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2022年6月23日 (木)

うしおに――モチーフ分析

◆あらすじ1

 波路浦に一人の漁師がいた。ある日の漁は大量であった。喜んで帰りかけると、海の中から大きな牛の様な怪物が大きな声で「魚をくれ」と叫ぶので、恐ろしくなって投げてやった。ところが怪物はまたしても「魚をくれ」と叫ぶので、その度に少しずつ投げてやった。ようやく港へ着くと急いで家へ帰った。しばらくすると怪物がやってきて、どんどん戸を叩きながら「魚をくれ」と言った。漁師が「家の中へ入れ。魚をやろう」というと「お前はお仏飯を食べているから、家の中へは入られない」といって逃げていった。あくる朝戸をあけて庭へ出てみると大きな足跡が残っていた。足跡は牛の様でもあるし、牛とは違う様にもあるし、村人は不思議に思った。これは昔から言われている牛鬼だろうということになった。

◆モチーフ分析

・波路浦に漁師がいた。ある日の漁は大量だった
・帰りかけると。海の中から怪物が「魚をくれ」と叫ぶので魚をやる
・「魚をくれ」と叫び続けるので、その都度魚をやる
・港へつくと急いで家へ帰る
・家まで怪物が来て「魚をくれ」と言う
・「家の中へ入れ」と言うと「お前はお仏飯を食べているから中に入れない」と怪物が答え逃げていく
・あくる朝、戸をあけると足跡が残っていた
・これは牛鬼だろうということになった

 漁師が漁に出たところ<大漁>でした。帰りかけると牛鬼が<登場>し、魚をねだります。魚をやると着いてきます。家に<逃避>しますと戸の前まで牛鬼がやってきます。家の中に入れと言いますと、漁師はお仏飯を食べているから中には入れないと答え、牛鬼は<逃亡>する……というお話です。

 <大漁>が牛鬼の<登場>を促します。それから牛鬼に<追跡>されるので<逃亡>します。家の中に逃げ込むと、お仏飯を食べたものは<害>せないとなって牛鬼は<逃亡>します。

 全体的に見れば牛鬼の<登場>から<逃亡>までを描いています。お仏飯が牛鬼の<害>を防ぐ要因となります。

◆あらすじ2

 波路浦の大下(おおしも)という家の何代も前の主人が三人の仲間と一緒に四月のある晩釣りに出た。他の舟は沖へ出ていたが、この舟は温泉津の港と福光海岸の中程のシューキの岸近くで糸を下ろした。ここは秘密の釣り場で、その日もよく釣れた。夜が更けて岸の方から「行こうか、行こうか」と声をかけるものがあった。この辺りは断崖絶壁で人のゆける所ではない。狐が悪戯をするのだと思って「おう、来たけりゃ、来い」とからかい半分に言った。ところが「おう」と返事と共に何か大きなものが海にどぶんと飛び込んだ。舟に向かって牛鬼が泳いできた。真っ青になった四人は一生懸命波路浦に向けてこぎ出した。牛鬼も舟を追って来る。ようやく一里ばかり離れた波路浦の浜に着くと、一番近い大下の家へ飛び込んで戸を閉めた。牛鬼は戸をどんどん叩きながら「開けろ、開けろ」とどなる。四人は土間にへばりこんでさっぱり動こうともしない。家の者が火箸を囲炉裏で真っ赤に焼いて、大戸の鍵穴に口を寄せて「今戸を開けてやるから静かにせい」と怒鳴った。牛鬼は声のした鍵穴から中をのぞき込んだ。その時、焼き火箸を鍵穴へ突っ込んだ。目を焼き火箸で突き刺された牛鬼はたけり狂ったが、柱の上に張ってある出雲大社のお札に気づくと身震いしてもの凄い声をあげて逃げていった。この辺りの漁師はそれから必ず出雲大社のお札を戸口に貼るようになった。

◆モチーフ分析

・波路浦の大下の家の主人が仲間と共にある晩釣りにでかけた
・温泉津と福光の間のシューキの秘密の釣り場で釣りをする
・よく釣れた
・岸の方から「行こうか、行こうか」と声をかけるものがいる
・狐だと思い、「おう」と返すと牛鬼が海に飛び込み舟めがけて追いかけてきた

・焦った主人たちは波路浦に向けてこぎ出す。牛鬼も舟を追ってくる
・ようやく波路浦の浜につくと大下の家に逃げ込む
・牛鬼が「開けろ」と怒鳴る
・牛鬼が鍵穴をのぞき込んだところ、家のものが焼いた火箸を鍵穴に突っ込む
・目を突かれた牛鬼はたけり狂うが、出雲大社のお札に気づくと逃げていった
・それからこの辺りの家は出雲大社のお札を戸口に貼るようになった

