとりに短冊が落ちていた。そこには「柿本人麿」と書いてあった。

◆モチーフ分析

・西行法師、鼓が原へ行く
・西行法師、歌を詠んで自賛する
・西行法師、宿を借りる
・西行法師、老人に歌を詠んで聴かせる
・老人、歌に手入れを施す
・納得した西行法師、そのまま寝てしまう
・目が覚めるとそこは野原で「柿本人麿」と書かれた短冊が落ちていた。

 形態素解析すると、
名詞:西行法師 歌 老人 そこ 原 宿 手入れ 柿本人麿 目 短冊 納得 自賛 野原 鼓
動詞:詠む 借りる 寝る 施す 書く 聴く 落ちる 行く 覚める
副詞:そのまま

 西行法師/柿本人麿の構図です。抽象化すると、法師/歌聖です。西行法師―歌―老人/柿本人麿の図式です。

 鼓が原へやって来た西行法師、歌を詠んで[吟詠]自賛する[自画自賛]。宿を借りた西行法師、宿の主に歌を詠んで聞かせる[詠唱]。すると老人は歌に手入れを施す[修正]。納得した西行法師、寝てしまう[寝落ち]。目が覚めると家は消え[消失]「柿本人麿」と書かれた短冊が残っていた[残存]。

 歌を詠んだところ、柿本人麿に手入れされた……という内容です。

 発想の飛躍は、西行法師に歌の指導を行うのが柿本人麻呂だったというところでしょうか。西行法師―歌―老人/柿本人麿の図式です。

 西行法師が石見国を訪れたのかは分かりませんが、柿本人麿は石見で生涯を終えた歌聖であり、石見にふさわしい昔話と言えるでしょう。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.149-151.

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神楽があったが外出せず

松見町の八幡神社で神楽が催されるが、オミクロン株の感染がピークなので行くのを見合わせた。神楽はオープンエアなので大丈夫だとは思うのだが、これだけ蔓延しているとどこで感染するか分からない状況なので。

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Scrapboxを使ってみる

キンドル・アンリミテッドでObsidianとScarpboxのマニュアル本を読む。Obsidianは難解で使いこなせそうにない。Scarpboxは使えそうだが、基本的にはチームで作業するもののようだ。もちろん個人でも使える。仕組み的にはマークダウン記法が簡略化されたWikiである。Scarpboxは[]でキーワードをくくると、そのキーワードが見出しとなったページが作られリンクが貼られる。たとえば[昔話]と入力すると「昔話」というタイトルのページができる。この調子で次々とページを作っていく。するとリンクを通じてネットワークが生成されるといった具合だ。リゾーム状になると言えばよいか。TABキーを押せば箇条書きもできる。

試しに今取り組んでいる昔話のモチーフ分析について付けたメモをScarpboxに移してみた。これはこれでいいのではないかと思う。ただ、発想の飛躍を起こすまでには至らない。

シンプルな操作性で奥深さが実現できる点で優れたツールと言えるだろう。ライフハック系の電子書籍を何冊か読んでみたが、自分が使っているタブレット端末(Kindle Fire HD8)では使えないアプリも多く、実感が湧かなかった。

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2022年8月 6日 (土)

