アウトライン化とマトリックス化――佐藤郁哉「質的データ分析法 原理・方法・実践」
佐藤郁哉「質的データ分析法 原理・方法・実践」(新曜社)を読む。本書は社会学や民俗学、文化人類学、経営学などの分野でフィールドワークを行った成果を一本の論文としてまとめる手法について書かれたもの。
僕自身は論文を書く機会はないのだけど、江戸里神楽公演学生実行委員会のアンケート調査の結果を見せてもらったことがあって、それで自分にはデータを読む力がないなと思わされたのだけど、そんなことがきっかけとなって本書に興味を抱いたものである。
ここからはツールについて私見が混じる。フィールドノートはプレーンテキスト形式で書くのがいいだろう。ファイル名に日付を入れて日付順でソートできるようにするといった細かいテクニックにも触れられている。なぜ、プレーンテキストかというと、GREPが使えるからである。同じフォルダに入ったテキスト文書であれば、横断的に高速で検索してくれる。結果、探し出しやすくなるといったメリットがある。
それから定性的コーディングに移る。コーディングというと、プログラミングを連想してしまうが、定性的データではそうではなく、文書を読んでいき、適切な文書セグメント単位で分節して見出しをつけていくことである。
紙ベースで言えば、見出しをつけた文書セグメントをカードに移していく作業になる。要約でも構わない。これでフィールドノート全体の文脈から切り離されることになる。脱文脈化である。
カードに移し終えたら、今度は分類して50音順、日付順など適切な基準で並びかえていく作業となる。分類もしくは配列化である。
データで作業していく場合はアウトラインプロセッサ機能でツリー構造化していくことになる。僕が日常的に使用しているテキストエディタは秀丸エディタだけど、秀丸はGREPとアウトライン化の機能を持っているので、適当なものと言えるだろう。
一旦カード化アウトライン化して脱文脈化した文書セグメントを今度はコード・マトリックスに展開、移し替えていく作業となる。これはEXCELなどの表計算ソフトで行うものである。列に見出し、行に事例をとる。こうしてマトリックスの内容が充実してきたら、そこで再文脈化が行われることになる。
こうして完成した(完成途上でもよい)マトリックスを行単位、列単位で見て、そこから傾向を掴んでいくという作業になる。
実際にはQDAソフトというものがあり、それを使えば上記の様な作業を一元化して行うことができるそうである。QDAソフトを販売しているWEBサイトを覗いてみたが、価格は分からなかった。学生割引はある。
<追記>
MAXqdaの価格が分かったが、一般向けで約15万円と高価であった。主な顧客は大学、企業、官公庁で一般には販売する気がないだろうという価格設定である。
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