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2022年6月26日 (日)

弥兵衛の天昇り――モチーフ分析

◆あらすじ

 天保時代に石橋弥兵衛という人がいた。ある日大風が吹いて屋根の藁が飛んだたので屋根へ上がって繕っていた。すると海から竜が上がってきて弥兵衛の背中を撫でた。弥兵衛は竜の尻尾をつかまえると、竜と一緒に天に昇った。天には雷の家があった。弥兵衛は雷の家で使ってもらうことになった。弥兵衛は拍子木を打とうとすると、うっかり雲の端を踏んでしまい、海に落ちた。海では竜宮に行った。竜宮で使ってもらうことになった。竜宮のお姫様の坊やの世話をすることになった。ある日、隣村の祭りに坊やを連れていくことになった。しかし、果物はとってはならないと言われる。あまりに旨そうなので一つ取ると漁師の罠にかかった。弥兵衛は漁師に釣り上げられた。弥兵衛の身体にはウロコが一杯ついていた。人魚かと漁師の家へ連れて帰られた弥兵衛だったが、見物人の中に隣の爺さんがいた。弥兵衛は爺さんに声をかけて助けられた。南無阿弥陀仏と念仏を唱えると身体のウロコが落ちた。

◆モチーフ分析

・弥兵衛という人がいた
・大風が吹いて屋根の補修に上がったところ、竜がやってきた
・竜のしっぽにつかまった弥兵衛は天に昇る
・天には雷の家があった。雷の家で下男として働くことになる
・拍子木を鳴らそうとしたら雲の切れ端で足を滑らせ落下してしまう
・海に落下する。竜宮にいき下男となる
・竜宮のお姫様の坊を隣村に連れて行く
・途中にある果物はとってはならないと言われていたが、つい取ってしまう
・果物は漁の罠で弥兵衛は海上に引き上げられてしまう
・弥兵衛の身体にはウロコが生えていた。見物人がやってくる
・見物人の中に隣の爺さんがいることに気づいて、事情を話して解放してもらう
・念仏を唱えると、ウロコが落ちる

 形態素解析すると、
名詞:弥兵衛 こと ウロコ 下男 天 家 果物 竜 竜宮 落下 見物人 雷 お姫様 しっぽ ところ 中 事情 人 切れ端 坊 大風 屋根 念仏 拍子木 海 海上 漁 爺さん 罠 補修 解放 足 身体 途中 隣 隣村 雲
動詞:なる ある いる する やる いう つかまる とる 上がる 働く 取る 吹く 唱える 引き上げる 昇る 気づく 滑る 生える 落ちる 行く 言う 話す 連れる 鳴らす
形容詞:いい
副詞:つい

 弥兵衛/竜/雷/竜宮の姫/隣の爺さんといった構図です。弥兵衛―屋根の補修―竜、弥兵衛―下男―雷、弥兵衛―下男―竜宮、弥兵衛―ウロコ―隣の爺さんといった図式です。

 これは幾つものお話が解決されることなく連続するお話です。

 大風が吹いて屋根の補修に上った弥兵衛の前に竜が現れ、弥兵衛は竜の尻尾につかまって天に昇る[昇天]。そこには雷の家があり、雷の下男として働くことになるが[下働き]、雲の端から落下してしまう[転落]。海に落ちた弥兵衛は次に竜宮に行く[竜宮行]。竜宮の姫様の坊の面倒をみることになった弥兵衛だが、隣村にいく際に「果物をとってはならない」という禁止を[禁止]破り果物をとってしまう[禁止の侵犯]。すると果物は漁師の罠で、弥兵衛は海上へ引き上げられる[捕獲]。弥兵衛の身体にはウロコが生えており、人でないと誤解されるが[見物]、隣の爺さんを見つけ、説明してもらうことで解放される[釈放]。ウロコは念仏を唱えることで落ちる[復帰]。

 地上―天―海―地上と行き来することが発想の飛躍でしょうか。

 地上―天―海―地上と舞台は移り変わります。三つのお話が連続し、それぞれが解決しないままに次の物語に移行しますので、モチーフは昇天、転落、禁止を破る、罠に捕獲される、陸に引き上げられ、元の人間に戻るといった形で継起します。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.41-43.

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