天の釣舟――モチーフ分析

◆あらすじ

 馬鹿な息子がいた。兄だったが跡取りにできそうもないので百両渡されてお前はこれで利口を買ってこいと追い出された。息子は大金を貰ったのでうれしくてたまらない。毎日利口を買わせてくださいといって歩いた。ある日ばくち打ちのいるところに通りかかった。ひとつ騙して取ってやろうとなって、ばくち打ちは短冊に「天の釣舟」と書いて渡し、息子から百両貰った。息子はこれが利口だと喜んであっちこっち歩いていると日が暮れてしまった。見るとそこに大きな家があった。宿を貸してもらうと思って縁側に寝ることになった。息子は縁側に寝てみたが、どうも眠れないので障子の穴から覗いてみると、きれいなお姫様が机に向かって一生懸命何か書いていた。夜遅くまで何をしているのかと思ったのでなおも覗いていたが、その内に眠ってしまって、障子に頭をぶつけてしまった。お姫様は「とんとん鳴る沖のとなかの音は」と歌を詠んだ。息子は今日買った短冊のことを思い出して「天の釣舟」と答えた。お姫様は感心して、誰だろうとなった。両親が起こされてそのうち家に使われている人も皆起きた。探してみると、宿を借りている小丁稚であることが分かった。お姫様はこれはただのお方ではない。この家の若旦那として差し支えない。早く祝言をしてくださいと言った。お姫様は歌の師匠でたくさんの弟子がいたが、呆れたのは一の弟子、二の弟子で、何だ夕べの夜這いがと忌々しがったが仕方がない。すぐに祝言があげられた。

 ある日一の弟子が若旦那の前に進み出て一つ歌の題を出してくださいと言った。若旦那は小便に行くと待たせて思案した。考えていると便所の前に白い藁(わら)もく(藁くず)がふわりふわりとしていた、早速帰って「白いもくあり黒いもくあり」と題を出した。さすがの一の弟子もさっぱり分からない。お姫様はお前は一の弟子でありながら分からぬか「雀が門に巣をかけて 白いもくあり黒いもくあり」と答えた。今度は二の弟子が自分にも題を出してくれと言った。若旦那は今度も題が分からないのでしばらく考えていたが、さっき便所に行ったとき、上履きが上の段に片つら下の段に片つらあったことを思い出して、「上の片かた下に片かた」と出した。二の弟子もさっぱろ分からないので困っていると、お姫様は「月も日も水鏡でみるならば 上の片かた下に片かた」と答えた。今度は三番目の弟子が申し出た。若旦那はいよいよ題がないので小便に行った。すると小便がぼたりぽたりと落ちたので「頭ぶるぶる雫(しずく)ぽたぽた」と題を出した。三番目の弟子もさっぱり分からない。お姫様は「鷺(さぎ)が水田にこりをして 頭ぶるぶる雫ぽたぽた」と詠んだ。一の弟子も二の弟子も三の弟子もみな失敗したので、それからは若旦那とあがめるようになった。

◆モチーフ分析。

・馬鹿な息子がいた
・跡取りにできないので百両渡されて追い出された
・息子、百両で利口を買おうと歩き回る
・ばくち打ちと遭遇、短冊を百両で買う
・息子、大きな家で宿を借りる
・縁側から障子の穴を覗くとお姫様が歌を詠んでいた
・末の句に「天の釣舟」と答える
・お姫様、驚き、下の句を詠んだのは誰かと探す
・息子のことだと分かり、祝言をあげる
・面白くない一番弟子、二番弟子が歌の題を要求する
・便所で思案中に題を思いつく
・一番弟子、答えられない
・二番弟子、答えられない
・三番目の弟子が申し出る
・再び便所に行き、題を着想する
・三番弟子、答えられない
・お姫様それぞれに回答する
・それで若旦那と認められる

 形態素解析すると、
名詞:弟子 息子 百 お姫様 題 二 三 便所 歌 こと それぞれ ばくち打ち 下の句 利口 句 回答 天 家 宿 思案 末 着想 短冊 祝言 穴 縁側 若旦那 要求 誰 跡取り 遭遇 釣舟 障子 馬鹿
動詞:答える 詠む 買う あげる いる できる 借りる 分かる 思いつく 探す 歩き回る 渡す 申し出る 行く 覗く 認める 追い出す 驚く
形容詞:面白い
副詞:一番 再び
連体詞:大きな

