けしからん――しりのないニシ
◆あらすじ
出雲の国でヤマタノオロチを退治したスサノオ命は石見の国の様子を見るために小浜(こはま)まで来た。
小浜の近くの笹島(ささじま)には矢を作る際に使う質の良い竹が沢山生えていた。
スサノオ命は笹島で竹を切って回っていたが、気がつくと潮が満ちていた。
服が濡れてしまうとスサノオ命は浅瀬づたいに岸の方へ歩いていった。そのうち大波が打ち寄せて、着物の裾を濡らしてしまった。
岸についたスサノオ命は近くの川で着物を洗うと乾くまで一休みすることにした。砂浜で寝入ってしまった。
日が沈む頃になってスサノオ命は目を覚ました。今日中に出雲へ帰らないといけないのに、焦ったスサノオ命は干しておいた着物を着ようとした。ところが、風に吹き飛ばされたのか、せっかく干しておいた着物が川の中に浸っていた。
しまったと思いつつ、着物を引き上げてみると、裾の方にニシ(タニシ)やヒルがびっしり付いていた。
これはけしからん、立腹したスサノオ命がニシを一つずつ引き離すとニシの尖った尻をねじ切って川の中に捨てた。また、ヒルの口をねじ切って捨てた。
それからというもの、この辺りのニシは尻尾が切れたようになり、ヒルは人の血を吸わなくなった。
温泉津(ゆのつ)町の厳島神社の境内に衣更(きさらぎ)神社というお社がある。この社はスサノオ命を祀っていると言われている。
◆余談
温泉津町の伝説である。この話はどこかで読んだことがあるが、偕成社『島根県の民話』に収録されていたので、追加で収録した。
私の実家は田んぼを埋め立てた土地に建っているのだが、家の前に溝があって、そこに降りて遊んでいるとヒルが吸い付いていたことがあった。元が田んぼなのでヒルが生き残っていたのだ。
◆参考文献
・『島根県の民話 県別ふるさとの民話(オンデマンド版)』(日本児童文学者協会/編, 偕成社, 2000)pp.22-25.
記事を転載→「広小路」
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