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2020年7月23日 (木)

生きていた――日本古典文庫「源氏物語」「手習」

日本古典文庫「源氏物語」「手習」を読む。その頃、比叡の横川に某僧都といって人格の高い僧がいた。八十を超えた母と五十くらいの妹尼を持っていた。この親子の尼君が願果たしに大和の初瀬に参詣した。帰る途中大尼君が病気になった。旅中のことなので僧都は故朱雀院の御領で宇治の院に宿泊することにする。院の庭の後ろの森と見えるほど茂った大木の辺りで人の姿があった。狐が化けているのかと思って見ると、黒く長いつやつやした髪を持ち、酷く泣いている女であった。僧都は不思議に思い、このまま放置すると死んでしまうので女を保護する。尼君(僧都の妹)が見るとそれは気品の高い女であった。大尼君の病気が癒えて僧都の一行は横川に帰ることにする。女は重篤な様子のままだった。女を快く思っていない弟子たちは反対するが僧都は祈禱する。すると物怪が出て、死にたいと言っていた者が暗い晩に一人でいたから取って来たと告げる。浮舟の姫君はようやく意識を取り戻す。以前のことはよく思い出せず、ただ身投げする決心をして出て行ったということだけが意識に上った。尼夫人たちが看病するが、浮舟は黙り込んだままである。ただ、尼にして欲しいとだけ願う。浮舟が自分が生きていることは誰にも知られたくないと言う。尼組は死んだ一人娘の代わりができた嬉しく思う。尼君の婿は現在では中将になっていた。弟が僧都の弟子となっているので、よく寺へ上った。その途中で小野の尼君を訪ねるのであった。尼君は浮舟と中将を夫婦にしたいと考えはじめる。中将は浮舟の後姿を見て惹かれはじめる。中将は求婚者となるが、浮舟は返歌をしない。尼君が外出した折を見て中将がやって来る。中将は迫るが浮舟は大尼君の部屋に逃れる。浮舟は僧都が女一の宮が物の怪で患っているため祈禱をしに中宮に呼び出され小野に降りて来たことを知る。浮舟は尼君が不在の間に授戒しようと僧都に頼む。僧都はやむなく浮舟を授戒させる。尼君が帰って来て取返しのつかない事をしたと恨み言を言うが、浮舟の心は安寧を得る。それを知った中将は落胆する。浮舟はようやく返歌する。女一の宮の病気は平癒する。僧都は宇治の院で浮舟を発見したことを中宮に話す。明石中宮は行方不明になった宇治の姫君のことではないかと考え薫に聞かせようかと思うるが薫にとっても浮舟にとっても恥となると考え、その場では何もせずにおく。宰相の君もそれを聴いていた。中将は経を読む浮舟の美貌を目にし、出家していても構わぬと浮舟を自分のものにしようと考えはじめる。年が明けた。大尼君の孫の紀伊守が来て薫の大将と宇治の姫君の話をする。その話を聞いて浮舟の心は凍りつく。薫は一周忌の仏事を営む。中宮は小宰相に事の次第を薫に話すように言う。小宰相は薫に僧都の話を聞かせる。小宰相はその人は尼になったと言う。薫は匂宮の耳に入れば出家していても構わずに動くだろうと考える。小宰相は匂宮はこの話は絶対に知らないと保証する。薫はまず僧都に会って詳しい話を聴こうと考える。

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