 息子/姫/弟子の構図です。息子―下の句―姫、息子―お題―弟子の図式です。

 馬鹿な息子、百両を渡されて追い出される[追放]。息子、騙されて短冊を百両で買う[入手]。息子、大きな屋敷で宿を借りる[宿借り]。息子、姫の歌の下の句を詠む[吟詠]。それがきっかけで姫と結婚する[婚姻]。面白くない弟子たちが息子に歌の題を要求する[出題の要求]。息子、便所で思いつき[着想]、答える[回答]。弟子たち、解答できない[不能]。姫が解答する[回答]。息子、若旦那と認められる[認知]。

 よい案を思いつかないので便所に行くと、難しい題を思いつく……という内容です。

 発想の飛躍は馬鹿な若旦那と頭のよい姫のカップルでしょうか。息子―下の句―姫の図式です。

 若旦那が危機に直面したら、姫の知恵で切り抜けるのかもしれません。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.144-148.

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2022年8月 5日 (金)

今年も開催――ブックショートアワード

https://bookshorts.jp/entry2022
第9回ブックショートアワード(日本博・日本各地のストーリー公募プロジェクト) 応募要項:

テーマ:「日本各地に伝わる昔話やおとぎ話、民話、小説などの<二次創作>」
文字数:5,000文字以内
締切:12月31日(土)

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2022年8月 4日 (木)

竜宮女房――モチーフ分析

◆あらすじ

 孝行息子と母親が二人で暮らしていた。毎日薪(たきぎ)をとって町に売りに行って、それで母親を養っていた。大晦日の日、息子は薪を町に売りに行ったが、誰も買う者はいなかった。日も暮れたので、この薪は竜宮にあげようと橋の上から川へ投げた。それから家へ帰ったところ、美しい女の人が来て今夜泊めてくれと頼んだ。何も食べるものがないと断ったが、きかないのでとうとう泊めてやって嫁にした。女は金を出したので三人でよい年をとった。それから何日か経って男は畑に行ったが、嫁が見たくてたまらないので、家へ帰って話すと、嫁は自分の姿を絵に描いてやった。男はその絵姿を木にかけて、それを見ながら畑仕事をしていた。その内に酷い風が吹いてきて、その絵をどこかへ持っていってしまった。男は悲しんで嫁にそのことを話した。その内に殿さまから何月何日出てこいと殿さまから手紙が来た。何か悪いことをしたのかと心配して出ていくと、こんな女房を持っているかと問われた。それを見ると、嫁の絵姿だったので持っていると答えると、女房を連れてこいと言われた。連れてこられないと断ると、それなら殿さまの言うことを叶えよと難題を言われた。「けむくぞうに、これわいさに、打たん太鼓に鳴る太鼓、音なし笛のじんばらほ」を持ってこいと。心配して嫁に話すと、それはたやすいこと。私が整えてあげると言われた。明くる日、嫁はそれぞれ桐の箱に入れてこれを持っていけ。自分はこれまで隠していたが竜宮の乙姫だ。今日から別れると言った。男は悲しんだ。仕方ないので仰せの通りの物を殿さまのところへ持っていった。殿さまが箱を開けると毛虫やら二丈ある男やら蜂が出てきて殿さまを苦しめた。殿さまは痛くてたまらないので早くしまえと仰せになり、よくその品物を持ってきたと褒美をくださったので、一生安楽に暮らした。

◆モチーフ分析

・孝行息子が母と二人で暮らしていた
・大晦日に薪を売りに町にいったが買い手がつかない
・薪を竜宮にあげようと橋の上から川に落とす
・美しい女人がやってきて泊めて欲しいと頼む
・断り切れず泊めてやる
・女人、そのまま嫁になる
・女人の金でよい年始をおくる
・男、畑仕事に出るが、女房のことが気にかかる
・男、嫁に相談して絵姿を描いてもらう
・絵姿を畑に持っていったところ、風で飛ばされてしまう
・殿さまから呼び出しがかかる
・参上したところ、絵姿は男の嫁か訊かれる
・そうだと答えたところ、では連れてこいと命じられる
・断ると無理難題を申しつけられる
・帰って嫁に相談する
・嫁、正体を明かす。竜宮の乙姫
・嫁が課題の品を箱に入れて渡す
・嫁と別れて殿さまのところにいく
・殿さまが箱を開けたところ、毛虫や蜂が出てきて散々な目に遭う
・男、それで許されて褒美をもらう

