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2022年7月11日 (月)

お松狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 浄福寺が鳥越(とりごえ)にあった頃、ここではお松狐に化かされる者が沢山いた。鳥居村迫(さこ)の原政四郎が魚商人をしていた、ある日魚を売っての帰りがけ、日の暮れぬ時刻に浄福寺の後ろを通りかかるとにわかに暗くなった。政四郎は自分を化かそうとしても叶わない。お松は七変化しか知らないだろうが自分は九変化できる皮をもっているからと叫んだ。すると元の様に明るくなった。そしてお松狐が出てきて政四郎の九変化の皮と自分の七変化の皮を換えてくれと頼んだ。政四郎は家へ連れて帰って座布団にしている猫の皮を出して、七変化の皮と取り替えた。そして近いうちに宮脇で婚礼があるから、この皮を被ってご馳走をよばれるとよいと教えた。さて、宮脇の婚礼の晩になると、お松は九変化の猫の皮を被ってのこのこと座敷へ上がっていった。宮脇ではこの狐めとよってたかって殴りつけた。お松はやっとのことで逃げて帰った。政四郎に騙されたと気づいたお松は七変化の皮を返して欲しいと頼んだ。政四郎はもう人を化かさないと約束させて返してやった。それから浄福寺のところで人が化かされることはなくなった。

◆モチーフ分析

・浄福寺ではお松狐に化かされる者が大勢いた
・魚商人の政四郎が魚を売っての帰りがけに浄福寺の辺りを通りかかる
・急に暗くなる
・政四郎、自分は九変化の皮を持っているから化かされないと叫んだ
・お松狐が現れ、自分の七変化の皮と交換して欲しいと頼む
・政四郎、座布団にしていた猫の皮を七変化の皮と交換する
・近い内に婚礼があるから九変化の皮を被ってご馳走をよばれるといいと教える
・お松狐、九変化の皮を被って婚礼の席に出たところ、狐とばれて散々な目に遭う
・政四郎に騙されたと悟ったお松狐は七変化の皮を返して欲しいと頼む
・政四郎、これから先は人を化かさないと約束させて皮を返す
・それから浄福寺で人が化かされることはなくなった

 狐に<化かされる>者が大勢<存在>した。政四郎が浄福寺の辺りを<通り>かかると急に暗くなった。政四郎、自分は<九変化>の皮を持っているから<化かされない>と<叫ぶ>。お松狐が出てきて<九変化>の皮と<七変化>の皮を<交換>する。お松狐に<九変化>の皮を被って婚礼の席に<出る>よう<騙す>。婚礼の席に出たお松狐、<正体>が<露見>する。散々な目に<遭った>お松狐、<七変化>の皮を<取り返し>に<来訪>する。政四郎、人を<化かす>ことを<させない>と<約束>させる。それから狐に<化かされる>者が<不存在>となった。

 <存在>から<不存在>へとおおまかに流れます。九変化の皮と<騙す>ことで政四郎は七変化の皮を<入手>します。お松狐は正体が<露見>することで散々な目に<遭い>ます。お松狐はもう人を化かさないと<約束>することで七変化の皮を<回復>します。

 「博労と狐」と同じモチーフを持ったお話です。<七変化>より上回っていると<騙す>ことで優位に立ちます。最後はもう人を<化かす>のを<止める>よう<約束>させるところが「博労と狐」と異なっています。

 発想の飛躍は九変化の皮でしょう。七変化の皮を上回る魔法のアイテムと騙すことで七変化の皮を手に入れ優位に立つのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.73-74.

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