誰も何となくは分かっている――橋本陽介「ナラトロジー入門 プロップからジュネットまでの物語論」
橋本陽介「ナラトロジー入門 プロップからジュネットまでの物語論」(水声社)を読む。要するに物語論である。ロシアのプロップはロシアの魔法昔話が31の機能に分解されると指摘した。それは関数で物語を標記するような構想だったが、後の構造主義に影響を与えた。一方、ソシュールの言語学が人類学者レヴィ=ストロースに影響を与え構造主義が誕生した。構造主義ではバルトやジュネットらが物語論を推し進めた……というような内容である。
本の最初の方は成程と思いながら読んだのだけど、途中から「こんなことは何となく分かっていれば十分で、どうでもいい」という気分になった。もちろん、皆が何となく理解していることを学問的に解きほぐすのは大事なことでもあるのだけど。
本書は日本人が日本人向けにナラトロジーについて書き下ろしたものであり、西洋の言語と日本語の文法が違うことによる時制や視点の違いなどについて詳述されている。物語を形式/内容の二元論で語り勝ちだが、一元論的な記述を試みるのである。
ちなみに、ソシュールは日本では丸山圭三郎の研究が有名だけど、意味するものと意味されるもの、例えば、犬とはワンと鳴く四つ足の雑食性動物であるというのは事の始めから一対一の対応関係であると考えがちだけれども、実はそうではなく、言葉が混沌に満ちた世界を分節するのであると考えるのである。虹と言えば日本では七色であるけれど、外国では六色だったり三色だったりするのがそれである。
レヴィ=ストロースは例えば婚姻を女性の交換と捉える。
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