復興に奔走する――橋本裕之「震災と芸能 地域再生の原動力」
橋本裕之「震災と芸能 地域再生の原動力」を読む。2015年に初版が出ており、東日本大震災から四年が経過した頃に出版されたものとなる。著者の橋本氏が民俗芸能という無形文化財の分野で復興に奔走した様子が描かれている。民俗芸能は不要不急のものではなく、地域に暮らす人たちの生活のよりどころなのである。
郷土芸能の復興には三つのステージがあって、第一段階は太鼓や衣装など道具類の調達、第二段階は練習できる場所(仮設でも)の確保、そして第三段階が郷土芸能に携わる人たちの雇用の場の確保となっている。
事例として鵜鳥神楽などが挙げられる。鵜鳥神楽は岩手県沿岸部に点在する宿を巡業して回るのが特徴であるが、津波で宿となる家屋が流されたため、巡業できない事態となった。そこで家屋の残った(風呂は壊れていたが)有志が宿として名乗りを挙げ、神楽実施に及んだもの。鵜鳥神楽は芸術面でも優れているが、地元の人たちに深く信仰されている、そういう意味では娯楽的な面も併せ持つ神楽であるとのこと。
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