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2020年7月 8日 (水)

出生の秘密を知る――日本古典文庫「源氏物語」「橋姫」

日本古典文庫「源氏物語」「橋姫」を読む。その頃世間から存在を無視されている親王(八の宮、源氏の異母弟)がいた。帝の継嗣にもなりうる人だったが、時代が移って政権が反対側へいってしまい無勢力となってしまった。妻を愛していたが二人目の姫君が生まれた際に亡くなってしまった。悲しんだ宮は出家しようと考えるが、二人の姫君を残して世を捨てることができない。財政事情は窮迫し、女房たちが離れていく。宮は自らの手で姫君たちを育てた。家も荒れ、仏勤めばかりをして暮らした。後妻を迎えることも無かった。大姫君は品がよく、中姫君は可憐であった。冷泉院が東宮のとき、朱雀院の母である弘徽殿女御が廃太子を計画、八の宮を利用しようとしたことがあるため、光源氏派から冷ややかな扱いとなり、源氏派が栄える世になって今日に及んでいる。八の宮の邸は火事で焼亡してしまった。そこで宇治の山荘に移った。宇治に聖僧として崇められる阿闍梨がいて宮が宇治に住んでいるのを知ってから時々訪問する様になった。阿闍梨が院の御所へ参った際、八の宮の話題に触れる。八の宮は俗聖と呼ばれている。薫中将も人生を厭わしく思いながらもまだ仏勤めもよくしなかったので興味をもって聴いた。八の宮の姫君を自分へ託せないかと冷泉院(十の宮)は言う。薫は八の宮に興味を覚えお目にかかりたい、教えを受けたいと願う様になった。その後、手紙が交わされる様になり、薫が訪ねて行くようになった。唐紙障子を隔てて姫君たちが住んでいることが分かったが、異性に心動かされぬ人たるべく宮を訪ねてきたのだからと思い直す。そして三年が経った。秋の末、八の宮が仏堂に七日間お籠りになった。宮の不在時に山荘を訪ねた薫は姫君たちが琵琶と琴を合奏している場面に出くわす。姫君たちを垣間見た薫は大姫君に関心を抱く。薫は自分は好色な男ではないといい、交際を求める。老女が応対する。老女は薫の出生の秘密を知っていると打ち明ける。衛門督(柏木)が亡くなった際、遺言を伝えられたと言う。薫は興味を惹かれつつも、ここでは女房たちに聞かれると思い、自分には心当たりがないがと断って退出する。薫は八の宮や寺へ贈り物をした。八の宮は薫から送られた手紙を読んで、この人はすぐれた人格者だから自分が亡くなった後も遺族に尽くしてくれるだろうと言った。薫は兵部卿の宮(匂宮)に宇治の話をする。匂宮も薫の話しぶりに宇治の姫君たちに興味を覚えた。十月になって薫は宇治へ出かけた。薫は老女(弁の君)と面会した。老女は柏木が亡くなった経緯を語った。老女は柏木と女三の宮(薫)の母が交わした手紙を手渡す。出生の秘密を知った薫であったが、母の許を訪ねてみると経を読んでいた。今更自分が秘密を知ったことを知らせる必要はないと思って、自分の胸一つに納めることにした。

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