 形態素解析すると、
名詞:嫁 ところ 男 女人 殿さま 絵姿 相談 竜宮 箱 薪 こと それ 上 乙姫 二人 参上 品 売り 大晦日 女房 孝行 川 年始 息子 散々 橋 正体 母 毛虫 気 無理難題 町 畑 畑仕事 目 蜂 褒美 課題 買い手 金 風
動詞:いく かかる 断る 泊める あげる おくる つく なる もらう やる 入れる 出る 別れる 呼び出す 命じる 帰る 持っていく 描く 明かす 暮らす 渡す 申しつける 答える 落とす 訊く 許す 連れる 遭う 開ける 頼む 飛ばす
形容詞:よい 欲しい 美しい
副詞:そう そのまま

 男/女房、男/女房/殿さまの構図です。抽象化すると、夫婦/領主です。男―薪―竜宮、男―絵姿―女房、男―無理難題―殿さまの図式です。

 薪が売れない[不振]。薪を川に落として竜宮に送る[献上]。家に帰ると女人が訪れてくる[来訪]。女人、嫁になる[嫁入り]。男、嫁に絵姿を描いてもらう[似姿を描画]。絵姿が風で飛ばされる[飛散]。絵姿が殿さまの手に渡る[奪取]。呼び出された男、嫁を参上させるよう命じられる[要求]。男、断るが難題を課せられる[出題]。嫁に相談したところ、嫁が解決策を教える[提示]。嫁、正体を明かす[判明]。嫁と別れ[別離]、殿さまの許に行く[出頭]。課題の品で殿さま、散々な目に遭う[遭難]。男は許され褒美をもらう[獲得]。

 薪を竜宮に献上したところ、乙姫さまが嫁入りしてきた……という内容です。

 発想の飛躍は難題に対する回答でしょうか。箱―毛虫/蜂―殿さまの図式です。

 薪を竜宮に献上する形でお話は進行しますが、途中から話が絵姿女房に変わります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.140-143.

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誤読する可能性あり――大塚英志「ストーリーメーカー 創作のための物語論」

大塚英志「ストーリーメーカー 創作のための物語論」を読む。初読時は講談社現代新書だったと記憶しているが、現在は星海社e-SHINSHOとして発行されている。読み返して思い起こしたのは初読時に誤読していたことである。ロシアのプロップの昔話の形態論が紹介された際、昔話には普遍的な法則があるのかと感心してしまったのである。実際には「ロシア」の「魔法民話」と限定されていたのであるが。また、キャンベルの英雄論についても似たような誤読をしてしまった。実際には「パッチワーク」であると記されているのだが。キャンベルの神話学には強い批判があるとのことなので、そこら辺には触れておくべきだったと思う。この本にはこのように誤読を誘う箇所があるので留意が必要である。

本書ではスターウォーズが事例として挙げられているが、執筆時期から察するに4・5・6のみが分析対象となっていると思われる。

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2022年8月 3日 (水)