 <漁>に出たところ、怪物が<声>をかけます。<応じる>とそれは牛鬼で、牛鬼の<追跡>がはじまります。家に逃げ込んだ漁師たちでしたが、焼けた火箸で牛鬼の目を突き刺します。<反撃>です。怒った牛鬼ですが出雲大社のお札に怖れをなして<逃散>します。それから各戸で出雲大社のお札を戸口に貼るようになったという起源が語られます。

 牛鬼の<追跡>と<逃走>、機転を利かせて牛鬼の目を突いて<反撃>します。出雲大社のお札が重要なアイテムとなり牛鬼は<逃散>します。

◆あらすじ3

 日祖(にそ)の漁師に友村清市という人がいた。ある晩一人で小舟に乗って沖へ出た。すると牛鬼が一匹、追いかけてきた。力が強く胆のすわった清市は舟中の綱をまとめて牛鬼が近づくのを待った。間もなく牛鬼は船べりにきて舟に上がろうとした。清市はこれに組み付き、舟へ引き上げて、がんじがらめに縛り上げた。清市は小二町(こふたまち)まで舟で帰り、そこから山越しに日祖まで牛鬼を担いで帰った。浜の舟小屋の前へ牛鬼を投げ出しておくと、日祖中の人がぞろぞろ見にきた。わいわい言っていると、一人の若者が櫂を持って牛鬼の頭を力任せに殴りつけた。すると変な音がして櫂は二つに折れた。近寄ってよく見ると、椿の木の古い根ががんじがらめに縛ってあった。昔から椿は化けるということで、椿の花は仏さまには絶対に供えない。

◆モチーフ分析

・日祖に漁師がいた
・ある晩、小舟に乗って沖へ出た
・牛鬼が一匹追いかけてきた。牛鬼は船べりまでやって来た
・漁師は組み付き、舟へ引き上げてがんじがらめに縛り上げた
・漁師は小二町まで舟で帰り、日祖まで牛鬼を担いで帰った
・浜の舟小屋の前へ牛鬼を投げ出しておくと、村中の人が見物にきた
・一人の若者が櫂で牛鬼の頭を殴りつけた。すると櫂は二つに折れた
・近寄ってよく見ると、椿の古い根ががんじがらめに縛ってあった
・昔から椿は化けるので、椿の花は仏さまには絶対に供えない

 牛鬼と<遭遇>した漁師が牛鬼を<捕獲>します。<捕獲>した牛鬼を村まで担いで帰ります。捕獲された牛鬼を<見物>に村人たちがやって来ます。一人が牛鬼を櫂で叩きますと、それは椿の根でした。正体の<露見>。椿は化けるので仏に供えないとその理由が語られます。

◆あらすじ4

 日祖である晩いわしの地引き網を入れた。ところがどうしたことか一尾もかからない。気をくさらせて皆は酒を飲んでさっさと引き上げた。そのとき小舟にいた一人の老人が家に帰ってから煙草入れを忘れたのに気がついて取りにいこうとした。家内は不吉な予感がすると言って行くのを止めたが、老人は振り切って行こうとする。そこで家内は仏壇に供えてあったお仏飯を食べさせて出した。煙草入れを探すのに夢中になっていた老人が騒がしい波の音に気がついてふとその方を見ると一匹の牛鬼が側まで来ていた。舟の中であり、もう逃げられないと思ったが、思わず櫂で殴ってやろうと身構えた。すると牛鬼は「お前はお仏飯を食っているから近づけない」と言って逃げていった。昔から子供が海や山へ行くときには怪我の無いようにといってお仏飯を食べさせる。

◆モチーフ分析

・日祖である晩いわしの地引き網を入れた。が、一匹もかからない
・漁師たちは酒を飲んでさっさと引き上げた
・小舟にいた老人が煙草入れを忘れて取りに行こうとした
・家内が不吉だと止めたが、老人は振り切ったので、お仏飯を食べさせる
・老人が煙草入れを探していると牛鬼が側までやって来た
・老人は櫂で殴ろうとする
・牛鬼は「お前はお仏飯を食べているから近づけない」と言って逃げた
・昔から子供が海や山に行くときは怪我の無いようにお仏飯を食べさせる

 <不漁>と<帰投>。老人が舟に置き忘れた煙草入れを取りに行こうとします。不吉なので家内がお仏飯を食べさせます。<食事>。舟で煙草入れを探していますと牛鬼が<接近>してきます。身構えますが、お仏飯を食べていたので牛鬼は<逃散>します。子供が海や山に行くときにはお仏飯を食べさせるとその由来の説明がなされます。

 ……まとめますと、おおよそ牛鬼の<登場>から<退散>までが描かれます。間に漁師の<逃走>が描かれます。牛鬼を退散させる手段は幾つかありますが、主にお仏飯と出雲大社のお札です。<漁>に伴う伝説でありますため、多くは漁師町で語られていた伝説と思われます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.32-36.

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