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2022年7月17日 (日)

犬伏山の大蛇――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、邑智郡都賀村の都賀西に高橋備前守という城主がいた。備前守に仕える三十六人の小姓の中に松原千代坊師という十七八ばかりの勇士がいた。ある日集まって話をしていると年長の小姓が犬伏山の大蛇の話を持ち出して、誰か嘘かまことか見届けてくる者はいないかという話になった。返事をする者はいなかったが、千代坊が名乗り出た。千代坊は他の小姓たちから妬まれていたのである。大蛇を従えて帰ったら残り三十五人の大小を褒美として進ぜようという話になった。千代坊は褒美は断ったが、これは皆の企みだとすぐ分かった。

 千代坊は独り犬伏山に向かった。犬伏山に近い向山の出口に一軒家があって老人夫婦が住んでいた。夕方、そこに千代坊がやって来て水を一杯所望した。千代坊はこれから犬伏山を越えると告げた。老人夫婦はここから一里あまり奥に椿の大木があって、そこに年を経た雄雌の大蛇がいる。これまで夜に犬伏山を通って災難に遭った者は数え切れないと引き留めたが、千代坊は礼を言って山へ入って行った。

 だんだん暗くなり、山は次第に深くなった。椿の木の下で大蛇が出るのを待ち受けた。真夜中になって大蛇が下りてきた。千代坊は大蛇を真っ二つに斬った。次に雌蛇が下りてきた。これも一刀のもとに胴切りにした。夜が明けてきた。しかし、千代坊は大蛇の毒気を全身に浴びて身体が次第にしびれてきた。勇気を奮い起こして谷底へ下りて大蛇の耳を四つ切り取って元のところへ這い上がったが、毒が全身にまわり気を失ってしまった。

 夜が明けるのを待って老人たちが山へ登ってきた。そして倒れている千代坊を助け起こして家へ連れ帰って介抱をして城へ知らせた。千代坊が目を覚ましたときには乗り物で城中へ迎え入れられた後であった。

 千代坊の勇気に感心した備前守は三十五人の小姓たちを閉門にし、三十五の大小を改めて褒美に取らせた。千代坊は身体が回復すると暇を願い、都賀東の金東寺に入って坊さんとなった。そして名を教雲と改め仏道の修行にいそしんだ。その子孫は吾郷村に今も続いている。

◆モチーフ分析

・都賀西の高橋備前守に仕える三十六人の小姓がいた
・その中に千代坊という十七八の勇士がいた
・ある日、小姓たちが犬伏山の大蛇の噂をした
・千代坊が大蛇を退治しに行くという話になった
・残り三十五人の大小を賭ける話となった
・千代坊、犬伏山に向かう
・途中、老人の家に立ち寄る
・老人たち、千代坊を引き留めるが、千代坊、出立する
・犬伏山の椿の木の下で千代坊、大蛇を退治する
・千代坊、もう一匹の大蛇も退治する
・千代坊、証拠に大蛇の耳を切り取る
・大蛇の毒気に当てられた千代坊、意識を失う
・老人たちがやって来て千代坊を介抱する
・千代坊が目覚めたときには城中にいた
・備前守、千代坊の勇気を讃え、褒美を取らせる
・千代坊、暇を乞い、仏門に入る

 小姓たちが大蛇の<噂>をする。千代坊が<確認>することになり<賭け>をする。犬伏山に向かった千代坊、二頭の大蛇を<退治>する。証拠の耳を<獲得>する。<気絶>した千代坊を老人が<介抱>する。城中に戻った千代坊、褒美を<獲得>する。千代坊、仏門に<入る>。

 発想の飛躍は大蛇が二頭でることでしょうか。千代坊は難なく大蛇を退治しますが、毒気に当てられて気絶します。後に仏門に入ったのも大蛇退治と関係があるでしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.93-96.

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