榎の実ならいで金がなる――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、二人の兄弟がいた。弟は横着者で、兄の財産を皆もって分家した。兄は年取った母を養わねばならないのに、財産は皆弟に取られて貧乏していたので、除夜がきても餅もつけない有様だった。弟は餅をたくさん搗いたが兄へはひとつもやらない。兄はせめて母だけでも餅を食べさせたいと思って弟のところへ餅をもらいに行った。弟の家ではたくさん餅を並べていたが、兄に一つでも食えとは言わない。自分で搗いて食べさせたらいいだろうと言ってくれようとしなかった。兄はすごすごと戻ってきたが、つくづく情けなくなって自分は年の暮れになっても餅さえよく搗かぬと言って杵を海に捨ててしまった。すると竜宮から使いが来て兄を竜宮へ連れていった。竜宮では唐金の馬を一匹くれた。そしてこの馬に一日を米を五合ずつ食べさせよ。五合しか食べさせてはいけないと言った。兄は喜んで馬を連れて帰ると、米を五合食べさせた。すると馬は金を一升ひった。そして毎日五合ずつ食べさせたので、まもなく沢山の金が貯まった。それを聞いて弟がやって来て、いい馬を貰ったそうだが兄弟の間柄だ、少し貸してくれないかと言った。兄は正月の餅をせめて母に食べさせたいと思って弟のところに貰いにいったが、一つもくれなかったと言って馬を貸さなかった。すると母がそれでは二日だけ貸してやらぬかと言ったので、とうとう馬を貸してやった。そして決して一日に米を五合しか食わせてはいけないぞと言った。弟は馬を連れて帰ると、欲張りだから一日に一升の米を食べさせた。すると馬はぽっくり死んでしまった。弟は馬を背戸の柿の木の根元へ埋めた。兄は弟がいつまで待っても馬を返さないので、馬を戻すように弟のところへやって来た。弟は馬は死んだから柿の木の根元へ埋めたと言った。兄はお前が米を余計に食わせたからだと言って、大層力を落として柿の木の根元に埋めてある馬を掘りあてて持って帰り、自分の家の背戸の畑へ埋めて、墓印に榎(えのき)を一本植えておいた。ところが榎には葉が出ないで黄金がいっぱいついて出た。それで「これのお背戸の三つ又榎 榎の実ならいで金がなる」というのだそうだ。

◆モチーフ分析

・二人の兄弟がいた
・弟は兄の財産を皆もって分家した
・兄は母を養わなければならないのに、貧乏だった
・兄、弟に餅を分けてもらうよう頼む
・弟、一つも分けてやらない
・兄、情けなくなって杵を海に捨てる
・竜宮から使いが来る
・竜宮で唐金の馬をもらう
・一日に五合の米を食べさせるように教えられる
・言われた通りにすると、馬は一升の黄金をひる
・兄、次第に裕福になる
・弟が知って馬を借りようとする
・兄は餅のこともあって貸そうとしない
・母が二日だけ貸してやれと言う
・それで兄は馬を弟に貸す
・弟、馬に一升の米を食わせて死なせてしまう
・弟、馬を柿の木の根元に埋める
・兄、弟に馬を返すように言う
・弟、死んだので埋めたと答える
・兄、死体を掘って自分の家の畑に植え、榎を植える
・榎には葉が成らないで黄金が出た

 形態素解析すると、
名詞:兄 弟 馬 一 榎 母 竜宮 米 餅 黄金 二 五 こと 一つ 二人 兄弟 分家 唐金 家 木 杵 柿 根元 死体 海 畑 皆 自分 葉 裕福 財産 通り
動詞:する 言う 貸す もらう 埋める 植える 死ぬ ある いる ひる やる 使う 借りる 出る 成る 捨てる 掘る 教える 来る 知る 答える 返す 頼む 食べる 食わせる 養う
形容詞:情けない
形容動詞:貧乏
副詞:分けて 次第に

 兄/弟の構図です。抽象化すると家族同士です。兄―餅―弟、兄―馬―弟の図式です。

 兄、弟に餅を分けてくれる様に頼む[依頼]。弟、断る[拒否]。兄、杵を海に投げ捨てる[投棄]。竜宮から使いが来る[来訪]。竜宮で歓待される[訪問]。唐金の馬を与えられる[呪具の贈与]。馬、五合の米を食うと一升の黄金をひる[排泄]。弟が貸して欲しいと頼む[依頼]。兄、断る[拒否]。母が二日だけ貸せと言う[とりなし]。兄、弟に馬を貸す[貸与]。弟、馬に一升の米を食わせて死なせてしまう[死]。弟、死骸を柿の木の根元に埋める[遺棄]。兄、それを掘り出す[奪還]。兄、自分の畑に埋葬し、榎を植える[植樹]。榎から黄金が成る[到富]。

