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2022年7月12日 (火)

久手の狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 新田(しんた)に喜六という男がいて久手(くて)の西田屋へ奉公していた。その頃は狐がたくさんいて夜になると畑へ出て芋を掘るので小屋がけして芋番をしていた。喜六も毎晩芋番に出ていた。ある日芋番をしていると狐が出てきた。喜六は持っていた鎌を力まかせに投げつけた。鎌は当たらなかったが、驚いた狐は逃げていった。

 それから三日目の晩、喜六はいつもの様に芋番に出ていると、狐が喜六の友達の姿になってやって来た。友達は観音さまの庭で踊りの最中だ。親方も見ていないし、これから踊りに行こうと誘った。応じた喜六は観音さまの庭で踊り始めた。その内訳が分からなくなってしまった。

 一方、西田屋では朝になっても喜六が帰ってこないので大騒ぎとなって、村中総出で喜六を探した。四日目の朝、喜六は新田の実家の納屋の入口に髪をおどろにして身体中血だらけになって放心して座っていた。

◆モチーフ分析

・喜六という男がいて西田屋へ奉公していた
・狐が畑で芋を掘るので喜六も芋番をしていた
・ある日、芋番をしていると狐が出てきた
・喜六、鎌を投げつけた
・鎌は当たらなかったが、狐は驚いて逃げた
・それから数日、芋番に出ていると友人(狐)がやってきた
・友人、観音さまの庭で踊りをやっていると喜六を誘う
・喜六、親方もいないしと踊りに行くことにする
・踊っていると訳が分からなくなる
・西田屋では喜六がいなくなったと大騒ぎとなる
・村中総出で探す
・四日目に血だらけの姿で新田の実家で見つかる

 形態素解析すると、
名詞:六 喜 狐 芋 番 友人 西田屋 踊り 鎌 四 こと 大騒ぎ 奉公 姿 実家 庭 数日 新田 村中 男 畑 総出 血 親方 観音 訳
動詞:いる する やる 出る いう なる 分かる 当たる 投げつける 掘る 探す 行く 見つかる 誘う 踊る 逃げる 驚く
副詞:ある日

 喜六/狐の構図です。抽象化すると、男/動物です。喜六―鎌―狐の図式です。

 狐が芋を盗まないよう芋番をしている[見張り]。狐が来たので鎌を投げつける[攻撃]と狐は逃げる[退散]。それから数日、友人の姿に化けた狐が踊りに誘った[誘惑]。踊っている内に訳が分からなくなる[茫然自失]。数日後、血だらけの姿で見つかる[発見]。

 狐に鎌を投げつけたら、当たらなかったものの、恨まれて仕返しされた……という内容です。

 発想の飛躍は、踊っている内に訳が分からなくなることでしょうか。喜六―(踊る)―狐の図式です。

 芋番を抜け出して踊りに参加したところ、狐に化かされたという流れです。

 鎌は当たっていないのですが、狐に深く恨まれるという筋です。このお話では狐が友人に化けていることは初めから明らかにされています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.75-76.

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