生徒たちから収集――常光徹「学校の怪談 口承文芸の研究Ⅰ」
常光徹「学校の怪談 口承文芸の研究Ⅰ」(角川学芸出版)を読む。この本は正月に読もうと思って買ったのだけど、途中で進まなくなって読み終えるまでに六月まで掛かった。なぜ止まったかというと、怖い話、死にまつわる話が苦手だからである。
著者は民俗学者だが、中学校教員の経歴があり、まず学校で生徒たちを対象に収集した怪談が語られる。また、現代の都市伝説についても語られる(※文中では都市伝説とは呼んでいない)。都市伝説は近年になって成立したものだが、同じ構造を持つ話が江戸時代からあって換骨奪胎されたとみられる話もある様だ。
山で遭難した5人の内一人が死ぬ。山小屋に避難するが、眠ると凍死してしまう。、そのため、中央に死体を置き、小屋の四隅に陣取った四人が一人ずつ前進して前の者の肩を叩くという行為を繰り返す(最初に動いたものがその場を離れるため、四人目の前に人はいないはずであるが彼らは回り続ける)といった話が紹介される。江戸時代の話が改変されたものらしい。
後半は東北や北陸で採集した世間話、笑話についても取り上げている。最後は学校の保健室の話(養護教諭が私服の定時制高校から転任してきたが、制服だと表情が読み取りにくいと語る)やクラスの周縁にいるツッパリの思い出が語られる。一見口承文芸と関係なさそうに思えるが、学校という場での抑圧、鬱屈が形を変えて噴出する特異点でもある。
余談。
僕が卒業した小学校でも七不思議があった。どんな内容だったか忘れてしまったが、七つ全部知ると死んでしまうのだそうである。中には「赤字である」といったものもあった。
<追記>
なお、アマビエがアマエビと表記されていた。
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