 一日に五合の米を食べさせるところを一升食わせたので馬が死んでしまう……という内容です。

 発想の飛躍は米を五合食べて一升の黄金をひる唐金の馬でしょうか。馬―(食わせる)―米―(ひる)―金の図式です。

 竜宮を訪問する点では異郷訪問譚であります。馬は異郷の呪具です。また兄弟譚でもあります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.137-139.

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批評の意義――東浩紀「テーマパーク化する地球」

東浩紀「テーマパーク化する地球」を読む。10年代の批評・インタビューを中心にまとめられている。ゼロ年代の批評は東日本大震災で変化を余儀なくされる。

批評が大学化したのがカルチュラル・スタディーズであるという指摘はなるほどと思った。ただ、カルチュラル・スタディーズは特定の思想に傾き過ぎているのではないかと思う。一面的な見方に陥っている。

自分がやらなくても、いずれ誰かがやるという醒めた見方だけど、一面では正しいかもしれない。ただ、例えば東氏なら、郵便、誤配、動物化、一般意志2.0、観光客の哲学という組み合わせで生み出せるのは東氏以外にいないのである。

それにしても、やはり東氏はメタフィクションが好みなのだと再認識させられた。

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2022年8月 2日 (火)

屁ひり爺――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところに爺さんがいた。ある日お殿さまの山で木を伐っていたら、お殿さまの行列が通った。お殿さまが人の山で木を伐るのはどいつだと言った。爺さんは日本一の屁ひりじいと言った。それなら屁を一つひってみよとなり、ここには尻にとげがたってひられない、板の間は冷たくてひられない、畳はつるつるしてひられないとなり、毛氈(もうせん)ならひられるとなった。毛氈の上で錦ざらざら黄金ざらざら五葉の松原はスッポロポンのポンと大きな屁を見事にひった。お殿さまは大層喜ばれて、まさしく日本一の屁こき爺だ。褒美をとらせると言った。爺さんは褒美をもらった。それを聞いた隣の欲張り爺さんが自分も褒美を貰わねばと、お殿さまの山で木を伐っていた。お殿さまの行列が通って人の山で木を伐るのはどいつだと言った。欲張り爺さんは日本一の屁ひり爺と言った。それでは屁をひとつひってみせよとなった。ここには尻にとげがたってひられない、板の間は冷たくてひられない、畳はつるつるしてひられないとなり、毛氈ならひられるとなった。毛氈の上で錦ざらざら黄金ざらざら五葉の松原とやったが屁が出ない。そこで爺さんは錦ざらざら黄金ざらざら五葉の松原はスッポロポンのポンとやったが、出たのは屁ではなく大きな黄色なのがポン。お殿さまは怒って、よくも嘘をついたなと一刀のもとに尻を切ってしまった。だから欲張りをして人まねをしてはいけない。

◆モチーフ分析

・爺さんがお殿さまの山で木を伐っている
・そこにお殿さまの行列が通りかかり、とがめられる
・爺さんは自分を日本一の屁ひり爺と言う
・それなら屁をひってみよとなる
・爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない
・毛氈の上で大きな屁をひる
・お殿さま、大層喜んで、褒美を賜る
・それを隣の欲張り爺さんが聞く
・隣の爺さん、お殿さまの山で木を伐る
・お殿さまの行列が通りかかり、とがめられる
・隣の爺さん、自分が日本一の屁ひり爺と名乗る
・それなら屁をひってみよとなる
・隣の爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない
・毛氈の上だが屁が出ない
・もう一度ひると大便が出てしまう
・お殿さま、怒って隣の爺さんの尻を切ってしまう

