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2020年6月22日 (月)

柏木、死す――日本古典文庫「源氏物語」「柏木」

日本古典文庫「源氏物語」「柏木」を読む。右衛門督(柏木)の病状は春になっても快方に向かわなかった。六条院(源氏)も自分が死ねば許すだろうかと考える。衛門督は女三の宮に手紙を書く。返信を渋る女三の宮に小侍従(女官)は手紙を書くように促す。小侍従は手紙を持って衛門督の所へ行く。手紙を読んだ衛門督は感激し返信する。女三の宮の体調が変わり、男子(薫)を出産する。六条院はこれも自分の犯した罪(藤壺との密通)の報いであろうと考える。女三の宮の体調は優れなかった。また、赤子を愛そうとしなかった。女三の宮は出家しようと考え始める。朱雀院は女三の宮の体調が悪いと聞いて密かに六条院まで行幸する。女三の宮は自分の命はもう長くないから出家したいと願う。六条院は物の怪がそう言わせることもあると反対したが、朱雀院は願いを聞き入れる。夜明けが近づき、女三の宮の髪は切られ授戒する。加持をした際、物の怪が出て、紫の上が助かったと思ったから女三の宮の方に来たのだと語る。衛門督は女三の宮が出産、出家したことを聞き、妻の女二の宮に会う。衛門督の危篤を聞いた今上帝は衛門督を権大納言に出世させる。左大将(夕霧)は昇進の祝いで衛門督の許を訪ねる。少年の頃から親しくしてきた二人だが、衛門督は夕霧に自分は六条院の不興を買った、その心痛から病となったのだと打ち明ける。詳しく聞きたかった夕霧だが、加持の僧たちが来て止む無く立ち去る。衛門督は遂に死んでしまった。父の太政大臣(頭中将)とその妻は衛門督の死を悲しむ。女三の宮は衛門督の死を知ってもの哀れな気持ちとなる。衛門督との事も運命かと思い泣く。三月に入り、若君(薫)の五十日が来た。六条院は女三の宮が自分を捨てたと嘆いてみせる。女三の宮は初めから愛することを知らなかったのだから、どう返事をすればよいか分からないと答える。若君には貴人の相がある。大将(夕霧)は衛門督が自分に打ち明けたことの意味を考える。衛門督の問題と女三の宮の出家とは関わりがあると考えるようになる。左大将(夕霧)は一条の宮(衛門督夫人の女二の宮)の許を訪ねる。女二の宮の母の御息所は自分はこの結婚に反対だったのだ、法皇(朱雀帝)が許可したからそれではと賛成したと言う。大将は太政大臣の許を訪ねる。太政大臣は憔悴していた。大納言(柏木)の葬儀が催された。大将は一条院の宮(女二の宮)を見舞う。

……田辺聖子「新源氏物語」では女三の宮は幼稚な姫としてよく書かれていなかった。女三の宮が好きになれなかったのだろう。「はやげん」という源氏物語の粗筋を漫画化した作品では女三の宮は薫の出産出家後、精神的に成長すると解釈している。実際に読んでみると奥深いところはないと書かれていたが。

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