« 神楽が泣かす番――佐藤両々「カグラ舞う!」 | トップページ | 想い違い――日本古典文庫「源氏物語」「紅梅」 »

2020年7月 1日 (水)

世代交代――日本古典文庫「源氏物語」「匂宮」

日本古典文庫「源氏物語」「匂宮」を読む。光源氏が亡くなった後、その美貌を継ぐ人は現れなかった。冷泉院は恐れ多くて引き比べるべきではない。今上天皇の三の宮(匂宮)と同じ六条院で成長した女三の宮の若君(薫)が美貌の貴公子だとされていたが、源氏と同じくまばゆいばかりというのではない。匂宮は紫夫人(紫の上)が愛育した人だから、大方は二条院に住んでいる。元服後は兵部卿の宮と申し上げる。源右大臣(夕霧)には多くの令嬢がいた。長女は東宮に侍している。下の令嬢は三の宮が娶るとの世評であったが、恋愛結婚でなければと本人にはその気は無かった。夕霧は匂宮に好意を抱いている。六条院がいなくなってからは各夫人たちはそれぞれの家に帰っていたが、花散里は東の院を遺産として与えられていた。夕霧は自分が生きている間は六条院が荒れない様にと配慮する。東北の町に一条の宮(女二の宮)を移して月に十五日通っている。明石夫人(明石の君)は幾人もの宮の世話をして幸福に暮らしていた。夕霧は紫の上が生きていればと思う。六条院(源氏)を慕う者は多かった。そして紫の上もそうであった。春の花の盛りは短くとも印象は深く残る。二品の宮(女三の宮)の若君(薫)は冷泉院が特に愛された。十四歳で元服した。すぐに右近衛の中将に昇進した。母宮(女三の宮)は仏勤めばかりをしており、出入りする中将(薫)を頼みとしていた。中将は自身の出生について疑問を抱いていたが、母の女三の宮には訊けずにいた。母はなぜ突然出家したのか。亡くなった六条院も自分の出生の秘密で悩まされたのではないかと考える。歳の離れた兄である夕霧も中将を大切にする。中将はこの世のものとは思われぬ薫りを身にまとっていた。あまりに薫るので忍び歩きも不自由である。兵部卿の宮(匂宮)はうらやましく思って競争心を燃やした。源中将(薫)は二条院に始終伺う仲でもあった。匂う兵部卿、薫る中将と並び称される。匂宮は冷泉院の女一の宮に恋心を持っていた。一方、厭世的な中将(薫)は恋愛をしては、却ってこの世を捨てる妨げとなるだろうと思っていた。楽天的にはなれず放縦な生活態度もとらなかった。一品の姫君(冷泉院の女一の宮)とは麗しい性質の人を妻にできればと思っているが、院から隔てられているため、積極的にはなれなかった。やむなく情人関係となった女も多くなったが、隠れて通うので自然と女三の宮の許に女房勤めで集まるようになった。皆、薫とのはかない関係を慰みにしていた。夕霧の右大臣も娘の一人は匂宮へ、一人は薫へという願望を持っていたが、言いだすことははばかっていた。典侍の産んだ六女は女二の宮の許で養育させていた。御所の正月の弓競技の後で六条院で宴会が開かれた。匂宮が勝った。中将(薫)は宴席で求子の一節を歌った。

|

« 神楽が泣かす番――佐藤両々「カグラ舞う!」 | トップページ | 想い違い――日本古典文庫「源氏物語」「紅梅」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事