 形態素解析すると、
名詞:屁 爺さん お殿さま 隣 それ あれこれ 上 山 日本一 木 毛氈 爺 理由 自分 行列 そこ 大便 尻 欲張り 褒美
動詞:ひる つける とがめる 伐る 出る 通りかかる 切る 名乗る 喜ぶ 怒る 聞く 言う 賜る
副詞:もう 一度 大層
連体詞:大きな

 爺さん/殿さま/隣の爺さんの構図です。抽象化すると、主人公/領主/模倣者です。爺さん―屁―殿さま、隣の爺さん―屁―殿さまの図式です。

 爺さんが殿さまの山で木を伐る[伐採]。そこへ通りかかった殿さまがとがめる[詰問]。爺さん、日本一の屁ひり爺と言う[名乗り]。爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない[不発]。毛氈の上で見事に屁をひる[放屁]。殿さま、喜んで褒美を賜る[下賜]。それを聞いた隣の爺さん、山で木を伐る[伐採]。そこへ殿さまが通りかかってとがめる[詰問]。隣の爺さん、日本一の屁ひり爺と言う[名乗り]。隣の爺さん、あれこれ理由をつけて屁をひらない[不発]。毛氈の上で大便をひってしまう[排泄]。怒った殿さま、隣の爺さんの尻を斬る[斬撃]。

 爺さんの真似をした隣の爺さんだったが、大便を排泄してしまった……という内容です。

 発想の飛躍は中々屁をひらずにここぞというところで屁をひることでしょうか。爺さん―屁―殿さまの図式です。これも隣の爺譚です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.134-136.

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2022年8月 1日 (月)

桃太郎――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、爺さんと婆さんがいた、爺さんは山へ木を伐りに、婆さんは川へ洗濯に行った。婆さんが川で洗濯していると上流から大きな桃が流れてきた。あまりに大きな桃なので爺さんと一緒に食べようと思って持って帰った。婆さんが包丁で桃を切ろうとすると桃がひとりでに割れ、中から大きな男の子が生まれた。たらいに湯を入れて洗ってやると、力の強い子でたらいを高くさしあげた。桃から生まれた桃太郎と名づけられた。桃太郎は成長して力の強い息子となった。ある日桃太郎はこれから鬼ヶ島へ征伐に行くから、きび団子を作ってくれと言った。婆さんはきび団子をこしらえて爺さんは鎧(よろい)や兜(かぶと)をこしらえて持たせ、刀も持たせ大きな幟(はた)をこしらえてやった。桃太郎は爺さん婆さんと別れて弁当を食べていると犬が来てどこに行くか訊いた。鬼ヶ島へ行くと答えて、きび団子を与えると犬はお供となった。次に猿がやって来た。猿もきび団子を与えてお供にした。今度は雉子(きじ)がやって来た。雉子もきび団子を与えてお供にした。それから丸木舟に乗って鬼ヶ島へ渡った。鬼ヶ島に行ってみると鬼が門番をしていた。雉子が鬼の目や鼻をつついて門番は中に逃げた。猿が門をよじ登って中から門を開けた。桃太郎が中へ攻め込んだ。犬はワンワン吠えて噛みつく。桃太郎は一番大きな鬼に刀を抜いて斬りかかった。鬼は金棒を振り回して桃太郎と戦ったがとうとう負けて降参した。助命する代わりに鬼たちが取った宝物を出させた。これを船に積み込んで戻った。爺さん婆さんは大喜びで、鬼からとった宝物や金を村の人に分けた。

