フレンチセオリーの概論書――岡本裕一朗「フランス現代思想史」
岡本裕一朗「フランス現代思想史」(中公新書)を読む。実存主義は対象外とされているが、それ以降のレヴィ=ストロースに始まる構造主義からポスト構造主義、ポスト構造主義以降の現代思想の概略が示される。
冒頭でソーカル事件について触れている。数式をしばしば援用するのだが、比喩に過ぎず無意味であると看破された事件である。確かに文体の実例として引用された箇所は何を言わんとしているのか理解しかねた。そういう文体だということらしいが。
大学生のときに当時流行っていたニューアカデミズムに触れて、その一端をかじった。法学部だったので法社会学の講義だったが、本国フランスでは既に退潮が始まっていたというのが興味深い。構造主義については橋爪大三郎氏の入門書を読んだことがあるが、構造主義からポスト構造主義に至る過程が読めて勉強になった。
ポストポスト構造主義だけど、共産主義については現在中国の台頭もあり、終わったものとすることはできないだろう。どうなるか不透明だけど、傍観する他ない。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 追記するべきか(2023.09.08)
- 三人の戦争体験記――山田正美「父親たちの戦場:ミンダナオ島・インパール・特攻隊」(2023.08.28)
- コロナの三年間――南雲功「木漏れ日の中で パンデミックの中で考えてきたこと」(2023.08.09)
- Yahooコメントの分析――木村忠正「ハイブリッド・エスノグラフィー NC研究の質的方法と実践」(2023.06.27)
- 吉本隆明とは相性が悪いか――安藤礼二「シリーズ・戦後思想のエッセンス 吉本隆明 思想家にとって戦争とは何か」(2023.06.23)