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2020年6月22日 (月)

四季四面の館

アクセス解析を辿って、YAHOO知恵袋の質問、『日本文学の課題で、「源氏物語」の六条院が完全な「四季四面の館」にはならず、矛盾を持つ欠陥住宅である理由を述べよ』という問題に出会う。

これは難問だ。少なくとも源氏物語を通読していなければならない。一日一帖読んでも54日かかる。文学部の日本文学の講義だから、読んでいるのは前提としても、六条院の描写は記憶の限りでは断片的にしか記されておらず、あちこちから情報を拾わねばならない。

説話文学に「四季四面の庭」というのがあり(酒呑童子や鈴鹿の御前)、東西南北(もしくは東南西北)それぞれ四季の景色が映し出される空想上の庭であるが、四季四面の館となると聞いたことがない。しかも「矛盾を持つ欠陥住宅である」とされている。

六条院は元は六条御息所が住んでいた土地に造営したもので、春夏秋冬の邸にそれぞれ夫人たち(中宮も含む)が住む形となっている。どの邸に誰が住んでいるかまではネットで調べられるが、知恵袋の回答にあるように、紫の上を正妻格として調和がとれていたところに女三の宮が入り正妻となる(ただし、愛情は薄い)ということで夫人たちのバランスが崩れる……といった解釈になるか。

マザー・コンプレックスである源氏が最も想う人は藤壺であろう。紫の上も女三の宮も藤壺の系譜に連なる人物である。幼い頃から養育した紫の上もその点では藤壺の代理に過ぎないのであり、四季四面の館に各夫人を取りそろえたところで、源氏の心はなおも満たされることがないのである。

そもそも四季四面というのは一面が一つの季節に対応するというものであり、そもそも矛盾をはらむ四季四面の館という概念設定がおかしいのである……と出題者の意図が分からないとすることもできるか。

 

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