栄華の絶頂――日本古典文庫「源氏物語」「藤のうら葉」
日本古典文庫「源氏物語」「藤のうら葉」を読む。宰相中将(夕霧)は内大臣が自分と雲井の雁の仲について折れようとしていると聞いていたが、昔の雪辱のために待っていたいと考えた。一方、雲井の雁は夕霧が他の恋人と結婚したら自分は顧みられないだろうと煩悶していた。そこで内大臣は自分が折れることにして、大宮の法要で極楽寺へ参詣した折に夕霧に声をかける。四月になって藤の花が咲いた。内大臣は宴を催して夕霧を招く。内大臣は藤の枝を折って夕霧の盃の台に置く。夜が更けて酒に酔ったので夕霧は寝所を借りることにする。頭中将(柏木)は夕霧を雲井の雁の許へ導く。その結果を聴いて光源氏も満足する。明石の姫君が入内することが決まって紫の上は上加茂の社へ参詣する。頭中将(柏木)が勅使となる。花散里や明石の君を誘うが誰も来なかった。夕霧は恋人の典侍に手紙を送る。紫の上は明石の姫君のお付に明石の君を付けるように源氏に相談する。まず紫の上が付き添って、それから明石の君が付いた。紫の上と明石の君が対面した。二人は友情を結ぶ。明石の君の存在が玉に瑕の様にも噂されたが、東宮は明石の姫君を寵愛する。源氏はもう出家してもよいと考える。源氏は準太政天皇の位を得た。内大臣が太政大臣となり、宰相中将(夕霧)が中納言となった。夕霧は祖母の大宮の住んでいた三条殿を修築して、そこに移り住む。十月に六条院に行幸があった。朱雀院(源氏の兄)もやって来る。楽が奏された。
……光源氏が39歳から40歳にかけての出来事で、当時の源氏が絶頂期にあったことを示す帖である。
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