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2022年7月 8日 (金)

吉田の田部――モチーフ分析

◆あらすじ

 吉田の田部(たなべ)の先祖は綿売りで綿屋と言っていた。ところが綿売りで失敗したので吉田には帰らず、大阪へ出た。住吉さまに参詣したが、賽銭をあげようとすると一両小判が一枚あるだけである。そこで初めてのことだからと小判を賽銭箱に投げ入れた。懐には一文もなくなった。ところが、そこに旦那が二人参っていて、田部が一両小判を投げるのを見て驚いた。商人らしいが並みの者ではないと感心した。それは鴻池(こうのいけ)の旦那が番頭を連れて来ていたのだった。

 鴻池の旦那は番頭に言って田部に今晩自宅に泊まって貰うよう頼んだ。田部は泊まることにした。田部は山や田畑の売り込みにくるのを見ては毎日ぶらぶらしていた。田部は旦那の碁打ちの相手もした。田部は碁が強く、旦那はやはり並みの者でないとますます田部に惚れ込んだ。

 ある日、七里四方の山を買う話が持ち上がった。旦那が番頭に入札に行かせた。大抵の場合なら取って戻れとの指示であった。田部は旦那があれほど欲しがっているからにはきっと儲かる。ここだと思って自分も同道することにした。入札したところ田部に落札した。番頭が雲州の客に落札したと報告した。旦那は雲州の客ならよいと答えた。

 帰る気になった田部は引き留められたが吉田へ帰った。帰りの旅費は旦那が出してくれた。

 大きな買い物をした田部は吉田へ戻ってきた。そして吉田の家々に少しずつ金を分けてやって家にも土蔵にも提灯にも(綿)に印を入れさせた。七里四方の山を買った田部は大勢の木こりを入れて山稼ぎを始めた。月日が流れて三年経った。

 鴻池ではあれから三年になるが金を送ってこぬし便りもない。一つ様子を見てこいと番頭が旦那の命を受けて吉田へやって来た。見ると村中(綿)の印なので驚いて、こんな大家に金の請求をすれば鴻池の恥じになると何も言わずに帰って旦那に報告した。旦那も番頭を褒めた。それから十年稼いで田部は大金を儲け、鴻池に返した。こうして田部家は今日の様に栄えた。

◆モチーフ分析

・吉田の田部は綿売りで綿屋と言った
・綿売りで失敗して大阪に出た
・住吉さんに参詣する
・一両小判を賽銭にする
・その姿をみていた鴻池の旦那と番頭が今晩泊まるように言う
・田部、泊まることにする
・ぶらぶらして数日が過ぎた
・田部、碁が強かった
・鴻池の旦那、ますます並みの者でないと感じる
・七里四方の山を買う話が持ち上がる
・鴻池の旦那、番頭を入札に行かせる
・儲かる話だと思った田部、同行する
・田部、落札する
・鴻池の旦那、雲州の客ならと諦める
・田部、引き留められるにも関わらず吉田へ帰る
・吉田に戻ってきた田部、吉田の家々に金を配り、(綿)印を入れさせる
・七里の山に木こりを入れ稼ぎはじめる
・三年が経過、鴻池の番頭が様子を見にやってくる
・見ると村中、(綿)の印だった
・大家に金を請求すると鴻池の恥になると番頭、引き返す
・十年稼いだ田部は大金を儲け、鴻池に返す
・田部家は栄えた

 田部、事業に<失敗>して、大阪に<出る>。住吉神社に<参詣>して、一両小判を賽銭に<寄付>。その様子を見ていた鴻池の旦那と番頭が<宿泊>するよう<要請>する。<宿泊>した田部、<無為>に過ごす。七里四方の山の<入札>話が持ち上がった。田部が<落札>する。吉田へ<帰還>した田部、家々に(綿)を<印字>させる。それから山で<稼ぎ>はじめる。吉田へやって来た鴻池の番頭、村中に(綿)の印があることに<驚き>、<請求>せずに<帰還>する。十年稼いだ田部は鴻池に金を<返済>する。

 吉田を出た田部が大阪へ行き、吉田に帰還する話です。発想の飛躍は一両小判を賽銭にすることと吉田の家々に(綿)の印を入れさせることでしょうか。豪商との繋がりを作り大家と見せかけるのです。しかし、その後田部は鴻池に借金を返済します。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.65-68.

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