密通は繰り返される――日本古典文庫「源氏物語」「若菜(下)」
日本古典文庫「源氏物語」「若菜(下)」を読む。衛門督(柏木)は女三の宮の事が忘れられない。大それたことを想うようになって、六条院(源氏)の顔をまともに見ることができない。六条院で弓の遊びが催される。衛門督は女三の宮が東宮に献上した猫を得る。左大将(髭黒)は男子を出産した玉鬘を重んじている。娘の真木柱を引き取りたいと思っているのだけど、母方の祖父である式部卿宮が許さない。真木柱の許に兵部卿宮(源氏の弟)が通うようになる。冷泉帝が譲位した。太政大臣(頭中将)は関白の職を辞す。左大臣(髭黒)が右大将になり関白も兼任した。六条の女御(明石の姫君)が産んだ男子が今上天皇の東宮となった。右大将(夕霧)が大納言も兼ねて左大臣に移った。六条院は冷泉帝に男子の無かった事を残念に思う(自分の血統が続かないので)。女王(紫の上)は出家したいと六条院に語るが、六条院はそれを認めない。女御(明石の姫君)は住吉神社への願はたしを願い、六条院の参詣に同行する。明石の尼君(明石の姫君の祖母)も同行する。明石の尼君は素晴らしい運の持ち主だと噂される。近江の君は双六で「明石の尼様、明石の尼様」と唱える。女三の宮は二品(ほん)の位に上がって勢力を増す。女王(紫の上)は女御(明石の姫君)が産んだ女子(女一の宮)を養育する。女三の宮は若々しく少女の様な頼りなさで、六条院は宮の教育に力を入れる。六条院は朱雀院の五十の賀として若菜の儀を計画する。女三の宮は六条院の指導で琴を弾く。女三の宮はもう二十一、二歳になるがまだ幼さが抜けない。そして美しかった。左大将(夕霧)は紫の上を意識する。六条院は夫人(紫の上)に過去の女性のことを語り、六条御息所にも触れる。夫人(紫の上)は急に胸の痛みに襲われて病床に臥す。治療や祈禱のかいもなく病状は悪化していく。六条院は夫人を六条院から二条院へ移し看護する。女三の宮の許へは通わなくなった。衛門督(柏木)は中納言になっていた。女三の宮の姉である女二の宮と結婚したが、女三の宮のことが忘れられずにいた。女三の宮に付いている小侍従という女官は宮の侍従の乳母の娘であり、乳母の姉が衛門督の乳母であった。衛門督は小侍従の伝手を頼って女三の宮への接近を試みる。女三の宮に隙が見えた日に衛門督は六条院に赴く。女三宮の周りに女官は少なく、小侍従だけが侍っていた。寝ていた女三の宮に衛門督は接近する。女三の宮は声を出すが女官がいない。恐ろしさで女三の宮は何もできない。衛門督は何もしないからと言い寄って事に及ぶ。その後、衛門督は太政大臣の屋敷に帰る。六条院を裏切った密通が急に恐ろしく思えてきたからである。女三の宮も事件が恐ろしく恥ずかしく思っていた。六条院が見舞うが、そこに夫人(紫の上)が息絶えたという知らせが入る。二条院に戻った六条院の前に六条御息所の怨霊が現れた。怨霊を祈禱で封じると夫人は息を吹き返した。引きこもっていた衛門督だが、見舞いに出かける。六条院は夫人に授戒を受けさせる。女三の宮は妊娠した。衛門督は時々忍んできた。女三の宮の妊娠が六条院に知らされた。六条院は異変を察する。小侍従が衛門督の手紙を持っていた。そこに六条院が現れた。隠していた手紙を六条院は読む。そして全てを悟る。秘密を知られた女三の宮は涙を流す。六条院は裏切られた気持ちであるが、自分の過去(藤壺との密通)を思い出し恋愛問題で他人を非難できないと思う。秘密が漏れたと知った衛門督は目を掛けてくれた六条院を裏切った罪で苦悶する。萎縮した女三の宮を六条院は幼稚と思う。前尚侍(朧月夜)が出家した。朱雀院の賀宴は延び延びになっていたが、実行される運びとなった。朱雀院からの手紙に返事を書けない女三の宮に六条院は強いて書かせる。十二月になった。試楽に衛門督は招かれた。病気を理由に辞退していた衛門督だったが、止むを得ず出席する。六条院は衛門督への憎悪を抑えつつ語りかける。決まりの悪い衛門督は苦痛に耐えられず退出する。衛門督は重い容態となった。朱雀院の賀宴が催された。
……柏木は何もしませんからといって近づいて、結局事に及んでしまう訳である。紫式部の男性観察が優れていた証だろう。それにしても源氏と女三の宮の間には肉体関係があったのだろうか。粗筋を読んだときは女三の宮が輿入れして直ぐ事件が起こったのかと思っていたが、実際には女三の宮は十五歳から二十一、二歳になっている。
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