瓜姫――モチーフ分析
◆あらすじ
昔あるところに爺さんと婆さんがいた。ある日爺さんは木を伐りに行った。婆さんは川へ洗濯に行った。婆さんは川で着物をすすいでいると、上の方から瓜が流れてきた。婆さんがそれを拾って食べたところ旨かったので、もう一つ流れよ、爺さんに持って帰ろうと言うと、また大きなのが流れてきた。持って帰るには難儀な大きな瓜だった。その瓜を婆さんは櫃(ひつ)の中に入れて爺さんが戻るのを待っていた。爺さんが帰ってきたので瓜を包丁で割ろうとすると瓜がぽっかり割れて中から可愛いお姫様が出てきた。瓜の中から出てきたから瓜姫という名にして可愛がって育てた。瓜姫が大きくなると、婆さんは糸を紡ぎ、爺さんは杼(ひ)やくだをこしらえて機を織った。瓜姫は毎日機を織っていた。ある日、爺さんと婆さんは外出するので、留守中にあまんじゃくが来ても戸を開けるなと言い付けて出ていった。それで瓜姫は独りで機を織っていた。そこへあまんじゃくがやって来て姫さん、ちいと開けちゃんさいと言った。瓜姫が嫌だと言うと、そう言わんと指の入るほど開けちゃんさい。叱られたらわしが詫びるからと言って指の入るほど戸を開けさせた。今度は手の入るほど開けちゃんさいと言ったので手の入るほど開けてやった。次に頭の入るほど開けちゃんさいと言ったので頭の入るほど開けてやった。今度は身がらの入るほど開けちゃんさいと言った。瓜姫は嫌だと言ったが、あまんじゃくが自分が侘びるからと言ってとうとう中に入ってしまった。それから話をしていたが、これから柿を採りに行こうと言った。瓜姫はここから出たら爺さん婆さんに叱られるから嫌だと言ったが、爺さん婆さんの居ない内に戻ればいいと言って瓜姫を連れて柿の木谷へ出した。あまんじゃくは高い柿の木に登って採っては食いしたが瓜姫には一つもやらなかった。瓜姫には渋柿ばかり投げてよこした。瓜姫がせっかく来たのだから柿が食べたいというと、瓜姫を上がらせて、瓜姫の着ていた着物とあまんじゃくのぼろの汚い着物を交換して姫を高いところへ登らせて、葛(かずら)を持ってきて姫を柿の木に縛りつけてしまった。あまんじゃくは瓜姫のきれいな着物を着て姫に化けて戻ってきて機を織っていた。そのうちに瓜姫はよいところに嫁にもらわれた。嫁入りの日が来て瓜姫に化けたあまんじゃくを駕籠(かご)に乗せて出かけた。柿の木谷を通ろうか栗の木谷を通ろうかと言うとあまんじゃくが栗の木谷を通ろうと言った。そこで栗の木谷を通ったが、栗のいがが足にたってやれないので引き返して柿の木谷を通った。柿の木の下を通ると瓜姫があまんじゃくが嫁入りすると言って泣いた。爺さんが上を見ると瓜姫が縛られているので、駕籠の中のはあまんじゃくが化けていることに気づいて、瓜姫は縄を解いて下ろして、あまんじゃくは引きずり出して三つに切った。粟(あわ)の木に一切れ、麦の根に一切れ、蕎麦(そば)の根に一切れ埋めた。するとそれらの根は赤くなった。瓜姫はきれいな着物に着替えて嫁入りをした。
◆モチーフ分析
・爺さんは木を伐りに、婆さんは川へ洗濯に行く
・婆さんが洗濯していると、上流から瓜が流れてくる
・瓜をとって食べると美味しいので、もう一つ流れてこいと言う
・今度は大きな瓜が流れてくる
・婆さん、大きな瓜を難儀して家に持ち帰る
・爺さんが帰ってきたので食べようとしたら、瓜が割れて中から姫が出てくる
・瓜姫と名づけて可愛がって育てる
・大きくなった瓜姫、機を織るようになる
・爺さんと婆さん、外出するので瓜姫にあまんじゃくがやって来ても戸を開けないように言いつける
・瓜姫が機を織っていると、あまんじゃくがやってくる
・あまんじゃく、言葉巧みに徐々に戸を開けさせる
・中に入ったあまんじゃく、柿を採りに瓜姫を外出させる
・柿の木に登ったあまんじゃく、柿を独り占めする
・あまんじゃく、瓜姫と着物を交換する
・あまんじゃく、瓜姫を柿の木に上がらせて葛で縛る
・瓜姫に化けたあまんじゃく、家に戻る
・姫、嫁に行くことになる
・瓜姫に化けたあまんじゃく、駕籠に乗る
・栗の木谷を通ろうとするが、栗のいがが沢山で引き返す
・柿の木谷を通ったところ、瓜姫が危機を知らせる
・瓜姫を救出する
・あまんじゃくを三つに斬る
・あまんじゃくの死骸を埋める
・蕎麦などの根が赤くなる
・瓜姫は無事嫁に行った
形態素解析すると、
名詞:瓜 姫 あまん 婆さん 柿 爺さん くが 中 外出 嫁 家 戸 木 木谷 栗 機 洗濯 いが くの こと ところ もう一つ 三つ 上流 交換 今度 危機 川 救出 柿の木 根 死骸 無事 独り占め 着物 葛 蕎麦 難儀 駕籠
動詞:くる 流れる 行く する 化ける 織る 通る 開ける 食べる とる なる やって来る やる 上がる 乗る 伐る 入る 出る 割れる 名づける 埋める 帰る 引き返す 戻る 持ち帰る 採る 斬る 登る 知らせる 縛る 育てる 言いつける 言う
形容詞:可愛い 大きい 美味しい 赤い
形容動詞:沢山 言葉巧み
副詞:徐々に
連体詞:大きな
瓜姫/あまんじゃくの構図です。抽象化すると、姫/妖怪です。婆さん―瓜―瓜姫、瓜姫―(入る)―あまんじゃく、瓜姫―柿―あまんじゃくの図式です。
瓜から生まれた瓜姫[誕生]。瓜姫、機を織る[機織り]。爺さんと婆さんが外出すると、あまんじゃくがやってくる[来訪]。言葉巧みに戸を開けさせる[侵入]。柿を食べに外へ出る[外出]。あまんじゃく、瓜姫と着物を取りかえる[交換]。あまんじゃく、瓜姫を縛って[緊縛]、瓜姫に化ける[変化]。嫁入りの駕籠に乗ったあまんじゃくだが、瓜姫が危機を知らせる[警告]。あまんじゃく、三つに切られ[切断]、畑に撒かれる[散布]。瓜姫、無事に嫁に行く[嫁入り]。
瓜姫に化けたあまんじゃくだったが、正体を見抜かれ殺されてしまう……という内容です。
発想の飛躍は瓜から生まれた瓜姫でしょうか。婆さん―瓜―瓜姫の図式です。
途中、あまんじゃくが言葉巧みに戸を開けさせる場面も魅力的な語りです。瓜姫は生存する結末と殺される結末とがありますが、このお話では無事です。蕎麦などの根がなぜ赤いかを示す由来譚でもあります。
ちなみに、瓜が流れてくる様は「つんぶりこんぶり」と形容されています。また、瓜姫が機を織る際は「キーリスットンバットントン」と形容されています。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.123-128.
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