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2020年7月22日 (水)

入水する――日本古典文庫「源氏物語」「蜻蛉」

日本古典文庫「源氏物語」「蜻蛉」を読む。宇治の山荘では浮舟の姿が消えたことで騒ぎになる。浮舟の秘密に関与していた右近と侍従には最近の浮舟の煩悶に気づいていたので宇治川へ身を投げたと想像がつくのであった。兵部卿の宮(匂宮)も怪しい気配のある返事を受け取っていたので気がかりで使いを出した。使いが到着すると家の中は女の泣き叫ぶ声に満ちていた。浮舟が亡くなったことだけが知らされる。そこで匂宮は時方に宇治へ行き確かなことを調べてくるように命じた。遺骸が無いことから時方は怪しむが女房たちは秘密は秘密のままにしようとする。浮舟の死後に疑いが掛けられては故人の不名誉になるからである。常陸夫人(浮舟の母)が来た。夫人は自分も宇治川に身を投げたい気分になる。女房たちは薫に相談せず今夜のうちに葬儀を済まそうとする。このとき薫は母宮(女三の宮)が病気で石山寺へ参篭していた。使いは葬儀の翌朝に宇治へ来た。薫は石山寺に参篭しているので直ぐには動けない。なぜ自分に葬儀の相談をしなかったかと恨み言を述べる。一方、浮舟を失った兵部卿の宮(匂宮)は惑乱していた。他人には病気をしている様に見せかける。大将(薫)もそれを知り、浮舟は匂宮が知れば必ず深い愛着を示す人であった。生きていれば自分は裏切られた男として醜聞になるところであったと浮舟への想いが少し醒める。薫は二条院へ行く。ちょうどその頃式部卿の宮(源氏の異母弟)が亡くなっていた。冷静な薫を見て匂宮は死んだ愛人に対して冷淡であると思う。薫は匂宮に浮舟との関係を匂わすが、匂宮はそ知らぬ振りをする。薫は中の君に浮舟とのことを話す。中の君は薫が隠そうとしたからそんなことになったのだと恨み言を言う。兵部卿の宮の許へ侍従(浮舟の女房)が来る。侍従は浮舟の様子を語って聞かせる。薫も思い余って宇治へ行くことにした。八の宮と来世の交わりを約していたのに宮の女王に心惹かれたため信仰をよそにした報いを受けたのだと考える。薫は右近(浮舟の女房)と話をして真実を知らされる。二条院に上がった際に浮舟は匂宮に姿を見られ、その後手紙が来るようになったことを話す。薫は浮舟は自分と匂宮の間で煩悶して死んだのだろうと思う。薫は浮舟を早く京へ迎えなかったことを悔いる。薫は浮舟の形見に常陸守の実子を側に仕えさせることにする。薫は浮舟の四十九日の準備をさせる。匂宮は元来多情な性質であったから恋の遊戯も復活した。薫は故人の残した身内の者の世話をしながら恋しさを紛らわせていた。匂宮は姉の一品の宮(女一の宮)の許を訪ねる。小宰相という女房は才気があり容姿も優れていた。匂宮は小宰相と関係を持とうとするが、小宰相は応じないのを薫は面白く思う。明石中宮は法華経の八講を行い六条院(源氏)や紫の上の供養をする。薫の大将は女一の宮の姿を隙見する。女一の宮は例えようもない美しさだった。薫は今また女一の宮へ懸想して、若い内に出家していたらこんな苦しみを得ることはなかったのにと思う。薫は妻の女二の宮と女一の宮を比べる。女二の宮は薫の妻となって以来、女一の宮との手紙のやり取りは途絶えていた。薫は小宰相を訪ねる。明石中宮は薫が亡くした浮舟は匂宮の二条院の夫人(中の君)の妹だ、そして浮舟の許へ匂宮も通っていたと聞かされる。薫は宇治の大姫君が生きていて妻とすることができたなら、どんな人を見ても動揺することはなかったのにと思う。それから薫は二条院の女王(中姫君)が恨めしくなる。浮舟の軽率さを思い、妻としてではなく愛人としておくのにはふさわしい女性であったと考える。そして浮舟を宇治に置き放しにした自分の軽率さを後悔する。匂宮は侍従(浮舟の女房)を呼び寄せる。匂宮は侍従を自分に仕えさせようと考えるが侍従は受けなかった。亡くなった式部卿の宮の姫君を女一の宮へ仕えさせることになった。匂宮は八の宮と兄弟であった式部卿の宮の娘である宮の君を恋愛対象として考えることになった。六条院に来た薫を見て侍従(浮舟の女房)は浮舟が生きていて薫と匂宮のどちらかにでも愛されていたらと思う。薫は女一の宮に仕える中将の君を見て、匂宮に意趣返ししたく思うが、恋愛馴れしていない自分には難しいと思う。女二の宮だけでなく女一の宮も得ていたらどれほど輝かしい運命であったかと思う。宮の君(式部卿の宮の娘)も桐壺帝の孫であったと薫は思い出す。が、薫は宮の君を血族であるがあまり関心を覚えなかった。宇治の姫君たちが忘れられない薫だった。

 

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