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2022年6月23日 (木)

ごうろ坂の一ツ目小僧――モチーフ分析

◆あらすじ

 ごうろ坂は矢滝城山の中腹にある胸つき十八町といわれる急な坂道で、大森(銀山)へ行く難所だった。いつの頃からか、ここに一ツ目の化物が出て旅人をとって食うという噂が広がった。夕方になると道を歩く人もなくなってしまった。大森の代官所でも強い武士に化物を退治させようとしたが、その度に失敗した。

 ある夕方、温泉津から清水を通って西田に来た一人の武士がいた。その武士が西田の茶店で休んで出発しようとすると、もう夕方なので化物が出る。今夜は泊まって明日出立した方がよいと言われる。化物が出ると知った武士は退治してやろうと考える。武士は制止を振り切って出立した。

 坂の頂上辺りまで来たとき、若い女が一人道ばたで苦しんでいた。明日の朝温泉津を出る北前船に乗らなければならないのだが、急に腹が痛くなって動けないと女は答えた。闇に女の顔が白く浮かぶ。

 人間ではないと気づいた武士だったが、女を背負うと西田へと下っていく。歩く内に背中の女は次第に重くなり、とうとう歩けなくなった。武士は決心して女を道ばたの石に投げ下ろした。ぎゃっという悲鳴とともに女の姿は消えてしまった。

 あくる朝、矢滝の人々がいってみると、大石は血で染まり、側に狸の毛が一杯落ちていた。人々はそこに地蔵さまを祀った。それからはそういうことはなくなった。

◆モチーフ分析

・ごうろ坂は急な坂道で大森へ行く難所だった
・いつの頃からか坂に一ツ目の化物が出ると噂が立った
・夕方になると人気が絶えた
・代官所も武士に化物退治をさせたが、その度に失敗した
・ある夕方、温泉津から西田へ来た武士がいた
・武士が西田の茶店で休んでいると、もう夕方だから今夜はここに泊まっていけといわれる
・化物がでると知った武士は制止を振り切って出立する
・坂の頂上まで来たとき、若い女が一人道ばたで苦しんでいた
・明日の朝までに温泉津に行かねばならない
・闇に女の顔が白く浮かぶ。人でないと武士は見破る
・女を背負った武士、西田へと下っていく
・背中の女は次第に重くなり、歩けなくなってしまった
・思い切って女を道ばたの大石に投げ下ろした
・悲鳴とともに女の姿は消えた
・人々が行ってみると、大石は血で染まり、狸の毛がいっぱい落ちていた
・人々はそこに地蔵を祀った
・それから化物が出ることはなくなった

 ごうろ坂で一ツ目の化物が人を驚かすと<噂>になります。その<噂>を聞きつけた武士が坂に向かいます。坂にやってくると一人の女が腹痛で苦しんでいます。実はここで化物に<遭遇>しています。急用の女を西田まで送るために武士は女を<背負>います。が、女の身体は次第に重くなってしまうのです。決心した武士は女を大岩めがけ<投棄>します。すると女の姿は消え、跡に狸の毛が残っていました。人々はそこに地蔵をたてて祀った……という様な骨格です。

 化物の<噂>を聞いて間もなく女に化けた化物に<遭遇>します。この時点で女の正体は明かされていませんが、<噂>から間髪を入れずに<遭遇>しています。そして女を<背負う>ことで武士は危険を身に引き受けます。結果、重さに絶えかねた武士は女を大岩めがけ<投棄>します。そうすることで化物の正体が<露見>します。モチーフ間の接続に特に問題は見られません。<遭遇>から<露見>までがこの話の胆です。間には正体の<暗示>があります。<暗示>がお話を効果的に盛り上げます。<遭遇>から<露見>の間の距離は少し離れています。その間に状況の進行を説明するのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.29-31.

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