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2020年6月19日 (金)

幼い正妻――日本古典文庫「源氏物語」「若菜(上)」

日本古典文庫「源氏物語」「若菜(上)」を読む。六条院(源氏)の兄の朱雀院は病気となり出家の準備を進めていた。母が亡くなり後見人のいない内親王の女三の宮の行く末が気がかりであった。権中納言(夕霧)が独身の内に話をまとめておくのだった、太政大臣(頭中将)の長男である右衛門督(柏木)も有望だが若すぎる、結局六条院に預けるのがよいとなる。六条院は自身で朱雀院を訪ねる。その席で朱雀院は女三の宮を六条院に降嫁させるよう頼み込む。女三の宮は紫の上と叔母姪の関係でもあり、六条院は結局女三の宮との結婚を承諾する。第一の夫人であるが正妻ではない女王(紫の上)に対し六条院は不安に思いつつ報告する。安泰だと思われた紫の上の立場がより若い女三の宮の登場で揺るがされたのである。紫の上は女三の宮の母は叔母だからと承諾する。女三の宮の裳着の式(成人式)が執り行われる。正月の二十三日に玉鬘(尚侍)の発案で若菜の儀が執り行われる。六条院は玉鬘と再会する。二月に女三の宮は六条院に入る。だが、女三の宮は未だに雛人形で遊ぶような幼い少女であった。六条院は内心落胆する。六条院は女王(紫の上)との間で板挟みになりつつ女三の宮の許へ通う。女三の宮は凡庸で愛情が湧かない。朱雀院が出家、前尚侍(朧月夜)も朱雀院の許から離れる。六条院との間で危険な恋をした朧月夜だが、六条院が再び好意を寄せてきた。前尚侍は迷惑に思うが、結局関係が復活する。桐壺の方(明石の姫君)が懐妊し、六条院に戻ってきた。明石の姫君と対面した後で女王(紫の上)は女三の宮と対面する。十月に六条院の四十の賀で女王(紫の上)は法要を催す。帝は権大納言(夕霧)を右大将に昇進させ四十の賀の宴を催す。新年になり桐壺の方(明石の君)の出産が近づいた。祖母の明石の尼君は姫君の出生の真相を語って聞かせる。三月に桐壺の方(明石の姫君)は男子を出産した。祖父の明石の入道は夢に見た栄華の道が開かれたと満足し、深山に隠遁する。明石の君は出家したいと姫君に言う。右衛門督(柏木)は自分も女三の宮との結婚の芽があったことで忘れられずにいた。六条院を訪問、蹴鞠をして遊ぶ最中に偶然女三の宮の御簾が上がっているのを目にし、女三の宮の麗しい姿を目に焼き付けてしまう。右衛門督(柏木)は女三の宮に手紙を送るが、つれない返事であった。

……数えで十五歳になる女三の宮は未だ雛人形で遊ぶ幼い面の残る姫君だが、今でいうと発達障害的なものだろうか。藤壺の系譜に連なる女性であり、結局源氏もその点に惹かれてしまうのである。

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