折口からストリップまで――橋本裕之「芸能的思考」
橋本裕之「芸能的思考」を読む。橋本氏は民俗芸能だけでなくて演劇学も専攻していて、パフォーマンス論的な論考集となっている。本書の半分はストリップを含む大衆芸能に充てられている。大衆芸能はいわば民俗芸能が対象としてこなかったジャンルである。ストリップは戦後始まったものであるが、温泉に行ったことがきっかけでストリップの世界にのめり込むようになる。ストリップ嬢と親しくなって聞き取りとかする訳である。
僕もストリップは川崎と今は無き渋谷だったかで二度ほど見たことがある。そのときは裸という衣装をまとっているようだなと思わされた。
大衆芸能では他に叶麗子という通天閣の歌姫が取り上げられる。通天閣の劇場で圧倒的な人気を誇る女性演歌歌手。そして僕自身は行ったことがないが、通天閣を取り囲む新世界の沿革が取り上げられる。
もちろん民俗芸能的な論考もあって折口の芸能の発生を解いた論考などが挙げられる。芸能は祭祀から発生したが、祭祀が発達するにつれてやがてそこに招かれざる客が登場する。外から来た見物客である。見る/見られるの関係の発生である。
また柳田の行った山村調査で自分では笑わないで他人を笑わせるといった人はいますかという質問項目を取り上げる。お笑い芸人の発生である。なお、柳田は笑いを優越者が劣位の者に対して行う攻撃的なものと考えていたようだ。笑い合うという状況は等閑視されている訳だ。
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