◆モチーフ分析

・爺さんは山へ木を伐りに、婆さんは川へ洗濯へ行った
・婆さんが洗濯していると、上流から大きな桃が流れてきた
・婆さん、桃を家へ持って帰る
・婆さんが包丁で切ろうとすると、桃が割れ、中から男の子が生まれた
・男の子、たらいを差し上げて力の強いことを示す
・桃太郎と名づける
・桃太郎、成長して力の強い息子となった
・桃太郎、鬼ヶ島に征伐に行くから、きび団子をこしらえてくれと頼む
・爺さんと婆さん、きび団子や武具をこしらえる
・桃太郎、出発する
・桃太郎、きび団子で犬をお供にする
・桃太郎、きび団子で猿をお供にする
・桃太郎、きび団子で雉子をお供にする
・丸木舟に乗って鬼ヶ島へ渡る
・門番を雉子がつつく
・猿が門をよじ登って中から開ける
・桃太郎、中に攻め込む
・犬は鬼に噛みつく
・桃太郎、一番大きな鬼と戦う
・桃太郎、勝利。鬼たち降参する
・助命する代わりに宝物を持って帰る
・桃太郎、村に帰る
・爺さんと婆さん、宝物を分配する

 形態素解析すると、
名詞:桃太郎 婆さん きび団子 お供 中 桃 爺さん 鬼 力 宝物 洗濯 犬 猿 男の子 雉子 鬼ヶ島 こと たらい 上流 丸木舟 出発 分配 助命 勝利 包丁 家 山 川 征伐 息子 成長 木 村 武具 門 門番 降参
動詞:する 帰る こしらえる 持つ 行く つつく なる よじ登る 乗る 代わる 伐る 切る 割れる 名づける 噛みつく 差し上げる 戦う 攻め込む 流れる 渡る 生まれる 示す 開ける 頼む
形容詞:強い
副詞:一番
連体詞:大きな

 桃太郎/婆さん/爺さん、桃太郎/犬/猿/雉子、桃太郎/鬼の構図です。抽象化すると、主人公/家族、主人公/動物、主人公/妖怪です。婆さん―桃―桃太郎、桃太郎―きび団子―犬/猿/雉子、桃太郎―宝物―鬼の図式です。

 桃太郎、桃から生まれる[誕生]。力の強い息子に育つ[成長]。鬼ヶ島を征伐に行くときび団子と武装をこしらえてもらう[準備]。きび団子で犬、猿、雉子を家臣に加える[採用]。鬼ヶ島に攻め込む[攻撃]。鬼に勝利する[退治]。宝物を持って村に帰る[凱旋]。

 桃から生まれた桃太郎はきび団子で犬、猿、雉子を家来にして鬼ヶ島に攻め込んだ……という内容です。

 発想の飛躍は桃から生まれた桃太郎というところでしょうか。婆さん―桃―桃太郎の図式です。

 それ以前のパターンだと桃を食べて若返った爺さんと婆さんの間に桃太郎が生まれるという筋となっているそうです。きび団子で犬、猿、雉子を家来にするのも発想の飛躍と言えるでしょうか。桃太郎―きび団子―犬/猿/雉子の図式です。

 桃太郎は攻撃的だという評がありますが、それを反転させると「七人の侍」のプロットとなります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.129-133.

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脳には糖分が必要――外山滋比古「思考の整理学」

外山滋比古「思考の整理学」を読む。発想にはアイデアを寝かせる、熟成させる時間が必要だと述べられている。また、寝て起きた後の朝の思考が自動的に整理され効果的であるとある。また、思いついたことを積極的にメモに取り、更にそれを選んでノートに移していくことが述べられている。これはコンピューターが発達した今日ではクラウドに保存する方向性になっている。いずれももっともだと思うが、朝食抜きで考えるのはいかがなものか。脳が働くには糖分が必要である。

本書が出版された時期はパソコンが登場して事務の電算化がはじまった時代である。現代の我々はいずれAIに仕事を奪われると言われており、その点でも創造的な発想力が求められるのである。

……このところ発想法に関する本をチェックしている。現在、昔話のモチーフ分析に取り組んでおり、発想の飛躍を渇望しているのである。でも、何年か寝かさないと駄目かもしれないし、それでも何もないかもしれない。

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