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2022年7月26日 (火)

狸と狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 狐と狸が出会った。狐が狸に空死にするように言って、狐は猟師に化けて狸を背負って町へ出て狸を売った。狐は狸は空死にするものだから、しっかり縛り付けておくように言ったので買い手は狸をしっかり縛った。狐の猟師は狸を売った金で焼き餅を買って、吊されている狸のところへ行って、焼き餅を買ったから下りてこいと言った。しっかり縛られているので中々身体が抜けない。ようやく下りてくると狐は焼き餅を全部食べてしまった。狸は皆食ったとプンプン怒った。狸は仇をとってやるぞと思って翌晩狐のところに鮒(ふな)を持っていった。狐がどうして獲ったか訊くと、狸は夜に堤へ尻尾をつけているといくらでも食いつくと言った。狐は狸に案内されて堤へ行った。そして狸の言う通り尻尾を水につけてじっとしていた。狸がまだまだと言うので狐はじっと尻尾をつけていた。そうして夜中尻尾を堤につけていたので氷が張って尻尾がとれなくなった。夜が明けて動けなくなっているところを人に見つけられ、散々な目に遭った。

◆モチーフ分析

・狐と狸が出会った
・狸に空死にするように言い、狐は猟師に化けて狸を売る
・買い手、言われた通りに狸をしっかり縛る
・狐、狸を売った金で焼き餅を買う
・狐、狸に降りてこいと言う
・狸、しっかり縛られているため身体が抜けない
・ようやく下りてくると、狐は焼き餅を全部食べてしまった
・狸、狐が全部食べたと怒る
・狸、仇を取るために翌晩狐のところに鮒を持っていく
・狸、夜に堤に尻尾をつけていると食いつくと言う
・狐、狸に連れられて堤へ行く
・狐、狸の言う通り、尻尾を水につける
・狐、尻尾を水につけ続ける
・氷が張って、狐、動けなくなる
・夜が明けて人に見つかり、散々な目に遭う

 形態素解析すると、
名詞:狸 狐 尻尾 ため 堤 夜 水 焼き餅 通り ところ 人 仇 散々 氷 猟師 目 空死に 翌晩 買い手 身体 金 鮒
動詞:言う つける 売る 縛る 食べる つけ続ける 下りる 出会う 動く 化ける 取る 張る 怒る 抜ける 持っていく 行く 見つかる 買う 連れる 遭う 降りる 食いつく
副詞:しっかり 全部 ようやく 明けて

 狐/狸の構図です。抽象化すると、動物同士です。狐―焼き餅―狸、狸―鮒―狐の図式です。

 狐、狸と会う[邂逅]。狐、狸に空死にするように狸に言う[騙す]。狐、猟師に化けて狸を売る[売却]。狸、しっかり縛られる[緊縛]。狐、焼き餅を独り占めする[独占]。狸、怒る[憤怒]。狸、狐のところに鮒を持って行く[持参]。狸、狐に堤で尻尾を水につけていると釣れると言う[騙す]。狐、尻尾を水につけ続ける[垂らす]。水が凍って狐、動けなくなる[凍結]。夜が明けて人に発見され、散々な目に遭う[遭難]。

 狐に騙された狸は意趣返しで狐を騙す……という内容です。

 狐と狸の化かし合いが発想の飛躍でしょうか。狐―焼き餅―狸、狸―鮒―狐の図式です。

 狐と狸が争うと狐が勝つ話の方が多いような気がするのですが、ここでは引き分けとなります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.110-112.

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