成人式を行う――日本古典文庫「源氏物語」「行幸」
日本古典文庫「源氏物語」「行幸」を読む。光源氏は玉鬘を妻として迎えると内大臣(頭中将)の婿となることを懸念して躊躇する。十二月に行幸があって六条院からも奥方たちが見物に出かけた。源氏は忌日で参加していない。玉鬘は父の内大臣の姿を見る。髭の中将も登場するが好感を持てなかった。源氏は玉鬘に宮廷に尚侍として出仕する様勧めていた。源氏は玉鬘の裳着の式を執り行うことを決める。裳の紐を結ぶ役を内大臣に務めてもらおうと考える。源氏は病気の大宮(葵の上の母)を見舞い、玉鬘の秘密を打ち明ける。大宮は手紙で内大臣に来るように促す。雲井の雁のことだと思った内大臣だが、大宮を見舞う。源氏は内大臣と旧交を温める。源氏は玉鬘のことを打ち明ける。雲井の雁と夕霧のことは言わない。源氏は中将(夕霧)にも真実を打ち明ける。裳着の式が終わった。内大臣の子息たちは玉鬘を姉妹と知らずに恋をしていたことを恥ずかしく思う。成人式が終わったのだからと兵部卿宮(源氏の異母弟)は求婚する。……といったことを令嬢(近江の君)が聞きつけて、自分も尚侍として出仕したいと言い出す。それを聞いていた女房たちは失笑する……という内容。
……育ちが悪く損な役回りの近江の君だが、運命に翻弄される源氏物語の女性たちの中では唯一ポジティブな性格である。ポジティブさが失笑を買ってしまう貴族社会だが、現代なら能動的な女性と評価されることもあるのではなかろうか。自分を客観視できない点で近江の君はおまぬではあるが、地頭自体は悪くないのではないか。
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