山姥の手つだい――モチーフ分析
◆あらすじ
石見町矢上の原山にある岩窟は市木浄泉寺の下まで続いていると言われている。そしてこの岩窟には山姥が住んでいたという。昔、大石の田植えは分限者のことで大田植だった。毎年のように早乙女(さおとめ)を十四五人雇っていたが、田植えの日になると夜明けからきれいに身支度をした早乙女が集まって田に入る。苗取りのときはそんなにはっきりしないが、並んで植え始めるとどうも雇った人数より一人多い。ところが不思議なことに顔を見ても違った人は見当たらない。それが、数えてみると一人多いので、誰か手伝いに来てくれたのだろうと昼飯の準備は一人増やしておいた。昼になって早乙女は田からあがって食事をした。ところが済んでから見ると一人分残っている。変に思って午後田に出た早乙女を数えてみると、やはり一人多い。ますます変だと思いながら田植えが済んで田から上がった人数を数えてみると、間違いなく雇っただけの人数だった。それでいよいよ訳が分からなくなってしまった。明くる年もその明くる年も同じ様な事が続いて、結局一人増えるのは山姥が手伝いに来たのだろうということになった。
◆モチーフ分析
・矢上の原山にある岩窟は浄泉寺の下まで続いていると言われている
・この岩窟には山姥が住んでいたという
・昔、大石の大田植は毎年のように早乙女を十四五人雇っていた
・田植えをはじめて見ると、どうも雇った人数より一人多い
・ところが顔を見ても違った人は見当たらない
・一人多いので昼食を一人分増やしておいたが、済んでみると一人分余っている
・変に思って早乙女の数を数えるが、やはり一人多い
・田植えが済んで田から上がった人数を数えると、雇っただけの人数だった
・明くる年もその明くる年も同じ様なことが続いた
・一人増えるのは山姥が手伝いに来ているのだろうということになった
形態素解析すると、
名詞:一人 人数 こと 山姥 岩窟 早乙女 明くる年 田植え 十四 下 人 原山 変 大石 寺 数 昔 昼食 毎年 浄泉 田 田植 矢上 顔
動詞:雇う いう 数える 済む 続く 見る ある なる 上がる 住む 余る 増える 増やす 思う 手伝う 来る 見当たる 言う 違う
形容詞:多い
形容動詞:同じ
副詞:どう はじめて やはり
連体詞:この その
山姥/早乙女の構図です。抽象化すると、妖怪/娘です。山姥―田植え―早乙女の図式です。
大田植で人数を数えると一人多い[計算]。顔を見ても違わない[確認]。昼食を一人分多く用意したが、一人分余る[余剰]。田植えが終わって数えると雇っただけの人数である[確認]。毎年同じことが続いた[継続]。山姥が手伝いに来訪しているのだろうということになった[解釈]。
どう数えても一人多いですので、山姥が手伝いに来ているということになった……という内容です。
発想の飛躍はいつの間にか一人増えているということでしょう。山姥―(手伝う)―田植え―早乙女の図式です。
座敷童と似たテイストでもあります。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.103.
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