三人目の姫君登場――日本古典文庫「源氏物語」「宿り木」
日本古典文庫「源氏物語」「宿り木」を読む。そのころ後宮で藤壺と言われていたのは亡き左大臣の娘の女御であった。帝がまだ東宮だったとき最初に上がった人だったが、内親王(女二の宮)を一人産んだだけだった。内親王が十四の歳に裳着の式を挙げようとしていたが、夏ごろに物の怪に煩わされて死んだ。女二の宮には確かな後見人がおらず、帝は配偶者として源中納言(薫)がふさわしいと考える様になった。薫はほのめかされながらも本意ではないと思う。この話を左大臣(夕霧)が聞いて、六の君に配偶者に薫を考えていたのであるが、兵部卿の宮(匂宮)に縁組を決める。匂宮は権家の婿となるのは自由を失うことだと考えるが多情な性質なので満更でもない。薫は女二の宮に手紙を送るようになるが、内心では死んだ宇治の大姫君ばかりが思われた。左大臣(夕霧)は六の君の結婚の用意にかかる。そのことを聞いた中姫君は幸福が破綻したと煩悶する。中の君は五月頃から妊娠していた。薫は大姫君に勧められたとおりに中姫君と結婚していればと悔やむ。薫は二条院を訪ねる。薫は中姫君と面会する。中姫君は宇治の山荘に移りたいと相談をもちかける。匂宮は結婚で六条院へ行くべきか考えあぐねていたが、左大臣の死者(頭中将)が来て止む無く行くことにする。それを見た中姫君は泣く。輝く未来を約束されている匂宮なので多妻であっても世間は同情しない。匂宮は昼間に新夫人(六の君)を見て愛情を覚える。それから宮は気軽に二条院へ行くことができなくなった。薫は二条院を訪ねる。薫は中姫君の袖をつかむがそれ以上のことはできない。二条院に戻ってきた匂宮は薫の残り香に気づく。薫は再び二条院へ行き中姫君に面会する。中姫君は薫に自分には母の異なる妹がいてその妹が大姫君に似ていると告げる。八の宮のかりそめの恋でできた姫君(浮舟)である。薫は心惹かれる。九月に入り薫は宇治を訪ねる。薫は弁の尼に面会し、山荘を御堂として改築することを指図する。弁の尼は薫に浮舟の話を語って聞かせる。浮舟の母の中将の君はその後陸奥守の妻となって任地へ下った。その後更に常陸介となって任地へ下ったという。薫が山荘の件を中姫君に報告した手紙を匂宮が読む。二条院にいた匂宮を左大臣(夕霧)が迎えに来る。その権勢に中姫君は圧倒される。薫は権大納言となり右大将を兼任することになった。挨拶回りをしていると夕霧の左大臣が弟(薫)のために自家で宴会を催す。その夜明けに二条院の夫人(中姫君)は男子を出産した。右大将(薫)は中姫君が男子を出産、着実な地位を築いたことで自分に冷淡になるだろうと考えるが、一方で中姫君の幸せを喜ぶのであった。その月の二十幾日に女二の宮の裳着の式(成人式)が行われた。女二の宮を訪ねて行くのがおっくうな薫は自邸に引き取ろうと考える。若君の五十日が過ぎて薫はまた二条院の中姫君を訪ねた。薫は自分の意志でない結婚の苦痛を訴える。帝は藤壺で宴を催した。夕霧から薫へ柏木の遺品の笛が贈られた。按察使大納言は一臣下に過ぎない薫が内親王を娶るのはいかがなものかと不満を覚える。その翌晩薫は女二の宮を自邸に迎える。女二の宮は美しく、自分の宿命も悪くないと薫は喜ぶ。しかしながらそれで過去の傷は癒されなかった。賀茂の祭があった後、薫は宇治の山荘を訪ねる。すると浮舟が山荘を訪ねて来たのに出くわす。薫は隙見をする。浮舟には大姫君の面影があった。まして八の宮の娘である。薫は弁の尼に浮舟への言伝を頼む。
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