アナログの時代の悪戦苦闘――梅棹忠夫「知的生産の技術」
梅棹忠夫「知的生産の技術」(岩波新書)を読む。知的生産とあるので、カードを使った発想法についてだろうかと考えていたが、案外、形式的な側面が強かった。手帳、カード、スクラップブック、ファイルキャビネット、タイプライターといったツールについて語られる。これらは現在ではデジタル化されて利便性が格段に向上している。アナログ、紙ベースでしか処理できなかった時代の悪戦苦闘の記録が現代に伝えられているといった読み方をすべきだろうか。例えば、タイプライターの時代では漢字廃止論が根強くあったことが窺える。
また、手紙、日記、原稿、文章の書き方にもページが割かれているが、これも形式的な側面が強い。文章作法的なことが書かれているのだ。一方で、カードを並べ替え組み替えて文章を生成するこざね法についても触れられている。これが唯一発想法的だろうか。
発想法について知りたい人は、川喜田二郎「発想法」(中公新書)を当たった方がよさそうだ。
メモをとることの大切さも強調されている。僕自身、自分の内にあった思いを言語化しなかったことで後悔したことがあるので身につまされる。
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