« 脳が理解を拒否する――斎藤幸平『人新世の「資本論」』 | トップページ | コロナ禍のアンケートあり――「かながわの民俗芸能」第85号 »

2021年6月 3日 (木)

世間並みの自我形成――安藤則夫「昔話から見た日本的自我のとらえ方―日本昔話が持つ教育的効果に関する一考察―」

ブログのアクセス解析から遡って、安藤則夫「昔話から見た日本的自我のとらえ方―日本昔話が持つ教育的効果に関する一考察―」という論文を読む。

本論文は昔話の聞き手の子供の立場からその受容の仕方(教訓を得る)を考察したもの。日本昔話では

・お爺さんお婆さんが主人公になることが多い
・禁止を破って罰を与えられる話が多い
・女性を否定的に捉える話が多い
・結婚でのハッピーエンドが少ない
・謙譲の美徳を教える話があること

といった特徴が挙げられるとしている。

主人公がお爺さんお婆さんであることについては、昔は親が働きに出て祖父母が子供の面倒を見ることが多かったからではないかとする。

また、結婚話では男女の愛情よりも金銭的社会的地位を得る話として描かれることが多いとしている。

これらから、日本人の自我の形成には欲求を抑えて世間並みに振舞うことが求められているとしている。この点が能動的な欧米の昔話と異なる点である。

欧米と比べて抑圧的と感じるかもしれないが、例えば大災害時にも暴動を起こさないといった美点も認められるだろう。

|

« 脳が理解を拒否する――斎藤幸平『人新世の「資本論」』 | トップページ | コロナ禍のアンケートあり――「かながわの民俗芸能」第85号 »

昔話」カテゴリの記事