明暗が分かれる――日本古典文庫「源氏物語」「竹河」
日本古典文庫「源氏物語」「竹河」を読む。最近亡くなった関白太政大臣(髭黒)の話。紫式部の筆の跡には遠いものになるであろう。玉鬘の尚侍の産んだ子は男三人と女二人であった。姫君を入内させるを希望していたが、太政大臣は亡くなってしまったので、出入りする人が減ってしまった。六条院は子の一人として尚侍を見ていて遺産の分配もした。夕霧の右大臣は兄弟の情を持っていて、援助することを忘れなかった。男子は放任していても出世するだろうが、姫君たちをどうすればよいか玉鬘は煩悶していた。今上帝から入内の催促があるのだが、中宮一人が寵愛を受ける中に入内しても苦しいだろうと思っていた。また、過去に尚侍として出仕するはずだった冷泉院からも入内の催促があった。姫君は美人という評判があって求婚者も絶えなかった。右大臣家の蔵人少将(夕霧と雲井の雁の間に生まれた子)も熱心な求婚者だった。近い間柄だったから隔てのない取り扱いを受けていた。夕霧自身も認める手紙を寄こした。玉鬘夫人は上の姫君はただの人とは結婚させまい、次の姫君は少将に与えても差し支えないと思っていた。四位の侍従(薫)はその頃十四五であったが大人びた公達となっていて将来有望で、尚侍は婿にしてみたいと思っていた。髭黒の邸は女三の宮の三条の邸に近かったから源侍従はよく遊びに来るのだった。尚侍は源侍従を弟と思って親しんでいた。正月の元日に人が集まった。右大臣(夕霧)も子息を連れてきた。尚侍は姫君の縁談、冷泉院の仰せをどうするかを夕霧に相談する。夕方になって薫が来た。藤侍従を訪問する。蔵人少将が先に来ていた。薫の爪音は太政大臣(頭中将)の爪音に似ていると言われる。また、亡くなった大納言(柏木)に不思議なほど似ているとも言われる。この時以来薫は藤侍従の部屋へよく来るようになって姫君への憧憬を伝えさせた。蔵人少将が想像したとおり、玉鬘の家の者は薫をひいきにする様になった。三月になった。玉鬘夫人の姫君たちは十八九であった。姉の方は気高い美貌で、妹の方は姉には負けるが清楚な感じのする容貌だった。二人が碁を打っていると、そこに蔵人少将がやって来た。覗くと姫たちが碁の勝負をしていた。少将は幸福感を覚える。冷泉院からは毎日の様に催促があり、尚侍も辞退するのはもったいないと考える様になった。そのことを知った蔵人少将は母(雲井の雁)に訴える。玉鬘は姉の院参を済ませてから妹を与えればよいと考えていたが、蔵人少将は姉の姫君のことばかりが思われるのであった。蔵人少将は藤侍従が源侍従(薫)から来た手紙を読んでいたのを取り上げてしまう。四月九日に内侍の長女は冷泉院の後宮へ入ることになった。上の姫君は蔵人少将からの手紙を読み、返事を書く。少将は返事を書くが、姫君は却って失望した。薫の侍従は藤侍従と連れ立って院の庭を歩いていたが、失恋の気持ちを薫は友に漏らす。妹の姫君との縁談もあったが、上の姫君が院参してから蔵人少将は玉鬘の邸に近づかなくなった。今上帝は故人の関白(髭黒)の意志は姫君を入内させることであって、院へ奉ることでななかったと遺憾に思召した。新女御(上の姫君)は懐妊した。翌年の正月には男踏歌があった。蔵人少将も奏楽者として出席した。新女御が見ているであろうかと興奮する。四月に院の第二皇女が生まれた。院の寵愛が深まる。新女御と女一の宮の母である弘徽殿女御の女房たちの間に対立が生じる。尚侍は二女(妹の姫君)を女官にして宮中へ出し、尚侍の職を譲ることに決めた。雲井の雁から蔵人少将のことで申し出があったことを申し訳なく思う。前尚侍(玉鬘)はこれで尼になることも考えたが、どちらの姫君もこれで安心と見極めてからと子息たちが止めた。次の年に新女御が院の皇子を産んだ。院は以前にも増して新女御を寵愛した。女一の宮の母である女御は新女御を恨む様になった。源侍従(薫)は参議中将になっていて、薫る人と呼ばれる様になっていた。立派になったものだと玉鬘は寂しく思う。蔵人少将は三位の中将となっていたが、初恋を忘れることができず、左大臣家の令嬢と結婚をしたのであるが、妻に対する愛情が起こらなかった。院の新女御は煩わしさに自邸へ下がることが多くなった。御所へ上がった妹の姫君は却って華やかに幸福な日を送っていた。薫中将は中納言になり、三位の中将(蔵人少将)は参議になった。源中納言(薫)は前尚侍に挨拶周りをする。玉鬘は新女御が自邸へ引きこもったことで陰の機嫌を損ねたと自嘲する。薫を婿にしていたらと玉鬘は思う。新右大臣(紅梅)は二女を兵部卿の宮(匂宮)の婿として迎えたいと願っていた。玉鬘は息子たちの出世が遅いことを嘆いていた。
……「紫の筆の跡には遠い」とあるので、他人の作か。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 鳥取県立図書館にドラマ誌を寄贈――大山山麓を舞台にしたドラマ「灯の橋」(水木洋子/作)の脚本収録号(2025.03.04)
- コノテーションがキーとなる分析概念か――ロラン・バルト『S/Z バルザック「サラジーヌ」の構造分析』(2025.02.24)
- 『危険な関係』を読んだ方がいいか――トドロフ『小説の記号学 文学と意味作用』(2025.02.08)
- モチーフ素の連鎖で民話を分析――アラン・ダンダス『民話の構造 アメリカ・インディアンの民話の形態論』(2025.02.07)
- 朝刊も配送停止(2025.01.14)