物語は解決しない――日本古典文庫「源氏物語」「夢の浮橋」
日本古典文庫「源氏物語」「夢の浮橋」を読む。薫は延暦寺に着いて経巻と仏像の供養を営み、翌日横川の寺へ行く。僧都は薫を喜んで迎える。薫は小野に自分の関係者が滞在しているらしいと僧都に尋ねる。僧都は浮舟はやはり貴人だったと思い、愛された人を出家させてしまったのは分別のないことであったと思う。僧都は薫に事の次第を語って聞かせる。薫は僧都に同行を願うが、僧都は今日明日はさしつかえる、月が変わったらと答える。薫は浮舟の異父弟を使者にして僧都の手紙を小野に届けさせる。薫たちの行列が小野の近くを通る。声で浮舟にはそれと知れたが、浮舟は何も言わずにいた。薫は小君(浮舟の異父弟)に浮舟の母には知らせるな、大騒ぎして事が露見するからと言いつけて小君を小野へやる。尼君たちは浮舟が女王だったことを知って浮き立つ。僧都からの手紙では、還俗して元の夫婦に返る様に勧めていた。浮舟は自分が生きていることは知られたくないから小君とは会わないことにする。小君は薫の手紙を浮舟に見せる。浮舟は泣きだしながらも今日は返事ができないと答える。姉と再会できなかった小君は薫の許へ帰り、事の次第を報告する。薫は落胆する。誰かが密かに恋人として置いているのではないかとも考える。
……これから先はご想像に任せますといった感じの締めくくりだ。中将は出家如何に関わらず浮舟を狙っているし、匂宮も浮舟の母君が騒げば事を察知するだろう。物語は何も解決していないままに終わる。
宇治十帖は宇治の姫君の誰かが入水するということしか知らずに読んだ。光源氏の物語が連作短編集的な趣きであるのに対し、宇治十帖は長編小説といった構成だった。
源氏物語の女性は典侍と近江の君を除いては、いずれも運命に翻弄される存在である。通い婚という明らかに母系社会なのだが、女性が表に出ることはなく受け身の存在であり続ける。
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