具体的事例多し――澤渡貞男『ときめきの観光学 観光地の復権と地域活性化のために』
澤渡貞男『ときめきの観光学 観光地の復権と地域活性化のために』を電子書籍版で読む。観光学の教科書だが、具体的事例が多く分かり易かった。例えば、地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律、通称おまつり法については制定当初、民俗学者の猛反発があった。観光業者との思惑の違いという点で掘り下げてくれれば良かったと思う。
これらの行事、祭り、上演などは地域の人々にとって心のふるさと的な意味合いのものが多く、実施によって、地域の人々の思いは一応の完結を見るのであるが、それを広く紹介し、その心や、美しさを共有することも体験として意味あることと言わねばならない。そして、モノから精神的なものに国民の関心がシフトしつつある今日においては、このような体験を求める旅行者が多くなってきているのである。
民俗学者たちは芸能が本来の目的を離れて、ステージにおいて第二義的な文脈で演じられることに一様に反対の声を挙げたのである。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 未来社の民話シリーズ、電子書籍化されていた(2025.05.15)
- 波とは無縁なのだろうか――小島寛之『文系のための数学教室』(2025.04.30)
- カーゴカルトは見下されるべき事象なのか?(2025.04.20)
- 連想は認知科学ではどう整理・分類されているか(2025.04.11)
- とっかかりにはなったかもしれない――小島寛之『完全独習 統計学入門』(2025.04.07)