鎮魂の調べ――日本古典文庫「平家物語」
日本古典文庫「平家物語」(現代語訳)を読み終える。約440ページあって、予想外に読むのに時間が掛かった。一日10ページしか読めない日も多かった。一ケ月掛かっている。
平家物語を読むのは小学館の少年少女世界の名作文庫に収録された「平家物語」以来である。平家物語を子供向けの抄訳ではなく、全体像を掴めるものとして読むことができた。
栄華を極めた平家が一族の絶頂期から清盛の死を経て没落、血筋が絶えるまで描かれている。惜しいのは木曽義仲との俱利伽羅峠の戦いで数万の軍勢を失ったことである。京の都を出る際には七千騎まで減っている。その後、大宰府に定着しようとするも、九州の武士に拒絶され、一の谷、屋島と移っている。これは後白河法皇に見放されたことも大きい。奈良の寺院を焼いたことが一因だろうか。
自身は清盛に助命された頼朝だが、平家の血筋を根絶やしにする冷徹さ非情さも印象に残った。源氏の嫡流もその後三代で終わるのだが。
平家物語は仏教的な無常観が底流として流れているが、解説の佐伯彰一によると鎮魂の調べが底流に流れているとしている。
平家物語は貴族社会の終わりをつげ武家社会へと移行していく過渡期の物語でもある。花やかな王朝文化から武骨で一所懸命の武士たちの時代へと移行していくのである。
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