「文化」について、まだまだ学ぶ余地がある――吉見俊哉「カルチュラルスタディーズ」
吉見俊哉「カルチュラルスタディーズ(思考のフォロンティア)」を読む。句読点が「、」「。」でなく「,」「.」が用いられている。つまり学術論文の体裁である。実際に読んでみると「,」「.」の区別がつきにくい。具体例を欠き、抽象的な文体であり、悪文とまではいかないが、すんなり頭に入ってこない。
本書は狭義のカルチュラルスタディーズ、英国でのそれに焦点を絞っているが、英国で文化という概念が登場したのが比較的新しい時代だったというのが驚きだった。また、少数の知識人によって大衆は善導されるべきといったエリート主義的な文化論が始まりだったというのも参考になった。
カルチュラルスタディーズは重層的、多元論的な思考であるが、多元論は結局は一元論、二元論に還元されてしまうのではないか。そうすると二項対立的な思考に戻ってしまう。
「文化」について、まだまだ知らないことがあるというのが読後感。僕の関心範囲だと、神楽をカルチュラルスタディーズ的に論じる可能性もあるのではないか。
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