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2022年7月13日 (水)

静間の狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 静間に引迫(ひきさこ)坂といってとても淋(さび)しい坂があった。ここはよく化物が出ると言われていた。ある日、雨の降る夕方に大浦の三四郎という人が坂を通りかかった。萱(かや)みのを着て、寒いので下に狐の皮を着ていた。そこへ向こうから三人若い者が来て出会った。若い者はこの辺りには化物が出るというがこやつだ。今日は三人いるから退治してやろうと相談して三四郎を捕まえた。三四郎は自分は大浦の者で大田に用事に行っての帰りだと説明しても若者たちは放そうとしない。その内に一人が三四郎の後ろに尻尾がぶらさがってのを見つけた。三四郎は幾ら言っても駄目だと覚悟を決めた。そこまで見られては仕方がない。自分はこの坂にいる狐だ。助けてくれる代わりに守り銭を一文ずつあげようと言って、これは福の銭だから大事に持っていよ。これを廻して手を叩くと金が出るともったいらしく一文ずつ渡した。若い者たちはようやく手を放したので三四郎は家へ帰った。

 若い者はそれぞれ家へ帰った。一人は得意になって帰る途中で狐を捕まえて守り銭を貰ったと話した。そして三四郎の言った通りに一文銭を廻して手を叩いた。しかし幾らやっても銭は出てこない。ただの一文銭だとなった。他の若い者の家でも同じことだった。段々その話が広がって三人の若い者は三四郎に騙されたのだと笑われた。

 その話が大森の代官所の耳に入ったので、代官所では三四郎を呼び出した。三四郎はどうなることかと恐る恐る代官の前へ出た。近頃評判の一件は事実かと訊かれたので三四郎は事情を詳しく話すと、代官は三四郎の知恵で四人の命が助かったと褒美をくれた。

◆モチーフ分析

・大浦の三四郎が引迫坂を通りかかった
・雨なので萱みのを着け、寒いので狐の皮を着けていた
・三人の若者と出会った
・若者たちは三四郎を狐だと責める
・三四郎、事情を話すが聞き入れてもらえない
・三四郎、一文銭を狐の守り銭だと言って渡す
・若者たち、三四郎を解放する
・若者たち、家に帰る
・若者たち、三四郎に言われた通りにするが何も起きない
・ただの一文銭だとなる
・他の若者も同じ経験をする
・三四郎に騙されたと評判になる
・三四郎、代官所から呼び出される
・三四郎、事情を説明する
・代官所は三四郎の知恵を褒め、褒美を渡す

 三四郎、狐であると<疑われる>。三四郎、事情を<説明>するが<信じてもらえない>。三四郎、<嘘>をついて<解放>される。その後、三四郎の話が嘘だったと<判明>する。<評判>となる。三四郎、代官所で<聴取>される。三四郎、事情を<解説>する。三四郎、知恵を<賞賛>される。

 三四郎→若者→三四郎と視点が切り替わります。発想の飛躍は一文銭を狐の守り銭だと嘘をつくところでしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.77-80.

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